⑨。
次回で次の街について説明すると言ったな。
<あぁ、言った、言ったよ!
あれは嘘だ。
パッ
うわあああああああ
ログアウトすると、携帯が鳴っていた。
香澄からだ。電話に出る。
『あ、やっとでた!アンタ、大丈夫?』
「なにがだ?」
『あいつらに酷いことされなかったかって聞いてるの!』
「大丈夫だよ、あいつら俺の顔知ってるハズなのに、俺だって気づいてなかったみたいだし」
『そう、それならまあ、よかったけど。ログインするなって言われなかった?』
「説明不足なんだよ。俺だってみんなと居たいし。10分待っても電話がこなかったから、様子を見に行ったんだ。そしたらなんか囲まれてるっぽいお前らを見つけたから、離れた路地裏からコールしてみたら、声であいつらって分かったから、その場を離れたよ」
『しょうがないでしょ、ログインする5分前くらいにいきなり電話かかってきて、実は私たちもそのゲーム買ったって言われて、一緒に遊ぼうって話になっちゃったんだから。あいつら無視してもまだ行ける場所が少ないから下手に撒けないし。アンタには会わせたくなかったからログインするなって言ってもらったんだけど、結局遭遇しちゃったわね。』
「あぁ、お前ら集まってやってたのか。」
『えぇ、今日は美奈の家に集まってるの。』
「あ、俺、今後ソロでプレイするから。なんか有用な情報が《鑑定》で分かったら伝えるけど。」
『ハァ!?アンタ、何勝手なこと言ってんの!?』
「だって、お前らはまだあいつらと付き合ってないといけないだろ?でも、俺が近づくとお前らにも迷惑がかかるし、あいつらの相手がめんどくさいし、いいことねーもん。こんな風に電話で話してるだけじゃ、お前らも詰まんないだろ」
『そんなことないわよ。この2か月、4人じゃあ、何やってもあんまり楽しくなかった。でも、まだあいつらとまだ離れられないのも、本当』
奴らの手口はマジで虫唾が走る。
奴らのグループ傘下に入ったいじめられっ子は、4人の威光でいじめが止まるのだ。戌亥たちが放っとけるわけがないのが分かっているので、それを見せつけて戌亥たちが離れられないようにしている。
戌亥たちはいじめっ子の方を駆逐してグループから解放してやろうとしているが、その策は遅々として進んでいない。
「大丈夫だって、もうすぐまた一緒に遊べるさ」
『そうかな…?』
「ああ、大丈夫だ」
これは気休めではない。VRといってもネトゲの一部なのだ。奴らはある程度経ったら今度は強豪レギオンに取り入って、戌亥たちを辛い目に合わせるだろう。第三の街サーズまで奴らが進んだら、すぐにでもレギオン締結クエストを受けて、他のレギオンと距離を詰めようとするはずだ。そうなれば、俺があいつらを一人残らずPKする日も近い。
それでグループをぶち壊した後のいじめられっ子のことなど知ったことではない。自分のことは自分で守ってしかるべきだし、俺は戌亥たちさえいてくれればいいのだ。
その後も話していると
『そういえば、あなたは今後どうするの?』
「俺か?俺は今日はもう疲れたからログインしないぞ」
『宿はどうしてるの?』
「ギルドの近くに取ってるよ」
『少し遠い所にしないと、鉢合わせるんじゃない?あいつら、ずっとついてくるし。』
「大丈夫だよ。俺がいるのセンドだし」
『…………』
「もしも~し、どした?」
『も、もう、紘は昔っから冗談が下手ね!そんなウソ信じるわけないでしょ!』
「んあ、まだシステムメッセージ見てないのか?そういやずっと俺に電話してたみたいだし、そりゃそうか。一回ログインしてみそ。ほんとかどうかわかるから」
『いいのね?ウソだったらおばさんにアタシが中学校の頃見つけたアンタのエr「それ以上言うな!お前一応女なんだから!その条件でいいからログインしてみろって!」分かったわよ。それじゃみんなで行ってくるわ。またあとでね』
電話が切れた。
1分後
電話が鳴る。待っていたので直ぐに電話にでる。
「おー、見てきたか?」
『アンタなにやったのよ!』
声の響きからするとスピーカーにしたな。
「いや、何って、ウサギをジェノサイドしてやったんだが」
『お前、結構騒ぎになってるぞ。先発組が6人がかりでできなかったことを1人でやった奴がいるって。掲示板もちょっと早くなってるし。』
『ねぇ、もう信じるけど、どうやって倒したの?』
「頭掴んで、火の壁に突っ込ませて、魔法が来たら誘爆させて、最後はキュッとしてっやったら勝てたな」
『なんとなくしか伝わってこないんだけど!』
今のでなんとなく伝わるってすごいと思うよ。
「わかったよ。ちゃんと説明するよ。えっとな…」
自分の行動を思い出しながら説明する。
「…って感じだな。思ってたより楽だった。1発クリアだったし」
『アンタぐらいしかそんなことできないわよ!』
『なるほどな。相手を使って防御するから摩耗するのは相手だけだし、魔法もわざわざ躱さずに誘爆させることで利用したのか。でも、《格闘》を持ってる奴やDEXも上げてる奴はかなり少ないから、マネできる奴はそうそういないんじゃないか?』
「そーなのかー」
『ねぇ、こんだけ私たちが心配してる間に、アンタなにしてくれてるの?さっきの返答もだけどバカなの?死ぬの?』
「それは勘弁してくれよ。俺だって、お前らに交じってもやっていけるくらいには強くなってやろうと思ったんだよ。俺はセンドの北にあるダンジョンでレベリングすることにしたから、お前らも早く来いよな?」
『待ってなさいよー!あんたなんかに先を越されちゃベーターの名が泣くってもんよ!』
「そんなんチートや!ってか?俺はウサギジェノサイドで疲れたから、もう休むわ。じゃあの」
『そ、お疲れ!じゃあね!』
『じゃあなー』
『また明日な』
『おやすみなさい』
電話を切る。
…俺だって、1人は、楽しくない。
次回こそは次の街です。
本当に申し訳ない。




