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魔道大国日本、異世界へ  作者: 輪舞曲
9/10

第九話 礫沙諸島

週末インフルに罹っていたのですが、予防接種していたとはいえ中々辛かったです。


 魔法歴2040年6月

 ラダーノット大陸から東南東400km地点

 大日本帝国領 礫沙(レキザ)諸島



 日本から北西北に600km、ラダーノット大陸から東南東400kmの地点に、九州より少し大きい程度の大きさの本当を中心とした群島が存在する。


 この群島は現在大日本帝国の領土として、現在日本の軍事基地が急ピッチで建設されていた。


 現地には居住していた部族たちもいたが、未知の空飛ぶ艦船を前に恐れをなし、容易に日本の支配下に組み込むことができた。


 そして彼らと会談を行った際、この諸島がレキザ、と呼ばれていることがわかり、当て字として礫沙と称されるようになった。


 そして、建設の主要となっているのが長田広や直島秀喜らラダーノット大陸へと派遣された外交官たちの護衛として随行していた大日本帝国空軍所属第伍魔道航空艦隊である。



「なんと……僅か一週間ほどで、これほどの建設が進んでいるとは」



 そう呟いたのは、ラダーノット大陸東端のドーリッジ王国から一時的に本国との調整のために帰国の途上であった長田広である。

 大陸側での連絡要員として、副使である直島ら数名は残されているが、それ以外の者は送迎に来た『白鳩』によってこの礫沙中央基地へと運ばれていた。


 同基地では、おそらく第伍艦隊の兵員とも思われる者たちや機械群が建設作業に従事していた。

 そして、眼前には自身の降り立った着陸地点があり、その付近には十分な長さの滑走路が広がっていた。



「外務省新世界局長田広局長、同A大陸課直島秀喜課長ですね?お待ちしておりました。第伍艦隊所属航空戦艦『鳳凰』副艦長蜂屋 路人中佐です。お見知りおきを」



 彼らの乗ってきた白鳩の着陸した場所から数メートルほど離れたところで、ある一人の兵士が長田らのもとへ近づいてきていた。


 おそらく四十半ば歳ほどであろう彼の差し出された手を、長田がとって握手を交わす。


 その様子に蜂屋は友好的な笑みを浮かべると、自身の左手に見えるある建物を指差した。



「これから、私どもが皆様をあそこまで案内します」


「む、てっきりこのまま飛行機に乗り換えて本国へ向かうものかと思っていたが?」


「私どもには分かりかねますが、本国の指定があったようで、あの建物の中で、米沢外務大臣がお待ちです」



 二人は驚いた。いくら軍が駐屯しているとは言え、まさか大日本帝国の外務大臣自らがこのような未知の島に足を踏み入れるとは思わなかったからだ。

 しかし同時に、それほど政府がこの新大陸との交渉に力を入れているかをも実感した。


 蜂屋の誘導で皆は2組に分けて軍の四輪駆動車に乗り込み、すでに舗装されている道を走ってゆく。出発してから数分で目的地には辿り着き、豆腐型のやたらとインスタントじみた二階建ての建物へと入る。



「こちらです。大臣、長田広大使以下、使節団の方々がいらっしゃいました」

 


 蜂屋がノックをして扉の中へ声をかけると、すぐに扉の向こうから重厚感のある低い声が聞こえてきた。



「うむ、入れ」



 その声に従って蜂屋が扉を開け、長田たちがその部屋の中に入ると、一人の男が椅子に腰掛けており、机の上に両手を重ね、声音から想像できた通りの無表情のまま長田たちを見つめていた。


 そして、その脇には蜂屋と同様に軍服を着た二人の男が立っていた。しかし、彼らの胸元につけられた勲章は蜂屋のものより遥かに多い。


 彼らは第伍艦隊司令官北野 幸雄空軍中将と、第伍艦隊旗艦『鳳凰』艦長大塚 高昌空軍大佐の二人で、蜂屋の上官にもあたる。



「君たちにはわざわざ足を運んでもらってすまない。しかし、ドーリッジ王国、だったか?彼の国の要求してきた軍艦の派遣は少々、というよりかなり本国でも議論になってな。外務省の長たる私が自ら最も近いこの地で監督するということを条件に、本国は航空巡洋艦を1隻派遣することで合意した」



