第2章:日常と無関心
入学から数日が経った。
制服にも、朝の電車にも、教室の雰囲気にも少しずつ慣れてきた。
ミっちゃんと同じ学校ってことも、最初の頃ほど特別な感じはしなくなった。
今日は少し帰りが遅くなった。
図書室でプリントの整理をしてたら、いつの間にか部活帰りの子たちの声が響いていた。
昇降口まで行くと、ミっちゃんが廊下の端で待っていた。
スマホを見ながら、静かに立っている。
「……あれ? 待ってたの?」
私が言うと、ミっちゃんは顔を上げた。
「うん、たまたま時間合ったから」
それだけ言って、ふたり並んで歩き出した。
ミっちゃんと一緒に帰るのは、いつぶりだろう。
いや、最初の入学式以来……?
──そんなことを思っていた、その時だった。
「シズー! いたいたっ!」
後ろから声がかかる。
アヤとユカだった。中学からの友達で、今も同じクラス。
「一緒に帰ろーよ!」
「うん、行く!」
返事をしてから、私はミっちゃんを振り返った。
「……またね」
「うん」
ミっちゃんは一瞬だけ目を合わせて、すぐに踵を返して歩いていった。
あ、グッドサイン──出さなかった。
そのことに、少しだけ気づいたけど、
私はアヤたちの方へ走った。
⸻
家に帰ってスマホを見ると、通知がいくつか来ていた。
その中に、ミっちゃんからのLINE。
⸻
ミっちゃん:
「遅くならないようにね」
「途中、風強いから気をつけて」
「傘ある?」
⸻
私はそのメッセージに既読だけつけた。
返信はしなかった。
画面を消して、リビングに向かう。