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紙飛行機と一緒に、消えて無くなってしまった《なろうラジオ大賞応募》

作者: 品画 十帆

 嫌なことがあると僕は、時々だけど、紙飛行機を飛ばす事がある。


 紙飛行機をわざわざ飛ばすからと言って、精密な折り方や科学的な機体を、作っているわけじゃない。

 ただ丁寧に紙を折っているだけのものだ、誰でも作れる、ただの紙飛行機だと思う。


 僕は高いビルの上から、紙飛行機を飛ばした事がある。


 その紙飛行機を、若い男性が拾ってくれた事により、運命が大きく変わってしまう。


 お礼を言った時に、若い男性は「僕は君の紙飛行機で良く生きる事にしたんだ」と照れながら、僕と握手をしようとしてくれた。

 だけど僕は、握手をするなんて少しも考えてなかったから、慌てて手を差し出したよ。

 もう少しで若い男性の手に、当たってしまいそうだったな。


 そのことで僕と若い男性は、お互いに笑ってしまったんだ。

 僕は焦って変な風に手を突き出したし、若い男性は僕の手の勢いに驚いて、「ひっ」と軽く悲鳴をあげていたからだと思う。


 両方とも自分の情けない所を、笑って誤魔化そうとしたんだ、僕はそうだった。


 無理やりだったかも知れないけど、笑い合った事で、僕と若い男性は今でも連絡を取り合っている。

 昨日は職場のチーフに怒られて、〈こんなのやってられないよ〉と荒れていたな。


 ビルの上から飛ばした紙飛行機には、僕が学校でいじめられている事が書いてあったんだ、いじめる同級生の名前や何もしてくれない担任の先生の名前も書いておいた。


 飛び降りるつもりだったけど、下を見たらとても怖くなって、飛び降りる気は直ぐに無くなったんだ。

 ただぼーっと空を眺めていた、暗くなってもずっと。


 もう学校には行きたくなかったから、家にも帰りたいとは思わなかった、未来の事は何にも考えられなかったんだ。


 若い男性は紙飛行機を拾ったのだが、書いてあった担任の名前に強烈な思い出があったらしい、昔からいじめを放置する先生だったみたいだ。


 若い男性は嫌な物を拾ってしまったと最初は思ったらしい、家に引きこもってダラダラと生きて来たのに、人の生き死に関わるような事を知ってしまい、眩暈がしたんだって。

 酎ハイが無くなったから、コンビニへ買いに来ただけで、なんでこうなるんだと頭をかきむしったと言っていたよ、ははっ。


 知ったからにはしょうがないと、若い男性は僕の紙飛行機を警察に届けてくれた、その後は大騒ぎだ。


 いじめていた同級生と担任の先生は、僕の前から消えて無くなった、紙飛行機と一緒に飛んで行ったのだろう。

「なろうラジオ大賞6」に応募しています。



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