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人間水槽

作者: 赤月の大和

この世界は狭い。この世界は水槽で僕らは金魚だ。そして、僕らは水槽の中を知ることすらできていない。どころか、金魚はお互いを殺し会う…。なんとも滑稽な話だ。誰もが争い、誰もが知りたがり、そして誰もが死んで行く…、たったそれだけのことだ。これはそんな「人」という種の金魚のお話。


「ゆーーやーー!!!」

いつものように物思いにふけっていると、隣からうるさい声が聞こえた…イヤホンごしに。

「うるさいよ、稲出」

「だってー…由夜がさー…」

うるさい『稲出久美』

制御役の『須井哭人』

そして俺、『安宅由夜』

いつもの三人組だ

「いつもの考え事でしょ、また締切近いんじゃない?」

「ぐっ」

「ほら、やっぱり」

「仕方ないだろ?時間なかったんだよ…」

「…僕にかまってる暇があるなら、締切のこと考えたら?」

「くそ…、お前なぁ…」

「それより由夜ー!!遊ぼーよー!!!」

「だー!!うるさいんだって久美!ちょっと向こう行ってなさい!」

「そうやってすぐ子供扱いするー…」

「…はいはい、二人とも落ち着いて」

「心底どうでも良さそうな声だな、哭人」

「どーしたの?なきー」

「とりあえず稲出はその『なき』っていうのやめて」

「えー!いいじゃん!」

「…この年でそれは恥ずかしい」

「もっと言ってやれ久美!」

「なーきー!!」

「…もう帰っていい…?」

「まぁ待てって♪」

「…とりあえず、待ってあげるから本題に入ってよ」

「締切も近いし、早くしろよ?久美」

「はーい♪」

「なぁ、哭人」

「…うん、由夜」

『………不安だ』

「それで、今回のお仕事はね…」


俺たちはただバカな三人組じゃない。普通に学校生活を行っている裏で、ちょっとした仕事をやっている。

…まぁ、仕事と言うよりはボランティアの方が正しいかもしれない。給料でないし。

「今回は、わりと近場で…学校の近くのコンビニわかる?」

「あぁ、常連だしな」

「そこの裏の家」

「マジか…なら早く片付けようぜ、今日コンビニ行くつもりだったんだ!」

「それじゃ、いつも通り哭人は…」

「…わかってる、コンビニの向かいで待機するよ」

「うん、よろしく!」

「そんじゃ、お仕事しますか!」

『了解!!』


「…『水槽』は準備大丈夫?」

「大丈夫だよー、知ってのとおり今回は人目につかないよう、注意してねー」

「了解…哭人、そっちは?」

「…いつでもどうぞ」

「よし、始めるぞ!」

…俺は持ってきた札を家の玄関に張り、即座に手持ちバッグを構える。

次の瞬間ー


紫のオーラが辺りに広がりはじめ、霧が出始めた。

そしてそのなかに…

人がいた。

「…目標発見」

「どんな感じー?」

「んー…雑魚かな、俺たちだけでなんとかなりそうな感じ。哭人、そっちにおびき寄せるからあと頼んだ。久美、哭人の近くまで『水槽』の移動頼む。あと、本部に増援不用って言っといて、よろしく。」

