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魔道大国日本、異世界へ  作者: 輪舞曲
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第十話 アラニヤ




 神聖歴1701年白月(テュレル)

 ラダーノット大陸東部 ドーリッジ王国

 聖地アラニヤ



 大して舗装のされていない道の両脇に中世初期然とした背丈の低い石や木造りの建物群が並び、その周囲をこれまた石造りの城壁が囲む。


 しかし、この街では王国内の他の都市と比べても明らかに古い建物が多いことが目立つ。特に、街の中央に鎮座する城と南に位置する聖堂は幾度かの改修を経てはいるが、非常に古いものである。


 それもそのはず、700年続くドーリッジ王国の歴史の中で、最も歴史ある地がこのアラニヤなのだ。王国の建国者で、王国最初の王朝であるアラニヤ王朝の開祖レグラスはこの地で生まれ育ち、やがて大陸東部に一大王国を築き上げた。


 無論、現在の王朝はアラニヤ朝とは異なる。

 アラニヤ朝は300年ほどで断絶し、今のヘザーレ王朝は三つ目の王朝で現在200年ほど続いている。しかし、王国前期の300年間は間違いなくこのアラニヤの地が王国の中心地出会ったことは間違いない。


 そのため、ここアラニヤの地は今でも王国で最も歴史と権威のある街の一つてわあり、またその重要性から若干飛び地のような形でありながらアラニヤは王家の直轄地となっている。


 また、街に存在する聖堂では代々のドーリッジ王の戴冠が行われてきた。そして教会の聖地としても今でも多くの人が行き交う場所である。



 そして今日、このアラニヤの空は、いつも見える青色の一部が、ある景色で塗りつぶされていた。



 ─────それは巨大な、黒色。その巨大な影ではっきりとは見えないが、とにかくその巨体だけははっきりと見てとれた。そしてそれはやけに重く低い音を微かにだが発し続けていた。



 ドーリッジ王国の人々は知る由もないが、この黒い影の正体は日本が王国に派遣した軍艦であった。

 光雲級航空原子力誘導弾(ミサイル)巡洋艦。全長180mにも及ぶその巨大な軍艦は、大日本帝国においては旧式と言っても良いような艦船であったが、最新鋭の軍艦を派遣することのリスクもあり、比較的対他能力に優れているという点も評価されたこともあって今回の任務に採用された。



 このような今までにない事態に、アラニヤの街の人々は皆外に出て空を見上げて空を覆うものについて話している。



「おい、何なんだよ、あれは!?」


「わからん……けど、ニホンって国の軍艦だって聞いたぞ」


「何で他国の軍がここにいるんだよ!?しかも、あんな空飛ぶ船なんて……」


「俺にもさっぱりだ。けどもしかしたら、ニホンは〝文明圏〟の国家なのかもな」


「文明圏だからって関係あるかよ。みすみす他国の軍艦を侵入させるなんて、王は何を考えてるんだ」


「さぁな。ただ、レバンテのやつらじゃなかったのは安心してるよ」


「まぁ……それは間違いないか」



 ともかく、ニホンという国の名とその使者たちと王が交渉しているという話が広まっていた。しかしそれでもなお、人々は不安気な表情で空を見上げていた。





 アラニヤの城において、数人の男たちが面会していた。彼らは服装が文化的にも質的にも非常に異なっており、半々程度の割合であった。


 もちろん、紺色のスーツを着た男たちは長田 広大使以下大日本帝国の外交使節である。



「今回向こう側の外交官は誰なんでしょうね。前にエノンの城に来ていた人でしょうか」


「さぁ、どうだろうか。向こうのこの力の入れようからすると、外務大臣クラスが来ることもありえるかもしれんぞ」



 正使である広と副使である直島 秀喜がそう小声で相談し合う。

 確かに国交のない他国の軍艦を自国の領土内に招き入れるなど聞いたことがない。この前代未聞の対応は向こう側に何らかしらの意図があるとしか思えない。


 などとしていると、漸く日本側の使者を留め置いていたドーリッジ側に動きがあった。どうやら、向こう側の代表者が到着したようであった。


 4人の甲冑を身に纏った兵を脇に伴って現れたのは、耳下くらいまでに伸びた、男性としてはやや長めの金髪に青い色の瞳をした初老の男がいた。男はもみあげから顎下まで豊かな髭を蓄えていて、長田大使らはある種の威厳を感じた。


 男が纏う衣服は飾り付けは質素ながらも良質な布を使って作られていることが傍目からも分かり、それだけで日本側の使節団も彼が相当な地位にいるだろうことが察せられた。



「使節団の方々、よく来てくださった。歓迎いたす。私はドーリッジ王国の王、ラス・ラカルと申す」



 そう両の手で拳と平手を合わせて告げる男の肩書きに、日本側の使節団は驚愕した。まさか、一外交官相手に封建的国家の国王が謁見するとは。


 使節団の面々は慌ててラス・ラカル王に向かって両手を胸の前で合わせて頭を下げた。単に両手を合わせるものでない、いわゆる拱手と呼ばれるものである。元は中国由来のものであるが、相手に合わせてそのように礼をとった。



「こ、これはまさか、国王陛下御自らいらっしゃるとは………」



 使節団は咄嗟に頭を下げたものの、直接王に向かって話しかけたことで、近衛と思われる両脇の兵が長田たち使節団を睨みつける。


 しかし、ラス・ラカル王がそれを制止し、「使節団の方々よ、直答を許しましょうぞ」と語りかけた。それを受けて、恐る恐るではあるが、日本側も王に向かって口上を申し上げる。



「ご尊顔を拝謁し賜り、恐悦至極で御座います。私は、大日本帝国外務省新世界局長兼、ラダーノット大陸派遣使節正使の長田 広と申し上げまする」


「同じく、副使の直島 秀喜でございます」



 そうして日本側の使節団が深々と頭を下げると、ラス・ラカル王は内心で彼らの予想外の慇懃ぶりに面食らいつつも、友好的な笑顔を見せて応答する。



「はは、何もそのように堅くなさらずとも。あの軍艦を見れば分かります、貴方方の国は途轍もない技術を持った国だ。その様な国家の代表者が、その様な低姿勢では、無用な侮りを受けますぞ?」



 王としては珍しいような言葉であったが、これは本心でもあった。基本、高度な文明を持つ国家は国にもよるが、少なくとも文明圏外の国家の人間に対して遜ることは少ない。


 ましてや、幾ら王と言えど文明圏外の国家に対して最上位の文明圏に比すると思しき文明力を持つであろう国家がこのように慇懃さを見せるなど、通常では考えられないことであった。



「大慈なるお言葉、誠に有り難く存じます。しかし、我が国としては文明力のみが国の格を決める、という考えにはあまり与みすることができません」


「なんと………」



 長田大使の予想外の返答に、王はまた酷く驚いた。国の格とは、文明力によって決まるものではない、という考えを、高度な文明を持つ国家の代表者が口にしたということに衝撃を受けたのである。

 では一体、何が国の格を決めるというのか。今すぐに問いたくなったが、王として自らここに来た責任と役割を思い出し、すんでのところで思いとどまった。



「う、うむ。貴公の考えはよく分かりました。で、ではそろそろ、会議室へ移りましょうぞ」



 やや動揺を隠し切れないながらも王がそう言うと、使節団は王やその護衛、そして王国の外務担当官ら数名と共に会議室へ移動することとなった。




見返すと展開が遅いような気がしてます。

気のせいですかね?

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