かーちゃんね、修のことが心配なんよ
ゴソ…ゴソ…
(zzz…zzz…………ッ⁉︎)
修は下半身の冷たい感触で目を覚ました。
女は昨日と同じく修の股の間に座っているようだった。
(この感じは…手⁉︎…だ)
どうやら両手で握られているようで、その手が少し冷たく、触れた瞬間に冷っとしたのだと気づく。
女の手がギュッと握ったかと思うと根元まで移動する。
その瞬間、一気に生暖かい感触に包まれる。
(…!?)
すぐにざらざらとした感触が、裏側を擦り上げる。男はそれが口の中だとすぐに気づいた。
女はぬるぬると絡みつくように何度も上下に頭を動かしていた。
ずっとお預けを食らっていた修は、今までとは非にならない程の強い刺激に、今夜こそはと神経を集中させる。
そんな修の思惑を見透かしたように、フフッと漏れる吐息が濡れたモノへと吹きかけられる。
そしてまた一気に奥深くまで飲み込んでは、先ほどよりも早く強く動き出す。
強弱をつけ、緩急をつけ、何度も何度も舐めたり咥えたりを繰り返していた。
しかし修が絶頂に達することはなかった。
ひたすらに何時間もただただ果てることなく、行為は続けられるだけだった。
そして目を覚ます。
時間は6時だった。
修は限界を迎えていた。
最早、彼女の事しか考えられなかった。
どうやったら最後までいけるのか。いかせてもらえるのか。悩み苦悩する。
ハンドソープへ話しかけてもいつも通りの単調な返事しか返ってこない。
修は気を紛らわせる為に昼間から酒を大量に流し込んでいた。1時間もすると泥酔し、キッチンにもたれかかりながらハンドソープに話しかける。
「今すぐ君に会いたい…」
ジー…ウユーユ!
「どうしたらずっと一緒にいられる?」
ジー…ウユーユ!
「俺のこと好きかい?」
ジー…ウユーユ!
「じゃあ何故最後までいかせてくれないんだ!!!」
ジー…ウユーユ!
俺がこんなに辛く苦しんでいるのに…何故彼女はこんなにもいつも通りなのか。
修自身、彼女に八つ当たりしていることは重々承知だった。しかし彼女はいつものように優しく返事を返してくれる。
それがたまらなくもどかしく、辛く、苛立ちが募る。
(…彼女に八つ当たりだなんて、なんて情けないんだ。少し頭を冷やそう…)
キッチンに寄りかかり立ち上がろうとしたが、よろけてハンドソープにぶつかってしまった。
ハンドソープはそのまま床に叩きつけられ、細かい破片が飛び散り割れてしまっていた。
修は慌ててハンドソープを拾い元の場所に戻したが、動かなくなっていた。
何度も話しかけたが、反応はなかった。
機械自体が壊れてしまっていたようだった。
「そんな…嫌だ…嫌だ!!すまない!!!」
男は慌てて外へ飛び出す。
色んな店を周りセンサー式のハンドソープを探したが、全く同じ物はどこにも売ってなかった。
仕方なく別のセンサー式ハンドソープを購入し、元の位置に置く。
(…お願いだ…頼む、動いてくれッ!!)
「そこにいるんだろ⁉︎いるならいつもみたいに動かしてくれ!」
……………………。
「そんな…そんなっ!そんなっ!そんなっ!!!」
修は何度もハンドソープに話しかける。
しかし一度も返事は返ってこなかった。
「ア”ア”ッ!……ア”ア”ア”ッ!!!ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ッ!!!!!」
修は泣き叫びながら壊れたハンドソープを抱きしめて、蹲うずくまってしまった。
プルルルルルル!プルルルルルル!プルルルルルル!プルルルルルル!プルルルルルル!〜〜
ポケットに入れていたスマホが鳴る。
プルルルルルル!プルルルルルル!プルルルルルル!プルルルルルル!プルルルルルル!プルルルルルル!〜〜〜〜〜
スマホはそれからも何回か着信があったが、その度に虚しく鳴り響いていた。
それ以降、彼女が現れることはなかった。