3話後編
兎を追いかけて数分後。兎が木の根に引っ掛かり、倒れた。兎の耳を掴み持ち上げる。
「キュ!キュ!」
暴れる兎の動脈を切り裂く。木に巻き付く蔓を利用して足から吊るし血抜きをする。
一段落と木の根に座りそして、ようやく気付くのだ。自分が迷子になったことに。
「ん?ここ何処?」
辺りを見渡しても木しか映らない。熱源感知と魔力感知の範囲外にいるためかゴブゾは、いない。
完全に迷子になった俺は、さっきの兎の魂をちびちび喰らう。
「どうするなかねぇ。兎腐ると勿体ないから眷属作成するか!」
俺は、兎を地面に置き、眷属作成を行う。
『眷属作成を開始します。素材を確認。ストックされた全ての魂から新たに魂を作成します。・・・ゾンビを作成中。』
「え?ストック?そんなのしたっけ?」
兎の死体は緑に発光する。ゴブゾとは色が違う。
『ゾンビ作成終了』
とりま、鑑定を。
種族【ゾンビ(ホーンラビット)】
Lv .1
『名付けを行いますか?』
「んー。兎のゾンビ。んーどうしよう。白い兎。ハクトだと男ぽいし、可愛いから女の子ぽい方が似合うしなぁ。どうしよう。シロナ。いや、雪のように白いし『ユキナ』にしよう!」
『名もなきリッチにより、ゾンビは、『ユキナ』の名を得ました。名を得たことによりシロナは、進化します。』
凄い倦怠感が俺を襲い。立っても入られなくなりその場に座り込む。シロナは再び緑色に発光する。
遠くから俺をマスターと呼ぶゴブゾの声が聞こえたが強い眠気を感じ、俺の意識はそこで途絶えた。
気がつくと、兎の耳が特徴の見知らぬ美少女とゴブゾがガンつけ合っていた。
何この状況。
「「マスター!こいつ誰?!」」
「えと君誰?」
銀を溶け流れたような銀髪のさらさらな髪が腰まで伸びていてルビーのようにきれいな瞳。特徴のある兎の耳。雪のような白い肌。美形な顔が華奢な身体にのった背の低い少女に指を指してそう言った。
「嘘よねぇ。私の事。わ、忘れたの?」
かすれた声でそう言って今にも泣きそうな美少女の肩を軽く叩くゴブゾは「わかるぞその気持ち」と何度も頷く。
「もしかしてユキナ?」
「何よ!!分かってるんじゃない!!泣かせるんじゃないわよ!」
ホントにユキナ?。
種族【ゾンビ(兎人族)】
名前【ユキナ】
Lv .10
種族【吸血鬼】
名前【ゴブゾ】
Lv .10
スキル
【魔物喰らい】
ユキナであってるわ。よかった。
「ゴブゾ!進化してる!!」
「はい。兎狩りを終えたら進化してしまして」
「えーマジか。」
「で!マスター!こいつ、誰よ」
ユキナはバシッとゴブゾを指をさす。
「私は、マスターの第一眷属でゴブゾと申します。」
ゴブゾは、深々と頭を下げる。びっくりした顔をするユキナ。
「う、うちが最初じゃないの?」
「そうですねぇ。・・・。私がユキナのお兄さんとなりますねぇ」
「くっ。兄さんずらするな!」
「いやです」
再び睨み合う二人を眺める。
ユキナは、ゴブゾの顔、目掛けてローキックをする。ドーンと轟音が鳴り響く。片手でユキナの攻撃を防いでいた。
「痛いですよ」
「噓!?」
いがみ合う二人。
「挨拶は、そこまでにして攻略に戻るよ」
「はい。マスター」
「わ、分かった。マスター。」
俺たちは、攻略を再開した。
☆
森を探索してようやく、次の階層の階段を見つける。そこには、黒い兎の人型が立っていた。
フロアに足を踏み入れた瞬間。俺に黒い兎は、ローキックをするがユキナがそれを足で防ぐ。
「マスター。集中しなさい。」
「ありがとう。ユキナ。」
「別にいいわよ」
ユキナは、少し照れていた。
黒い兎は、下がり、ニコッと笑う。
凄まじい速さでゴブゾを狙う。ゴブゾは、太刀で蹴りを往なし反撃するが簡単に避けられる。
黒い兎は、嘲笑い、来いよと手招く。
ユキナとゴブゾは、黒い兎の挑発に乗り攻撃を仕掛けるが弄ばれていた。
「こいつ。」
「早いですねぇ。多分、この兎。本気を出してませんね」
黒い兎は、ユキナとゴブゾを蹴り飛ばして、俺にかかと落としを仕掛けるが盾で弾き返し、剣で黒い兎の腕を切り落とした。黒い兎は、先までの余裕だった表情が曇った。
「ギューキュー!!」
黒い兎は、叫ぶとホーンラビットの群れが押し寄せ、足の踏み場が無くなった。
「何よこれ!!」
「これは、さすがに」
「鬱陶しい」
兎たちが四方八方から攻撃を仕掛け、弾丸の雨かと思うほど猛攻の嵐。
剣で斬っていくがキリがない。
段々とイライラが募り、感情が爆発すると黒い霧を出る。黒い霧が大鎌の形を成し、剣を投げ捨て大鎌を掴み取る。
「「マスター」」
その大鎌を見た二人は怯えていた。
「死を告げる大鎌」
俺は、それを振り回されすと一瞬で兎たちは、消滅した。
その光景を目の当たりにした黒い兎は、腰を抜かしその場に座り込む。大鎌は、霧散した。俺は、剣を拾い黒い兎に剣先を突きつける。
「キュ。」
「じゃあな。」
黒い兎の動脈を斬る。
「マスター。だ、大丈夫ですか。」
「・・・あ。大丈夫だ。」
黒い兎から魂が現れる。その大きさは、ソフトボール並みだ。見た目以上ずっしりと重い。一口齧るとゼリーような喉ごしだ。
ユキナは、腰が抜けていたらしく座り込んでいた。
「ユキナ、大丈夫か?」
「ええ。大丈夫」
俺は、ユキナに手を伸ばす。ユキナは俺の手を取る。ユキナの若干震えていた。ユキナを立ったせる。
「次の階層、行くか!」
俺は、背中を伸ばして階段に向かった。
「ねぇー。マスターのあの不気味な力は何?」
「私にもわからないが、これだけはわかる。あの力は・・・」
「え?そんな訳ないと思うけど」
「そうだといいが」
ゴブゾとユキナがこそこそ、何か話しているが途中、聞こえなかった。気にはなるが今はいいや。なんかすっきりしたし。
俺たちは、この階層をあとにした。
続く