タイトルの単語の頭を取ってみよう。こいつらだ。
GE☆DO☆O
タイトルはこれがやりたいだけでつけました。
反省はしているが後悔はしていない。
時間通りにログイン。
このゲーム、時間の圧縮率が高いから、ちょっとでも遅れたら大惨事なのよね。
ログアウトしてる間に、少し遅めの昼ご飯を食べてきた。
やっぱりカップ○ードルはカレーに限る。濃い目に作って、麺を食べ終わった後に冷ご飯を突っ込めばそれなりに美味くて量も食べられる。何より速い。たまに売ってるチーズカレー味も結構イケる。
俺がログアウトしてる間に、センドからは住人の護送用の馬車が3台と、護衛の増援として更に10人が応援として到着しているらしい。
何でも、救出の知らせで街の人たちは沸きに沸いていて、領主さんが「万が一にも救出された人を傷つけるわけにはいかない」って言って、巡回の兵士の数も最低限にして応援を寄越してくれたらしい。領主さんは結構いい人みたいだな。
それに比べて俺とレイさん以外のプレイヤーは何やってるんだろうな。全く。
あ、ラプスたちは多分まだ森にいるはずだ。1パーティー、つまり6人以上で街道封鎖イベントを始めると、人数に応じて敵が強くなったり、数が増えたりするらしいので、あいつらのグループ全員でクリアできるようになるまではあのグループでレベリングするしかないのだ。ラプスたちだけでクリアしてしまうとクソ女どもは平気で未クリア勢を切り捨てようとするので、クソ女どもがそこまでこのゲームに詳しくないことを利用して、イベントに行くまでの時間を引き延ばしているはずだ。
クソ女(とその他の存在)に足を引っ張られているとも言えるが、俺は「安全マージンを大きく取っているだけだ」と自分に言い聞かせてあいつらをなでにするのを我慢している。がまんだ、がまん。そしてわざが解けた瞬間に2倍のダメージにして返してやるのだ。
それ我慢できてなくね?
ゲーム内時間で1時から護送を始める。正午にはログインして、本番に備える。
余っていたジーグさんのスープを飲みながら、レイさんたちと予定を立てる。
「僕たちって、兵士さんたちからしたら連携の邪魔ですよね?」
「まあ、確かにそうでしょうね。私たちを入れてにわか仕込みの連携を取るより、私たち抜きで本来の連携で護送した方が安定すると思います」
「ですよね。僕は、そちらのパーティーを含めて予備戦力として待機していた方がいいと思います。遊撃とかのポジションでも、邪魔をしてしまうでしょうし、基本は動かずに指示待ちでいいと思うんです」
「俺も同感だな。先頭の馬車の横辺りにくっついて、緊急時にすぐに手助けするようにしよう」
とまあ、こんな感じで出発。
出発してから1時間から2時間ほどで街に着くらしい。俺が来るときは30分しか掛からなかったのは、俺のSPDがレベルの割りにかなり高いのと、MOB相手にいちいち立ち止まらずに
《鑑定》で編成を確認。→魔法で先制。→残った跳びかかってくる奴をつかんで首ひねってポイ。
を繰り返してたからだと思う。残党は放置してたし、いちいち全滅させてたら多分40分くらいにはなってたんじゃないか?
