41.挨拶
「二人とも大丈夫?名前聞かれてるよ、挨拶できる?」
「あ、はい。…ルリナ・ブラッドです。よろしくお願いします。」
「…フォルカ・ブラッドです。ルリナとは結婚の約束をしています。
先輩方、よろしくお願いします。」
固まっていたけれど、相変わらず自己紹介にルリナのことが入っている。
その辺は変わっていないファルカに少しホッとする。
二人とも家名あるんだ。ブラッド家?そういえば同じ一族だって言ってた。
「エンドソン家と血の一族なのか。道理で優秀なわけだ。
これから同じ階にいるから顔を合わせることもあるだろう。
何かあれば頼ってくれ。」
「そうね。先輩として後輩に教えるのを楽しみにしていたの。
あまり教えられるようなことは無さそうだけど、頼ってくれたらうれしいわ。
これからよろしくね?」
笑顔になったジングラッド先輩とアヤヒメ先輩は、
そう言うと図書室へと消えていった。
二人の姿を見送って二学年の教室へと入ると、ルリナとファルカが崩れ落ちた。
「王族って…嘘でしょう。」
「…なんでこんなとこで…。」
さすがに急に王族と挨拶させられて緊張していたらしい。
レイニードは王族と近い場所で護衛させられていたから、
王族相手でもそれほど緊張しなかったようだ。
私は…違う意味で焦ってしまっていたので、近くにあった椅子に座って力を抜いた。
「はぁぁ。王族の方がいるなんて驚いたわね。
レイニードが前に出てくれたから良かったけど…ごめんね?」
「いや、いいよ。俺も突然のことでつい頭を下げてしまったからな…。
見慣れるまで大変そうだ。」
「そうよね…身に付いてしまっているもの。
先輩だって思えるように…なるかしら。」
アヤヒメ様は知っているけれど、ジングラッド様は初めてお会いした。
二人ともやり直し前も魔術師科にいただろうか…?
これは帰ってからレイニードに確認した方がいいかもしれない。
「ねぇ、エミリアってエンドソン家だったのね。
そうかなって少し思ってたけど、あのローブも納得だわ。
魔術書もエミーレ様の図書室があるんじゃ、読むのも早いわよね…。」
「うん、そう。家の中に図書室があるから早いんだと思う。
でもお父様は魔力が無かったし、お母様は魔力があっても使いこなせないの。
どうやったら魔術師になれるかわからなくて…。
お祖父様が図書室を閉じてしまったから、封印を解いたのも最近なのよ。
私とレイニードで協力して手あたり次第に勉強してたんだ。」
「納得~。その魔力量と才能なのに、常識が無かったのも。
それはそうなるか。」
以前に二人には貴族だと話していたからか、
私たちの家名がわかっても気にしてないようだ。
魔術師として働くときには家名を名乗ることも無いと聞いているし、
あまり関係ないのかも。
「なぁ、血の一族ってなんだ?聞いてもいいものなら教えてくれないか?」