76.思わぬ依頼
王宮に呼ばれたことについてお父様と話をしようとしたら少し待てと言われ、
三日後にジョランド公爵が家に訪ねてきて四人で話すことになった。
お父様としては公爵とも情報共有したかったのだと思う。
話し合いを待つ三日間の間に、私たちは思わぬところから情報を得ていた。
すぐにお父様と話し合っていたとしても、無駄になってしまうところだった。
「そうか、王宮へと呼ばれたのか。」
「はい。正式に陛下から謝罪したいと言われました。
陛下が歩けないので、王宮まで来てもらえるかと。
陛下の体調はそこまで悪くなっているのですか?」
「そうだ。
二か月ほど前から、もう下半身は少しも動かないらしい。
一日のうちわずかな時間だけ王座にくくりつけられるように座って、
一部の家臣とだけ会って王政を動かしている。
細かな打ち合わせは第一王子が私室まで行って話をしているようだ。」
「そこまでひどく…。」
お父様から聞いた話は、レイニードから聞くよりもずっと重い状態だった。
レイニードの話では二年後の夜会の時でも王座に座ることはできていた。
一体どうしてこれほどまでに悪化しているのだろうか。
「レイニード、もしかしてやり直し前とは違うのか?
お前は王宮で護衛騎士をしていたのなら、
その時の陛下の体調くらいは耳にしていたはずだろう。」
「はい。俺の知っている陛下の体調とは違います。
前の時は最低でも二年後までは王座に座ることができていました。
下半身に麻痺が残っているのは知っていましたが…。」
「その麻痺の原因も知っているか?」
「…俺が知っていたのは表向きの理由でした。
昨日、魔術師協会の魔術師長から手紙が来て、真実を知ることができました。」
「お前たちも真実を知ったのか。
じゃあ、それを指示したのが側妃だということも知ったんだな。」
「…そうです。
手紙にはその時のことが書かれていました。
ジョージア様の乳母がジョージア様を刺し殺そうとして、
それを止めに入った陛下の腰を刺されたこと、
その時の剣に毒が塗ってあったために陛下の下半身に毒が残ってしまったこと。」
「その当時は陛下を狙った刺客だということにしていた。
ジョージア様が狙われたことを公表せずに犯人を捜したんだ。
結果、乳母を脅していたのが側妃だということがわかった。」
「その時の毒が原因で下半身に麻痺が残り、陛下は子を作れなくなったそうです。
だから、側妃がジョージア様を狙ったことがわかっても、
すぐに処刑できなかったと書かれていました。」
「ビクトリア王女が側妃のお腹にいたからだな?」
「父上たちはそれを知っていたんですね…。」
「いや、お前たちからビクトリア王女の話を聞いてから、
もしかしたらそうじゃないかと思ったんだ。
さすがに俺たちでも側妃が王女を産んだことを知らされていなかった。
側妃も見た目は聖女なのに、中身は恐ろしいほどの悪女だった。
俺たちが側妃が病死じゃなく処刑されたことを知っているのは、
側妃の悪事を調べる担当だったからだ。
俺は副団長として担当し、リンクスは刑務官として担当していた。
侍女や侍従、その家族まで調べたら、恐ろしいほどの事実が出てきた。
側妃は人の弱みを握って脅し、
またそのことを利用して他の者も脅すような人間だった。
罪が多すぎて処刑するまでに時間がかかったのかと思っていたが、
王女を産むまでの時間が必要だったんだな…。」
私たちが幼いころに病気で亡くなったと聞いていた側妃。
それがジョージア様の命を狙った罪での処刑だった。
そのことにも驚いたが、ビクトリア様が王妃ではなく側妃から生まれている。
だから王妃は王女に関わろうとしないのかと納得することもあった。