後、風と火と土のエンチャントをかけ続けて、SPD、ATK、DEFを強化してたのもあると思う。
俺の今の装備スキルはこの10個。
《火魔法》Lv.23《水魔法》Lv.14《風魔法》Lv.14《土魔法》Lv.18《光魔法》Lv.14《闇魔法》Lv.15《格闘》Lv.20《錬金術》Lv.10《魔力感知》Lv.12《鑑定》Lv.21
今回は何かが起こらない限りMPを消費しないので、奇襲を少しでも防ぐためもに《魔力促進》は《魔力感知》と交代。《魔力促進》よ、たまには休んでくれ。
また、ラビット相手に魔法の威力ブーストは不要だと思うので、《魔力調節》をはずして少しでもレベルが上がるように《錬金術》を装備した。
特定のクエストなんかをクリアすると装備可能スキル数が増えるらしいので、これが終わったら狙ってみる予定だ。
《魔力感知》のレベルが上がって、新しいアビリティが増えているので、紹介しておく。
パッシブアビリティ:魔力識別
感知できる魔力の、属性を把握できるようになる。
取得条件:《魔力感知》Lv.10.火、水、風、土、光、闇属性の魔法攻撃でそれぞれHP200分のダメージを受ける。この時、自分の取得している属性は除外してよい。
俺は全属性の魔法を取得しているので実質《魔力感知》Lv.10だけが条件だった。
魔力は、俺には光の球みたいに感じていた。なんか、リアルにはない感覚器官を使ってるみたいで、長時間集中していると気持ち悪くなるけど。それから、魔力浸透を使ったり、魔法を使ったりすると、そこから光の線が伸びて、伸びた先でグルグルっと丸まって、そこから魔法が発動する。
魔力識別が増えてからは、人とか、NPCによってそれぞれ魔力の『色』みたいなものが見えるようになった。俺の魔力は赤と茶色の部分が大きくて、他の青、緑、黄、紫の部分はほとんど同じだから、多分その色でどの属性の魔力か識別できるようになったんだと思う。
ちなみに、ファイアボールを使う時は赤の部分から赤い線が出てきて、赤単色の魔力球になった。なので、相手がどの属性の魔法を使うかが分かるので、かなり便利だ。
更に、魔力球の周りに殻が見えるようになった。色々と魔法を使ってみたけど、殻の大きさは変わらなかったので、多分最大MP量を表しているのだと思う。つまり、この殻の大きさからかなり詳しく相手のレベルを予想できるということだ。まあ、MOBには当てはまらないが。
しかし、まだスキルレベルが低いので感知できる範囲自体がかなり狭い。思いっきり集中して8メートルくらい先までしか見えない。
範囲が狭いという弱点もあるが、魔力、つまりMPを持たない生物はいないので、索敵には非常に便利なアビリティだろう。
そんなこんなで出発して30分。
エンカウントするMOBの数が不自然に多くて、中々進めていない。このペースだと2時間以上かかってしまうと思う。ていうか、不自然じゃないか?体感だが、ファスト周辺の草原の3、4倍くらいはMOBがいるように感じるんだが。
たまたま配置が近かったギルドの(略)チャンの甥さん…もう「おいたん」でいいや。名前聞けよって話なんだけど、そこそこ話したことのある人の名前を聞く勇気がない。おいたんに聞いてみると、やはりここまでMOBが多いのは異常だという。
何やらキナ臭くなってきた。
それからまた30分。そろそろ道程の半分に差し掛かるか?という頃。
右手の遠くの方にラビットの大群が見えてきた。俺がイベントで戦った数と同じか倍くらいの数で、結構なスピードでこっちに向かってくる。
こいつらを馬車の近くで迎え撃つわけにはいかない。
なので、兵士さんたちは二手に分かれて、トンネルにいた兵士さんのグループは群れの迎撃に向かい、応援で新しく来た人たちと俺たちプレイヤーが馬車の警護をすることになった。
後ろはこれまでMOBを殲滅してきたので、警戒にも迎撃にもあまり人手はかからない。
よって、俺は右側に、レイさんたちは左側に待機して、兵士さんたちは主に前方を警戒することになった。
この襲撃だけで終わるわけじゃなさそうだけど、大丈夫か?
迎撃に向かった兵士さんが戦闘を開始した。
さすがの連携で、前衛が抜かれるということもなさそうだ。ギースさんを含めて後衛が回復を重視しているのと、前衛も時々交代して腕を休ませて、ファイターの突撃に耐えられるだけの体力を温存しているのが大きいだろう。
今のところ馬車に向かってくるMOBはいないが…。
と、残っていた兵士さんが2人こちらに向かって来た。顔には焦りの色。どうしたんだ?
