続・やっぱりなかよし。
二匹にプラトニックでいて欲しい方は、一応、避ける方向でお願いします。
ラグラスは、なんとなく、小ウサギさんの気持ちが少し変わってきたらしいことにも気づきはじめました。
これは、なんとしても確認せねばなりません。
「お嬢ちゃん、恋、というものを知っているか?」
「こい、ですか? はい、もちろん知ってます」
ラグラスの腕の中で、真っ赤になっているプリムラが、小さくうなずきました。
「恋っていうのは、不思議なものでな、知らないうちに、心に忍び寄って、心を奪い取るんだ。ずっと、一人に縛られるつもりなんてなかったが、お嬢ちゃんになら、いいな。いや、お嬢ちゃんになら、縛られたい、そう思うよ」
「……ラグラスさま……」
プリムラがラグラスを驚いたように見上げました。
「あの……こいってなんですか?! 池にいるお魚さんじゃなかったんですか?! 奪い取るだなんて、恐ろしいものなんですか?!」
なんと! 「こい」は池で泳いでいるお魚さんではなかったのです!!
プリムラ、お約束過ぎるボケです。
でも、このボケは、定番も過ぎて、使われなくなってしばらく経っているんじゃないかと思われます。笑う気にもなりません。
しかし、本気で訊ねているプリムラは、ドキドキと緊張しながら、ラグラスを見つめています。
ラグラスは、がっくりときました。キメたつもりの告白は、まったく、全然、プリムラには伝わってなかったのです。
「いや、その、恋というのはだな……」
少し泣きたくなるような気持ちで、ラグラスは、説明する言葉をさがします。
「恋というのは、好きっていう気持ちのひとつなんだ。それで、恋している相手と一緒にいると、ドキドキしたり、するんだ。俺は、お嬢ちゃんに、恋をしている。ほら、心臓の音が早いだろう?」
ラグラスにうながされるまま、心臓の位置に身体をあずけます。少し早く、トクトクと、音がしています。
「お嬢ちゃんを好きで好きでたまらないからこうなるんだ。俺はお嬢ちゃんと一緒にいるだけで楽しいし、うれしい。この世の全てに感謝したいくらい、幸せになる。泣きたいくらい幸せ、という気持ちは、お嬢ちゃんがこうして傍にいてくれるときの気持ちをいうのかもしれないな。何もかもが、満ち足りていて、完璧と思えるほどの幸せ。それを感じさせてくれるのが、恋という気持ちだ。俺は、そう思っている」
プリムラは、その言葉を聞きながら、切なく胸が痛みました。でも、イヤな感じではありません。それどころか、とても、幸せなのです。これが、泣きたいくらいの幸せ、というものなのでしょうか。プリムラは、ぼんやりと思いました。
これが、恋、なのかな?
私は、ラグラスさまに、恋してるのかな??
恋という言葉を知ったばかりのプリムラには分かりません。でも、ひとつだけ、とても確かなことだけは分かっています。
「私は、ラグラスさまのことが、とっても好きです。この気持ちが、恋かどうかなんて、分かりません。でも、私は、ラグラスさまのことが、一番、好きです。ラグラスさまと一緒にいるときが、一番幸せです。私は、ラグラスさまがお側に置いて下さるのでしたら、それだけで、幸せです」
「……お嬢ちゃん」
ラグラスが感極まってプリムラを強く抱きしめました。
プリムラは、ドキドキしながら、逃げてしまいそうになるのを必死でこらえていました。
「ずっと、ラグラスさまのお側にいたいのに、緊張して逃げてしまいました。ラグラスさまの傍にいると、とても幸せで、安心していたのに、いつの間にか、そんなになってて。……今も、ラグラスさまの傍にいると、幸せです。でも、前よりもっともっと、幸せな気がします。緊張するけど、ドキドキするけど……ずっとこうしていたいです」
ラグラスは、確信しました。
お嬢ちゃんのハート、ゲーーーット!!!!
そして。
「お嬢ちゃんっっっっ」
かくして、おおかみさんになったおおかみさんに、かわいい小ウサギさんは、おいしく食べられてしまったのでした。