お姉さんが出た。
お姉さんは出ましたけど、どうあがいてもまっすぐお店に入ってくれませんでした。
自分の中でネタは挙がってるのに、そこまで直行できないという…。
???視点
---なんだコイツ。
軽い二日酔いで痛む頭を抑えながらいつものように工房へ来ると、店先で寝ている奴がいた。
「…ったく」
今は午前11時頃。いつからこいつは寝てるんだ?不注意過ぎんだろ。いくらここの治安が良いからって、物取りがいねえなんて思ってんのか?
まだ若い男で、店の前の階段に座ったまま船を漕いでいる。寝顔は物凄いアホ面だ。
「今日はあの人が来るかもしれないってえのに」
私を助けてくれたあの人は、いつやってくるだろうか。来たら、私のできる限りの最高の装備を渡してあげたい。そのためには…。
「取り敢えず、もてなすのにコイツは邪魔だな。おい、起きろ」
スヤア…。
反応がない。
「ッチ。起きろって」
スヤア…。
「起ーきーろーやー」
スヤア…。
「いい加減起きろお!」
背中を強めに蹴ってやった。全く。なんなんだコイツは。私は頭が痛むのに、コイツの寝顔はすこぶる悩みがなさそうだし、俺は大きい声を出して頭痛が悪化しているのもイラッとする。思わず蹴りつけてしまったじゃないか。
取り敢えず、これでコイツも起きるだろう。さっさと退いてくれ…。
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コウ視点
「ブッ!」
痛ってえ…。顔ぶつけた拍子に、前歯が上唇の裏側に刺さった…。
どうやら、あのまま眠ってたみたいだ。それだけログイン中の出来事に疲れているからだろう。今日のところは『今日』で終わりにした方が良さそうだな。もうそろそろ課題にも手を付けた方が良いだろうし。
ん、そういえば、なんで俺顔打ったんだ?
「オイ、起きたならさっさと退けよ」
「アッハイスイマセン」
さっと起きて道の真ん中の方へ退ける。俺の好きな日常系ラノベの主人公曰く、「最初から負けてかかれば平和で安全」らしいので、中学校でもクソ女どもへの対応はそれで通していたので、とっさに言われる通りにした。自分で言うのもなんだが、嫌な性質だ。
「おう、こんなとこで寝てんじゃねえぞ、お前。ここの領主はいい人だが、それでもこの街で犯罪が起こらないなんてことはねえんだ。ちったあ危機感持ちやがれ」
「あー、えっと。ごめんなさい」
振り向くと、不機嫌そうな顔をした女の人が。褐色の肌で、赤い髪を高い位置で結んでいる。魔力感知によるとあまりレベルは高くないみたいだけど、荒事には慣れてる感じ。白い半袖シャツの上から、茶色のオーバーオールを着ていて、手にはごつい手袋をはめている。両肩にはビールケースみたいなものを担いでいて、中にはたくさんの青い液体が入っている。
正直、雰囲気がヤンキー(海兵じゃないよ)みたいでちょっと怖い。
多分、この人に退かされた拍子に顔を打ったんだろう。
「で、何してんだ、こんなとこで」
フン、と息を吐いて、気怠そうに聞いてくる。
「ちょっと人を待ってました。いつの間にか寝ちゃってましたけど…」
「へえ?ま、今まで待ってても来なかったって事は、もう来ねえだろ。さっさと帰っちまえ。私はこれから色々やることがあるから、ここからは退いといてくれよ」
そう言い残して、ジーナ工房の中に入っていった。
うーん、忙しいなら、今はやめといた方がいいかな?今11時過ぎなので、俺が起こされてないってことはそれまでに来た人はいないという事。だからさっきのがジーナさんだろうけど。
今は諦めて、おとなしく帰ろう。一回街の外に出て戦闘して、午後の4時くらいには帰ってこよう。
と、言うわけで、ギルドに行ってみて、森の情報を聞いてくる。これまで森には入ってないし、コケッコの卵も欲しい。ラビ系よりはウルフの方が素材も強そうだし、何よりダンジョンに入ったらこもってしまいそうなので取り敢えず森に行ってみることにした。
森に出るのはラビ、ラビット、ラビットファイター系、ウルフ、ウルフェン、ウルフェンファイター系、コケッコ、コケコッコの動物系MOB。
ウルフは単体でもそこそこ強いが、ラビットと同じく稀に職業(?)持ちが紛れており、下手に戦闘を長引かせれば延々と増援を呼ばれ、集団での戦闘にも慣れているのでラビとは別格だと言われた。
ちなみに、ウルフェンにはマジシャンはいない代わりに、アサシンがいるらしい。スピード特化の敵とは戦ったことがないので少し期待している。
まあ戦ってみたいけど、団体さんはちょっと厳しいかな?はぐれてる個体もいるようなので、最初は無理せず1匹の奴から狙って行こう思う。
コケッコ系は逃げ足が速くて、逃げるときに大きな鳴き声を出すので下手に手を出さない方が良いとのこと。卵が欲しいなら親のいない時を狙うか、親に気付かれないように一瞬でとどめをさす必要がある。
遠隔攻撃は魔法しかないけど、射程が少し厳しい。それに、視認されたら即アウトだ。正直厳しいと思うので、空き巣(そのままの意味で)をするしかないと思う。
今回行くのは街道から北側を予定しているが、南側は昆虫系のMOBが生息している。状態異常攻撃などの特殊な攻撃方法を持つMOBが多いので、初めて森に行く人には北側で森林戦に慣れてからでないと危険が大きいらしい。
たとえ毒でも、意識を落とすようなものにはそもそも濾過を使えないので、おとなしく従う。虫の甲殻は軽くて丈夫なはずなので、防具などの部品として魅力的なのだが、また今度にする。
と、言うわけで来ました森。ちなみに名前は“シーリンの森”。道中はいくらかラビが出てきたが、例のごとく蹴散らしました。
今のスキルはこんな感じ。
選択中スキル
《火魔法》Lv.24《土魔法》☆Lv.16《風魔法》Lv.16《魔力促進》Lv.28→30《格闘》Lv.24《魔力感知》Lv.16→21《錬金術》Lv.10《鑑定》Lv.24→26《魔力調節》Lv.14《クイックチェンジ》Lv.1→8
控え:《水魔法》☆Lv.20《光魔法》Lv.16《闇魔法》Lv.16《調合》Lv.4《製革・製布・縫製》Lv.1《調理》Lv.1
スキルポイント:2
クイックチェンジで登録したスキルはスキル名とレベルの間に☆が表示される仕様みたいだ。それより、さっきスキルポイントがもうなくなってしまっていたのに気づかなかった。我ながら不注意が酷い。気を付けないと。
取り敢えず、目下の目標はたまg…じゃない、ウルフの皮だ。運よくはぐれを見つけられればいいのだが…。
作者はRPGのダンジョン内の宝箱は意地でも全部開けます。
そして、出てくるポ○モンは全部捕まえてから次へ進みます。
なのでコウ君には一回スルーした森に行ってもらうことにしました。お姉さんとの会話も短くて申し訳ない。
お姉さんですが、どうあがいても女性らしくならなかったのでもういっそ趣味に走りました(え
作者はヤンキーみたいなお姉さんが好きです。皆さんはいかが?




