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35.魔術書と三語

「あぁ、また!なんで開かないのよっ。」


学園生活も二週間が過ぎて落ち着き始めた頃だった。

休み時間にミーアが叫んでいるのが聞こえた。

見ると魔術書を開こうとしている。

かなり力を入れて開こうとしているが、魔術書はしっかりと閉じている。

…無理やり開いたら壊れてしまうんじゃないかな…。

魔術書が心配になって、思わず様子を見ていると、

それに気が付かれてキッとにらまれた。


「なんで見てんのよ!何か言いたいの!?」


「…無理やり開くのは良くないんじゃないかと思って…。」


レイニードが間に入って私を隠そうとしてくれたが、一応は同じクラスだし、

少し話すだけなら大丈夫だと目で合図する。


「はぁ?無理やりって言われても、開かないんだから仕方ないでしょう?

 …もしかしてあなたが嫌がらせしてるんじゃないの!?」


「え?…そんな嫌がらせなんてできない。」


どうやったら魔術書を開かなくさせるようなことができるのだろう。

言いがかりにしても無理がありすぎる。

でも、ミーアは本気で言っているようだ。


「だって、おかしいでしょう?どうしてこんなに開かないの!」


「ねぇ。」


興奮するミーアをなだめられずにいると、ルリナの冷静な声がした。

いつもはファルカの後ろに隠されているルリナが前に出て、

自分からミーアに話しかけるのはめずらしい。

ミーアも話しかけたのがルリナだと気が付いて、驚いているようだった。


「もしかして…ミーアさん、三語覚えていないんじゃないの?」


「だったら何よ。」


「三語覚えていないと魔術書は開かないわよ?」


「「え?」」


思わず私とレイニードの声が重なる。

え?何それ。三語って公式語三語のこと?

なんでファラー語で書いてあるのに三語覚えなきゃダメなの?


「…どうしてエミリアとレイニードが驚いてるのよ…。

 もしかして知らなかった?」


「知らなかったわ。え?そうなの?」


「それ本当なのか?俺も知らなかったな。」


「まぁ、二人は仕方ないか…。

 で、ミーアさん、魔術書読む前に三語覚えないと無理よ。

 どうやってもそれ開かないから。」


ミーアが持っている魔術書を指さしながら言ったルリナに、

怒りなのかミーアの顔が真っ赤になってプルプル震えはじめた。


「なんでよ!

 サウンザード人なんだから、ファラー語ができればいいじゃない!

 なんでわざわざ他国の言葉まで覚えなきゃいけないのよ!」


カシャリ


ミーアが叫ぶのと同時に、魔術書から大きな音が聞こえた。

今の音は何?ルリナを見ると少し青ざめている。

ファルカは両手を軽く上げて天を仰いだ。いったい何?


「今の音…なに?」


ミーアの怒りはまだおさまっていないようだけど、

持っている魔術書から不思議な音がしたことが気になるようで、

恐る恐るのぞき込んでいる。

それを見て、ファルカが呆れたように言った。


「あーあ。

 もうしばらく魔術書は開かないよ。

 これから三語を覚えたとしても開くかどうか…。

 言ってはいけない言葉を言ってしまったからね。」


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