67.お茶会の授業
貴族科での授業にも慣れた頃、一度目のお茶会が開かれ参加していた。
礼儀作法の授業の一環として行われるこのお茶会は、
高位貴族である侯爵家以上と、伯爵家、
下位貴族である子爵家以下の三教室にわけて行われる。
以前に出席した時には一言も話せずに、ただじっと時間が過ぎるのを待っていた。
だが、今回のお茶会は全く違っていた。
公爵家のリリーナ様を始めとして令嬢たちに集中的に話しかけられることになった。
私が貴族科ではなく魔術師科にいること、レイニードと婚約していること、
他国の王族と仲がいいことが話しかけられた要因だった。
貴族科ではない私と話す機会はなかなか無いからと、
このお茶会を待っていたと令嬢たちに微笑まれて戸惑ってしまった。
強くなるためにはどうしたらいいかアヤヒメ先輩に何度か助言を受け、
これまで練習を繰り返してきた結果、
どの令嬢に質問されても堂々と受け応えることができた
助言を受けた当初は、貴族らしく応対することがどうしても難しかった。
以前の弱気だった自分がどうしても捨てられなかったからだ。
私が貴族として強くなるのは難しいと判断したのか、
アヤヒメ先輩は魔術師として出席するようにと勧めてくれた。
これからは一人前の魔術師として、
六か国の大使と話すのだと思って令嬢たちと接するようにと。
弱気で話した結果、相手に良いように言質を取られてしまえば、
魔術師として利用されてしまうことになる。
出来ないことは出来ない、それが言えなければ魔術師として生きていくのは難しい。
弱気でいれば搾取されて使い捨てられることになる。
そう説明されてから、私の意識が変わったように思う。
私が魔術師として利用されてしまったら、
きっとレイニードも同じように利用されることになる。
そんなのは絶対に嫌だった。
一度意識が変われば、お茶会に参加することは怖くなかった。
ここにいる令嬢たちは私を傷つけることはできない。
公爵家の令嬢だとしても、魔術師である私に手を出すことは許されていない。
もちろん身分の差はあるが、私が下手に出る必要は全くなかった。
弱気にならず、かといって驕ることも無く、聞かれたことには答え、
できないことはできないとしっかりと断る。
それさえできたら、お茶会の菓子の味を楽しむ余裕さえあった。
「夜会デビューはいつにするか決まっていますの?」
「そうですね。私の誕生日の後になりますので、5か月後になります。」
「ジョランド様もご一緒に?」
「ええ。その予定です。」
「本当にお二人は幼いころから仲がよろしくて…うらやましいですわ。」
「ありがとうございます。同じ道を志している者同士、気が合うのでしょう。」
周りの令嬢たちも私とレイニードの仲の良さがうらやましいと言ってくれる。
同じローブ姿でいつも一緒にいるのを見ているので、そう思うのだろう。
その仲を裂こうとするような令嬢もなく、お茶会は和やかな雰囲気で終わった。
剣技の授業を受けているレイニードをこのまま教室で待とうと思っていると、
教室の入り口付近で私の名前を呼んでいる令嬢がいた。
きょろきょろと人を探すような動きをしている小柄な黒髪の令嬢。
「何か御用ですか?」
声をかけると私に気がついて教室内へと入ってくる。
こちらを見る、緑目に泣き黒子。…この令嬢、男爵令嬢のジュリア・ニールだ。
初対面なはずだけど、どうして私を探してここへ?
「あなたがエミリアさん?
私と一緒に来てくれる?」




