物語の始動
『うぉぇぇぇ…』
『マナミちゃんが喰われ』
『あぁ、終わった…』
とある配信のチャットはお通夜モードになっていた。それもそのはず、配信でその配信を行なっていた マナミチャンネルのマナミがインフェルノハウンドに喰われていたからだ。インフェルノハウンドはニタニタと笑いながら引きちぎった足を噛み砕く。
このような事態に陥ったのは数分前、マナミはいつものように配信しながらダンジョンに潜っていた。すると、何者をも畏怖させる咆哮と共に現れたインフェルノハウンドによってボロボロになり、ゆっくりと喰われていた。
-インフェルノハウンドは晴人ですら胸糞悪い奴と評するほど残忍である。捕まえた獲物をただ食うだけでなく、生きながらゆっくりと食すことで獲物を絶望に叩き落とす。晴人もこれをやられたことがある-
話を戻すと、最初は抵抗し悲鳴をあげていたマナミも既に虫の息となっており、インフェルノハウンドは飽きたのか大きな口を開けマナミな頭を噛み砕こうとした。
その瞬間、インフェルノハウンドは動きを止めて通路の奥を見た。そこには謎の男性 晴人がいた。
『だ、誰!?』
『逃げるんだよ早く!』
『あいつ何してんだ!?』
そんな言葉がチャットに並べられる。そしてインフェルノハウンドが晴人に噛みつこうとした瞬間、晴人は何かを呟きながらインフェルノハウンドの首を切り落とした。
『ファッ!?』
『な、何が起こった!?』
『ふっ、なんと早い一撃。俺でも見えなかったね』
『見えてねーのかよ』
そんなコメントが流れる中、晴人がウンディーネを呼び出し治療を始める。
『な、なんだあのモンスター!?』
『見たことないって言うか再生って言ったか!?』
『なんやそれ?』
『確か使える奴が【光の聖女】しかいない魔法で、欠損した部位を治す魔法らしい…初めて見たわ』
『というかあのウンディーネってモンスターもやばいことしてないか?』
『サラッと精霊水って言わなかったか?』
そんなコメント欄な中、色々と装備をあげたあと、去っていくシーンが流れた。
『何だったんだあいつ…』
『おい誰か特定しろ!』
そうして、特定班が晴人を特定しようとしたがそれは無理であった。
それもそうである。なんせ晴人という存在は世間では死亡という扱いになっているからである。
ー
アメリカ
今では世界有数のダンジョン国家であるアメリカ、そんなアメリカのとある州の巨大な屋敷では、1人の女性が立ち上がった。それにより、高級な紅茶が溢れる。
「お嬢様、どうか致しましたか!?」
「ローズマリー、どうかしたのか?」
「す、すいませんお父様…ですが、これを…」
その女性は自身が先程まで見ていたタブレットを見る。それを見た初老の男性と白い髭を生やした執事が驚愕の表情を見せた。
「精霊水を出すモンスターだと!?」
「あ、ありえません…そんなモンスターがいるなど…」
「セバス、今すぐ旅支度の準備をお願い」
「ローズマリー、まさか…」
「日本に行って彼に会いに行きます…誰かはわかりませんが、ダンジョンに行けば会えるでしょう」
「…そうだな、スカーレットを助けるのに精霊水は必要だ…助けるにはこの少年が最後の頼みの綱か…行ってきなさい。諸々のことは私がしておこう」
「ローズマリー様、こちらへ」
「えぇ、急ですが行ってきます」
そう言った女性は執事と共に急遽日本へ向かうことにした。