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6.教会

「魔力測定か…懐かしいな。」


懐かしい…レイニードの言葉にどう反応して良いのかわからず、笑ってごまかす。

確かに記憶の中では7年前だけど、ここでは2年前…。

まぁ、12歳の子どもがいうことだから問題ないかな。

カミラを見ると少し笑っているように見える。

きっと私たちが微笑ましく見えるのだろう。



馬車の中、レイニードは私の隣に座ることを譲らず、ずっと手を離さないでいる。

手をつないだままお父様の前にいるのが恥ずかしくて離そうとすると、

泣きそうな目で責められてしまうので、もうあきらめることにした。



「手をつないでいないと、これがまだ夢の中なんじゃないかって不安なんだ。」


お父様とカミラに聞こえないほどの小さな声でレイニードがつぶやくのを聞いて、

どれほどレイニードは怖かったのだろうかと思った。

私もこれは夢だろうかと思うけれど、そこに不安は無かった。

夢なら夢で、死ぬ前の一瞬でもレイニードがいてくれるなら、

それでいいんじゃないかって思うから。




教会に着くと、見覚えのある神父様が出迎えてくれた。

まだ若い神父様で、2年前の時はこの教会に就いたばかりだったと思う。

奥の部屋へと案内されてついていくが、

家族ではないカミラは測定中の部屋に入ることができない。

待っている間は礼拝してきますと言っていた。


教会の奥の部屋に入ると、測定用の水晶が置かれていた。

この水晶にふれると、魔力の量や質がわかるそうだ。


私が測定した時は真っ白な光で、それなりにまぶしかった記憶がある。

それを見たお父様が悲しい顔したのが苦しくて、

自分に魔力があることを素直に喜べなかった。

お父様は…また悲しい顔をするかしら。

そう思ったらお父様の方を向けなくて、うつむいてしまう。


ふと頭の上に手が置かれているのを感じ、

見上げたらお父様が心配そうに私を見ていた。


「私に魔力が無いのはもうあきらめているから、気にしなくていいんだよ。

 10歳の時、うれしそうな顔したのに、私を見て喜ぶのをやめただろう。

 ずっと気になっていたんだ。

 エミリアに魔力があるなら、それを喜んでいいんだよ?」


「お父様…。私、魔術師になりたいの。なってもいい?」


「なんだ、魔術師になりたかったのか!

 じゃあ、なおさら喜ばないとな。

 お父様ができなかったことを、エミリアが代わりに頑張ってくれるか?」


「…っはい!」


うれしそうに笑ってくれたお父様に、もう隠さないでいいんだとわかった。

私の魔力も、魔術師になりたい気持ちも。

振り返ったら、レイニードも笑ってくれていた。


「さぁ、どちらから測定しますか?」


神父様に聞かれて、私が先に返事した。

今度こそ、ちゃんと喜んでお父様に報告したかった。


自分の手のひらよりもはるかに大きい水晶にふれると、力が吸われる感じがした。

前と同じ感じ…この後光ったはず。

そう思った瞬間、部屋中が白銀の光であふれた。

驚いて手を離しても数秒は光ったままで、光が収まった後も驚きは止まらなかった。



「…今の何?」


「…神父様、今のは?

 エミリアが10歳の時の光とは違うのはなぜですか!?」


「…もしかして、神の加護がついたのかもしれません。

 白銀の光は普通の魔力ではありえません。」


「神の加護?じゃあ、もしかして俺も?」


「…何か心当たりがあるのか?

 レイニード君は魔力が無かったはずなのに、魔力測定してほしいっていうのは、

 神の加護が理由なのか?」


「…まずは、測定してみましょうか。」


レイニードの前に水晶がおかれ、同じように手を伸ばしてふれる。

ふれた少し後、同じように白銀の光が部屋にあふれ、やっぱりと思う。


レイニードにもやり直しの記憶があるというのがどういうことなのか、

少しだけ想像できていた。





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