42.血の一族
「なぁ、血の一族ってなんだ?聞いてもいいものなら教えてくれないか?」
血の一族…ルリナとファルカの一族のことだよね。
確かに気になる…けれど、聞いていいのかわからなくて聞かなかった。
それをレイニードは気になるようでファルカに確認していた。
「…魔術師の中では有名な一族なんだ。
昔、魔術師に人権が無かったのは知っているよな?」
「ああ、それは聞いた。」
「…魔力が強いものは容姿が整っていると感じたことは?」
「ん?気にしたことは無いが、そう言われてみるとそうだな。」
魔力が強いと綺麗?何か関係あるの?
「とても綺麗な女性がいる。ものすごく綺麗な平民の女性だ。
後ろ盾もない、抵抗することもできない、誰もが欲しがるような女性。
どうなると思う?」
「綺麗の度合いにもよるが…貴族が手に入れようとするんじゃないか?
後ろ盾もなく抵抗できないなら、攫われてもおかしくないしな。
自分の愛人にするか、養女にして政略結婚させようとするだろう。」
「そうだよな。それが人権の無い女なら簡単に手に入れられる。
奴隷以下かもしれん。金のやり取りすら必要ないんだから。
俺のところに来い、そう言われたら従うしかない。
そんな風に綺麗な魔術師を愛人として囲っていた者たちがいた。
愛人にした魔術師から生まれた子どもは、愛人と一緒に閉じ込められて育った。
その子どもも愛人にされ、子どもの子どもも閉じ込められた。
そうやって増えていったのが俺たちの祖先である血の一族だ。」
「は?閉じ込めたってなんだ?
魔術師の子どもは取り上げられて魔術師になるんじゃなかったか?
それでまた魔術師同士で結婚させられるって聞いたぞ?」
「相手が普通の貴族ならな。
貴族じゃなく、囲ったのが王族だったんだ。
生まれてきた子供は王家の血をひくものだ。おいそれと外に出せない。
だから後宮の奥で、隠されて育っていた。
それが何代も続いて、一族ができあがった。
血の一族と言われているのは、
王家の血を持つ一族だが王家を名乗れないというのと、
俺たちを見てわかるように、魔力が強いものは赤い目をしているからだ。
一族が解放されたのは、エミーレ様たちのおかげだ。
あの改革の時に血の一族も解放されて外に出られたそうだ。」
「私たち血の一族はエンドソン家に恩があると言われて育つの。
いつかエミーレ様の子孫が困っていたら無条件で手を貸すようにと。
…もちろん、それが無くても友人には手を貸すけどね。」
「今は血の一族の人たちと王族で何かあったりはしないのよね?」
「しないしない。王家は俺たちに近寄らない誓約があるから近寄ってこないし、
俺たちは基本的に魔術師になる時は魔術師協会に所属するのを目指すんだ。
だから王宮で働くことも無い。
それに貴族じゃないけど、貴族と同じ地位はもらってる。
ブラッド家は伯爵位と同等の立場を認められている。
侯爵位以上の当主なら、血の一族を知っているから無茶なことは言わないしな。」
「そっか。話してくれてありがとう。
まぁ、お互い家名はこれからも名乗らないわけだし…。
何も聞かなかったことにするけど。」
「それがいいな。でも、何かあったら言えよ。
それだけは忘れないでくれ。」
「あぁ、わかった。」