 長田たちは絶句した。国交のない国へ軍艦を派遣するなど信じられないことであるからだ。戦争になってもおかしくない行為である。


 向こう側による何らかの罠の可能性もある。無論、数日といえど彼らと関わった長田たちからすると彼らを信じたい気持ちもあったが、それでも外交官として何か裏があると警戒するのは当然であった。


 しかし本国でも議論の上、このような結論が出たのだということは理解しているため、驚きつつもそれを口にはしない。



「驚くのも無理はないと思うが、そういうことだ。君たちが事前に知らされて向こう側と交渉した通り、会談は五日後に行われる。それまで、君たちにはここで待機していてもらう」



 こうして、長田らは礫沙において数日を過ごすこととなった。




 ◆




「ふぅ、疲れたな」



 大日本帝国外務省新世界局局長長田 広は荷物を部屋の隅に下ろすと、スーツを脱いで、丁度右側の壁にあるハンガーラックにかけた。


 一応この宿舎も軍の施設ではあるが、外交官などのゲストに当てがう客室であるため、それなりにしっかりとした個室になっていて、ベッドやシャワー、冷蔵庫もついている。


 ここ最近は向こうの方で寝泊まりしていたので、流石に環境の悪さから疲れが溜まっている。シャワーを浴びてそのまま寝ようかとも思った。


 しかしまだ仕事も残っているため、中々その決断に踏み切るのは難しい。


 ふと、机の上に置いていたスマホが振動した。何の通知かと手にとって見ると、内地の父親からのメッセージだった。



 長田氏は、室町時代に美濃守護を世襲した六条氏の家臣であった一族で御堂北家閑院流の庶系である加茂氏の庶流である。長らく六条氏の分家で、尾張守護の家系である豊寺家に仕えた。戦国時代中期に主家からの養子を迎え、江戸時代は親藩に準じる格付けを受けその嫡流は越前福井藩主、吉田藩主などを務めた。


 長田家には嫡流以外にもいつくか系統があるが、広の系統は一般に片桐家とも呼ばれる、豊寺家からの養子となった十代目当主以前に本家から別れた家系であり、十代目の義父である九代目の叔父、八代目の弟から始まる。江戸時代は長田家の嫡流が藩主を務める越前福井藩の家老職を務め、維新後は男爵となった。



 現在の片桐長田家の当主は広の父である周義(ちかよし)で、貴族院の男爵議員を務め上げている。そして、広は次男であるが長男である兄が平民と結婚して(貴賤結婚)相続を辞退しているため、広が次期当主と見做され、外務省でこうして働いている。


 本来なら自分は平凡に銀行員をやっている予定だったが、あの奔放な兄のおかげで自分にお鉢が回って来てしまった。


 まぁ、最もそれは30年ほど前のあの時だったから成立した価値観で、今では貴賤結婚くらいで世子を外されることは滅多にないだろう。そもそも、平民や華族といった呼称さえも差別的という考え方も出て来ているくらいなのだ。


 広自身は次期当主となった時に持ちかけられた縁談をそのまま受け、今の妻は同じく華族である大桑子爵家出身である。


 しかし、自分の子供たちが平民出身の女性と結婚してもそれを止める気もなかったし、また長男は既に喜多子爵家出身の女性と結婚しているが、彼が平民女性と結婚しても彼を次期当主から外すつもりも毛頭なかった。



 父親からのメールの内容は、単に向こうの近況を知らせるもの、そしてこちらの身体を気遣う旨のものだった。


 親からのこういったメッセージは些細なようだが有難いことだな、と思いながら自身も息子たちにメッセージを送っておこうと考えていたのを思い出した。


 広は仕事はメッセージを終えてからでいいか、と思ってスマホを手にとったのだった。





これからは勉強優先で更新遅くなりそうです。

ただでさえ遅いのに申し訳ありません。

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