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小さな冒険

作者: 橘 紫織
掲載日:2012/09/01


 夏休みが始まった。待ち遠しくて、カレンダーを何度も見直した日々が終わったのだ。前々から用意していたリュックをもう一度見直す。おかし・お弁当・ライト・タオル・昔お父さんから貰った方位磁石。おっと忘れちゃいけないのは水筒。これがなかったら枯れてしまう。


 リュックを背負っていざ出発。お母さんに気をつけてねと言われたのでうん、と大きくうなづいた。玄関を得て田んぼ道を延々と歩く。右を見ても左をみても景色は山と田んぼだけ。ミンミンとセミが鳴く。暑いのに元気だなって僕は思った。


 どれくらい歩いただろう。後ろを振り向くと知らない景色が広がっている。ぐぅとお腹が鳴った。田んぼの小道に腰を下ろす。水が流れていて、足をつけると冷たかった。


 お弁当を広げると大好きなからあげと玉子焼きが入っていた。それを食べていると遠くから人の声が聞こえる。


「何してんだ?」


「冒険!」


 車をのろのろと動かしてきたおじちゃんに聞かれたからそう返した。そしたら驚いた顔して、でも突然笑いだして「そうか。気をつけろよ」って言ってあめ玉を二つくれた。


 お弁当をしまってまた歩き出す。あんな所に石なんてあったかな?あの虫はなんて名前なんだろう?見るものすべてが面白い。そんなことを思って歩いているうちに空が赤くなってきた。目的地もすぐそこだ。


「あ、おばあちゃん!」


「楽しかったかい?」


「うん!」


 おばあちゃんの家までの道のりは僕にとっては冒険道で、最高の冒険だった。


 これは僕の、夏休み初めての思い出。




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