「大変です!左側に先ほどの群れと同規模の群れが現れました!私たちは馬車を守りますので、迎撃に出てください!」
「ほんとですか!?すぐ行きます!」
これはヤバいかもだな。俺がジェノサイドの時使った方法は、この広い草原では使えない。ウォールを使ったところで、馬車まで迂回される可能性があるからだ。
どうする?とにかく速く行動するべきだな。
取り敢えず馬車の向こう側に出る。
そこにはレイさんたちが地面に転がっている姿。
「は?」
「オラッ!」
「ガッ!?」
受け身も取れずに顔から地面に転がる。
痛ってえ…コレ、後ろから切りつけられたな。背中がマジで痛い。
さっき受け身が取れなかったのは体の自由が利かなくなってるからか。デバフの所に『麻痺(重)』って書いてある。
――――――ハメられた。
あまりにも驚きすぎて逆に冷静に状況を確認してしまったが、どうやら応援の兵士全員がグルみたいだ。
「ハッ、チョロいとは聞いてたがここまでとは。あの野郎が言ってた『訪問者は俺たちみたいなこっちの世界の奴が危害を加えてくるとは考えていない』ってのは本当だったみたいだな」
「全くだ。拍子抜けだわ」
「おい、こいつ等意識は残ってるんだ。余計なこと話してんじゃねえ」
クソっ確かにこの展開は予想してなかった。
「なんでこいつ等殺しちまわないんだよ?」
「領主は兵士が入れ替わられてましたなんて公表できないだろ?この麻痺毒は短時間で強力な効果を発揮して、30分くらいで効果が切れる。痕跡を残さずにな。多少ダメージを食らったこいつ等が、馬車のあった場所に取り残されてたら、捨て駒にされたと思うだろう。だから、こいつ等が死なずに行き残っていれば、逃げ遅れた誘拐犯の仲間ってことになる。見ての通り、向こうの奴等にこっちを気にする余裕は無いし、訪問者の言うことなんて信じる奴はいないだろう?そんで、こいつ等の身辺調査なんかで無駄な時間を費やしてもらうのさ」
「なるほど、その間に俺たちは金をもらってオサラバってわけか」
「そういうことだ」
こいつ等…ッぜってえ殺す。
俺は自分が善人だとは思わないが、こういう人を利用するクズだけは殺してやりたくなる位嫌いだ。
あのクソアマを思い出すからな。
クソッ落ち着け、俺。とりあえずこの麻痺をどうにかしねえと何にもできねえ。
ジーグさんたちが俺たちを信じてくれないとは思わないが、証拠にも手掛かりにもなるクズ共を殺すと後が面倒だろう。とりあえず半殺し以上は確定だが、殺しはしないでおいてやろう。
幸いというか、クズ共は油断しきっている。奇襲すれば全滅とまではいかないが、半壊にはさせられるはずだ。しかし、体はピクリとも動かない。
チクショー、この麻痺毒さえ抜ければ……!
待て、毒が…抜ける…?
これでダメだったらマジで万事休すだ。ていうか、ステータス減少以外の状態異常攻撃なんてもっと先のエリアのMOBしか使ってこないと思ってたから、耐性スキル持ってる奴なんているワケねえだろ、マジで運営鬼畜かよ。
やるぞ…濾過!『麻痺毒』!
デバフの所から麻痺の表記がなくなっている。成功したようだ。
俺の体にはもちろん俺の魔力が伝っているし、対象が気体か、液体か、個体かを問わないなら、毒も俺の体内から抜き取れるはずだ。で、やってみたら成功した。まあ、毒を用いるんじゃなくて、呪いとか、精神的な異常を使われてたら効果がなかっただろうけどな。
取り敢えず、身動きは取れないフリをしておく。レイさんたちの毒も抜きたいが、流石に気付かれずに俺の魔力を伝わせることはできないだろう。
MPは全回なので、自分に全属性のエンチャントをかける。1対10の対人戦は俺だって怖い。だからこそ、出し惜しみはなしだ。
《格闘》の強化系アビリティを使う用意もしておく。特化強化は気刃化と気迅化にするつもりだ。最初に何人減らせるかが勝負だしな。
クズ共がバラバラになるまではじっと我慢だ。
馬車を移動させる準備を始めて、俺が倒れている真ん中の馬車の後ろ側には3人だけがいる。
「なにをするきさまらー!?」
「うるせえ、黙れやオッサン!痛い目見てえのか!おとなしくしとけやぁ!」
…もう、ゴール(スタート)してもいいよね?
さっきクズ共が麻痺している俺たち(俺はフリだけど)をバカにしている間に、1人ずつ《鑑定》してやったら、こんな感じに見えた。
名前 人族
剣:Lv.1~10
盾:Lv.1~10
短剣:Lv.1~10
多分だが、そいつの持っているスキルの内レベルの高い3つのスキルを表示してくれるようだ。まだ精度は悪いけどな。
それにしてもクズ共、個々の能力はかなり低いぞ。Lv.10~20のスキルがある奴は3人だけだった。
魔力の殻の大きさからして、素のレベルも高くて13くらいだな。
これなら、なんとかなるだろ。
用意しておいたアビリティを使って、跳ね起きる。俺の杖は放置で。
反応される前に、1人ずつ頭を思いっきり殴る。この時、浸透波を使って衝撃を直接脳みそにお届けしてやる。3人とも白目を剥いて転がった。残るは前と後ろの馬車の奴等だな。
聞こえてくる声の感じでは、今白目を剥いている奴等みたいに馬車の中の人を脅して遊んでいるようだ。つまり、馬車の後ろで、進行方向を向いているということだ。前の奴等まで行く間に後ろにいる奴に見つかったらめんどくさい。後ろから行こう。
ウインドエンチャントはある程度の消音機能も備えているので、隠密よりも速さ重視で行こう。
自分の下からクレイウォールを出して、その勢いで跳躍。後ろの3人組の内、2人の頭をひっつかんで浸透波を使いながら地面にドゴン。結構な音がしてしまった。驚いて身を引こうとしたもう1人の足を思い切り引っ張って地面に倒して、頭に手が届かないので浸透波で股間をドゴン。最後の奴、南無。
前の4人組には、さっきの音でバレてしまったようだ。
「なんだ、さっきの音は!?」
「おい、どうした!?」
もう真ん中の奴等のとこまで来てるな。さっきの方法で奇襲するか。
同じ手順で跳躍。魔力感知のおかげで相手の位置は分かる。それこそ、FPSでUAV使用中みたいに。
浸透波を使って地面に頭をドゴンして二人ダウン。もう1人近くにいる奴は立ち上がりざまに腹に肘をドン。スキルのおかげか、DEXのおかげか、それなりに自分がこう動きたいっていう動きができる。リアルの俺には無理な芸当だ。
後1人。
「こ、こっちくんじゃねえ!」
見ると、アミカさんの首筋に剣を突き付けている。…このクズはもう殺しちゃってもいいかな?