『了解』

俺たちの仕事は、この『ヒトガタ』と呼ばれる『もの』を捕獲すること。

『ヒトガタ』が姿を表したことを確認すると、由夜は目標地点まで走り始めた。

後ろからはしっかりと『ヒトガタ』がついてきている

「おし…ついてきてるな…。哭人、そろそろでるぞ!」

「…わかってる…」

「もうちょっとテンション上げようぜ…ってうぉっ!!!」

哭人との会話中にいきなり『ヒトガタ』が殴りかかってきた。『ヒトガタ』は物体に干渉できないが、殴られると身体に異常が起きるため、ある意味では殴られるより危険だ。

「…ヤバイわ、追い付かれたし、元気はつらつ、その上凶暴化しちゃってます…」

「それ、なきだけじゃ無理じゃない?」

「…由夜、削って」

「えー…めんどくさいんだけど…」

「いいから」

「はいはい…援護頼むよ!!」

俺はポケットからサバイバルナイフを取りだし、それに札を張り付けた。

そして…

「くらえゃぁ!!!」

『ーーーーーー!!!』

足を切りつけられた『ヒトガタ』は、悲鳴にもならない声をだした。

「へっ!痛いのは初めてかい?遠慮せずもっと受け取りな!」

足を切りつけたあと、全身を適当に切り刻む。少しして『ヒトガタ』がふらついた。

「哭人!ダメージ入った!」

「…『水槽』に入りそう?」

「充分!」

「…避けてよ、当たったら死ぬよ?」

「知ってる!!」

その直後

『パァン…』

銃声が辺りにこだまし、『ヒトガタ』が倒れた。

殺したわけではなく、単に体力を奪い瀕死状態に持ち込んだだけなので、回復するまえに方をつけなければ…

「久美!『水槽』早く!」

「急かさないでよ、由夜!」

しかし、最悪なことに『水槽』はまだ移動を終えておらず、久美と共にこちらに向かっている最中だった。

「くそ…もう回復し始めてる…」

撃たれたはずの傷跡は、既に塞がろうとしていた。外傷からの回復なので、そう早くは動かない…そう思った刹那ー

「うぉっ!?」

目の前を『ヒトガタ』の腕が掠める。

見ると、既に起き上がってこちらに体を向けていた。

「もう回復したのか!?」

「…違う」

「分かるのか?哭人」

「…多分、意地」

「意地とか…勘弁してくれよ…」

「…もう一度」

「分かってるよ!!」

『ヒトガタ』が振り上げてきた手を避け、後ろへと回り込む。そして自分の狙っている獲物に向けて体重を移しー

「くらいやがれ!!!!!!!」

『ーーーーーーー!!』

膝の辺りを狙って切りつけ、ダウンさせた。

「…撃つよ」

「おぅ!!」

そして二発目の銃弾が『ヒトガタ』を貫いた

「お待たせ致しましただよー二人ともー!」

「遅い!とりあえず早く捕獲してー!!」

「ぶー…誉めてくれたっていいじゃん…」

不満そうな久美と共に、二階建ての家くらいの大きさの箱『水槽』が運ばれ、そのなかに瀕死状態の『ヒトガタ』がいれられた。

「よし…お仕事完了!」

「それ私の台詞…」

「お疲れ様、稲出」

「由夜のいじわるー…」

「たまにはいいだろ、いつも久美がやってんだから」

「むー…なきからもなにか言ってよー!」

「…じゃあ稲出はその『なき』って言うのやめて」

「いや」

「…なら由夜が何しようと知らない」

「むー…」


『ヒトガタ』に関してわかっていることは少ない、物理的干渉を受け付けなかったり、出現位置に特殊な周波数の電波が発生すること、そして人の死の先にある『成れの果て』だということだけしかわかっていない。

俺たちの仕事は、この謎の多い『ヒトガタ』を、高位捕獲術式を施した『水槽』にいれ、クライアントの研究を手伝うこと。そのために設立されたのが

高位捕獲術式『水槽』を作れる久美

札の能力で、『ヒトガタ』に物体を干渉させることができる由夜

銀の弾丸と特殊戦闘技術をもった哭人

この三人が所属する軍の秘密組織

『ヒトガタ』独立対処部隊

『アクアリウム』だ。

「しかし、今回のクライアントは随分優しかったな、哭人」

「…うん、正直少し驚いてる」

「どしたの?由夜もなきも」

「何って、気づいてたろ?周りに人払いの結界がはってあったの。あれ、今回のクライアントの仕業だぜ。」

「え!?そうなの?」

「…稲出は気づかなかったかもね、無効化できる程度の術式だったから」

「へー…」

(でも、だったらなんで人目につかないようになんて書いてあったんだろう…)

「まぁ、おかげでいつもより楽だったけどな!」

「…同意」

「まぁ、いっつも見つからないかヒヤヒヤだしねー」

「…ところで由夜」

「ん?」

「…報告書の締切は?」

「……あ。」

「あーあ、やっちゃった♪」

「…今回の報告書もあるんだし早くしなよ?」

「くっ…嫌味なやつめ…悪いが俺は先に帰るぞ!」

「私も行くー!」

「…僕も一応」

「邪魔だけすんなよ!行くぞ!!!」

『了解!』


end


初投稿なので荒い点が多々ありますが、これからよろしくお願いいたします。

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