ゲーム開始。
はよ、冒険はよ。
まぶしさに目が慣れるとそこには、イメージの中の中世っぽい街並みをファンタジー世界の人々が闊歩している光景。
「うおお!」
テンション上がってきた。
視界の隅にはHPとMPのゲージ、状態覧、リアルとゲーム内の現在時刻が表示されている。
周りを見ると、誰もいない。そしてここは町の中の塔の上のようだ。塔の上といっても、頭上にはレンガの天井が見える。周りにも同じような塔が見えるが、あれは何だろうか?遠くには町の外壁と思しき壁が見える。その外には草原や森が広がっているようだ。
とりあえず、床の隅に階段があったので降りていく。中は壁に埋め込まれている電球みたいなものが光っていて、地味に明るい。おそらくだが、光魔法を使っているのだろう。壁に触れると、よく住宅街で見かける灰色の塀よりも少し荒い位のザラザラした感触。自分で触っているとしか感じられない。科学のちからってすげーーー!
階段を抜けるとそこは、これまたイメージの中の冒険者ギルドっぽい場所にでた。受付の職員らしき人が話しかけてくる。
「“コウ”さんでよろしいですか?」
やばい、VRやばい。
「はい!」
叫び出したい衝動をこらえて答える。
「ここは皆さんの冒険の拠点となるファートの町です。冒険を始めるにあたって、ギルドに登録していただきます。まずはこのギルドカードをお受け取りください。」
スッと諭吉券位の大きさのカードを差し出されたので受け取る。
「では、ギルドで行っている業務について説明します。ギルドではモンスターの素材の買取や、町の住人やプレイヤーの皆さまからのクエストの斡旋、ゲーム内通貨のジェネの預金など、様々なサービスを取り扱っております。また、各町のギルドに併設されている図書館では近辺に生息するモンスターや採取できる素材などの幅広い情報を集めることができます」
ギルド職員の仕事量ってすげーーー!
いや、各部門に専属の職員がたくさんいるんだろうけど。
「次に先ほどお渡ししたギルドカードの説明です。このカードにはギルド内の冒険者部門、生産者部門、商業部門のそれぞれでのランク、ギルドに預けている金額、いったことのある町などが表示されています。あなたがいた塔は転移装置となっていて、いったことのある町には自由に転移できます」
おおぅ、転移できるとか科学、魔法に負けてるじゃん。
「質問はございますか?」
「道具屋や武器屋の場所を教えて下さい!」
まず町の構造からして分からぬ。
「そうですね…ポーションなどの消耗品を売る店は主に東通りに、金属系統の武器と防具は南、布や毛皮の防具や木の武器は西に、北には宿屋街があります。でも、このギルド前なら大体のものは揃いますよ?」
ギルドは県名のついた駅なのだろうか。万能すぎる。
「ステータスはどうやって見ますか?」
そういえば知らなかった。
「《ステータス》と唱えれば見ることができますよ。もう一度唱えれば消せます。他の方からは基本的に見えないので安心して下さい」
実際に唱えてみると、さっき真っ白な部屋で見たステータス画面が現れた。色々と項目が増えている気がしたが、とりあえずもう一度唱えて消す。
あ、ヤベぇ。
「あの、日暮れ時計台にはどうすれば行けますか?ええと、あと40分までには到着したいんですけど…」
この前みんなが色々教えてくれたとき「リアルの5時に日暮れ時計台に集まろう」という話になっていた。
「それでしたら東通りをまっすぐ行った広場の中央にありますよ。10分もあれば着くと思います」
「そうですか、ありがとうございます!ではいってきます!」
「はい、また何か質問がございましたら、ギルドの相談窓口までお越しください」
職員さんはスマートに去っていった。心の中で坂本さんと呼ぼう。
ギルドを出て、街並みを眺めながら東通りを進む。
しばらくいくと、言われた通り広場があって、その真ん中に時計台が建っている。
その下には山人族、森人族、魔人族、獣人族の四人組がいた。
見覚えのある顔に思わず頬が綻ぶ。
向こうもこっちに気づいたようだ。
「久しぶりだな!お前ら!」
話が進まぬ。