98.情報は大事
「やっぱりよくは思われていないですよね?」
「そうだろうね。むこうからしてみたら、
第二王子に頼まれて二人の恋がうまくいくように応援した、
それがうまくいかなかったからと言って自分のせいじゃない、
くらいに思っているんじゃないかな。
なぜ怒られたのかも理解していないだろうね。
レイニードとエミリアを知っていたら考えが違ったのかもしれないけれど、
二人を応援する会の令嬢たちとも仲良くなかったようだし。
新しく入学してきた者たちは剣術大会の一件も知らないだろう。
顔合わせた時に睨んでくるくらいなら放っといてもいいかもしれないけれど。
で、そのエリザベスって子も、因縁がありそうだね?」
「…はい。従姉妹ではあるのですが、
もともと父と見合いの話があったのは叔母の方で、
母はその付き添いだったそうなんです。
父が母を選んだことで叔母は母を恨んでしまって…
侯爵夫人になるのは自分だったはずなのにって。
その恨みが募って、4年ほど前に、
母を毒殺して自分が侯爵夫人になろうとしたんです。」
「毒殺!?またそれは…根が深そうだ。」
「結果、叔母は毒殺未遂で捕まったのですが、
夫である前リンデ伯爵を毒殺したこともわかって、
平民落ちで強制労働の刑になっています。
エリザベスは母方の伯父には引き取りを拒否されて、
父方の叔父夫妻に引き取られることになりました。
新しく伯爵になった夫妻には子がいなかったので、
姪のエリザベスを養女にして継がせることにしたと聞いています。
もともと私とはあまり仲の良い関係ではなかったこともありますが、
その時以来会っていないので、何を言って来るかわかりません。」
「ふうん…なるほどね。レイニードはどう思う?」
「俺から見て、エリザベスが一方的にエミリアに嫌がらせしている感じでした。
エリザベスはエミリアに負けたくないって思っているように見えました。
おそらく母親がエミリアの母に負けたのを恨んで、
エミリアに負けるなと言って育てたんだろうと思います。
義母上のことを恨み過ぎて、
自分が侯爵夫人に成り代わろうとしていたエリザベスの母と、
考え方は同じじゃないですかね。
もうエミリアに何かあったとしてもエリザベスが侯爵家を継ぐことはないので、
エンドソン家に何かしてくることは無いでしょう。
だけどおとなしくリンデ伯爵家を継ぐのではなく、
侯爵家以上の家を狙っていると思います。
このまま伯爵家を継いだらエミリアよりも爵位が下のままですから。
考えられるのはマジェスタ公爵家のジョルジュとか、うちの兄とかですかね。」
私よりも上の爵位に嫁ぐ…たしかにその二人くらいしか心当たりがない。
伯爵家のエリザベスだと他国に嫁ぐということは求められないだろうから。
それにしても…ここでもライニードがねらわれるとは。
「なるほどね…今の情報をもとに、また探らせてみるよ。
わかったら教える。…二人とも、気を付けるんだよ。
あと、ルリナとファルカもね。仲が良いから人質にされることも考えられる。
身の回りには十分に気を付けるように。」
「「「「はい。」」」」
「…あのね、私が知ってる情報もあるのだけど、いい?」
「はい。」
「その…マジェスタ家のジョルジュなのだけど、入学直前に婚約したそうなの。
お相手はジェミーナ・ユールリア。ユールリア公爵家の末娘で12歳。
そのせいでまだ婚約したと知られていなかったみたいなのだけど、
そのエリザベスとジュリアで取り合ったそうなの。
と言っても、勝手に二人が盛り上がって取り合ったそうだけど…。」
は?
公爵令息を取り合った?もうすでに??
伯爵家のエリザベスはともかく、男爵令嬢のジュリア・ニールも?