「テメエこの野郎!どうやって!確かに麻痺毒を食らったハズだろおが!」
「うん、食らったよ?」
俺の顔が笑顔で固定されてる。でも、この顔をやめたら酷い顔になりそうなので、このままでいいや。
「なんでだ!なんでガハァっ!?」
同じことばかり言いそうなので、クズの背中側の足元からアミカさんから離れるようにクレイウォールで突き飛ばす。薄く作って縦に出して、股間を強打してやった。
「ギッがあッ!?」
地面を転がってくるクズ。
こいつどおしようかなあ?
取り敢えず、浸透波を使って腹を踏みつける。
「ウッガアっハア!?」
お、まだ気絶しない。確か、こいつだけ剣と盾スキルの両方が10~20だったな。その分頑丈なのか。
「ゆ、許しギィ…ガッ」
「何フザケタこと言ってんの?俺たちのこと利用しようとしたり、俺の知り合い殺そうとしたり、したよね?」
次は喉を踏みつける。浸透波は使っていない。
「まあ、殺しはしねえよ。後がめんどくさくなりそうだから。もう寝てろよ。ウォーターヒール」
あまりにフザケタことを抜かすので、ついつい笑顔がとれてしまった。
一応死なないようにヒールでHPを回復させてから、浸透波を使って頭を蹴り飛ばして、気絶させる。
さて、ロープロープ、っと。
トンネル作業用の備品だけど、緊急事態だから、お借りします。
取り敢えず全員一か所に集めて、1人ずつグルグル巻きにする。
いや、亀甲縛りで結ぶのがお約束なんだろうけど、結び方分からんし。
作業を終えたら、レイさんたちから麻痺毒を抜いていく。
「すいません、遅くなりました。ちょっと皆さんの麻痺毒を抜きたいんですけど、人にやったことはないので、うまくいかないかもです。くすぐったかったり、気持ち悪かったらごめんなさいです」
1人ずつ魔力浸透を使って、麻痺毒を濾過していく。
正直、どうすればうまく人の体に俺の魔力が伝わるのかわからないので、両手を持って、心臓まで魔力の線を通して、更にそこから全身にいきわたるようにイメージして使ってみた。最初は1人当たり3分くらいかかったが、最後のニックさんの毒抜きは30秒ほどで終わった。
真っ先に麻痺が解けたアミカさんは、
「さっきの凄くくすぐったかったんだけど!ていうか、剣突き付けられたときちょお怖かった!」
と憤ったりしていたが、最終的に全員の感想をまとめると、「それよりもどうやって解毒したんだ」という問いが多かった。
「いやあ、レイさんたちが転がってる姿に驚きすぎて、逆に冷静になって、毒なら《錬金術》の濾過で抜き出せるんじゃないかなあって思って、やってみました」
「コウの発想力ってどうなってんだろうな…。生産もやるって言ってるけど、コウがどんな作品作るのか、今から心配だぜ」
「むう、失礼な。全力で趣味全開だけど実用的なものを目指しますよ」
「いや、その説明のどこで俺たちが安心できるんだよ…。お、ジーグたち帰ってきたぞ」
事情説明とか色々手間がかかりそうだな…。ハア。めんどくさいことしやがってからに。
コウ君、キレるの巻
何だかんだでラプスたち以外にも友達が増えていくコウ君のVR道中をお楽しみください。友達百人できるかな?
今後、MOB以外の敵はこういう外道さんになると思います。基本、今回のようなチンピラさんですね。
『基本』、ですけど。




