32.ミーアという少女
大きな水晶の玉に手を乗せたら、乳白色の光がともった。
神父様の顔を照らすような光に、周りにいた者も息を呑んだ。
「素晴らしいです!この教会から魔術師の才能ある子は初めてですよ!」
そう言われてもよくわからなかった。
魔力測定をしに教会に来たのはいいけど、
魔力があるからって何か変わるんだろうか。
10歳になったら教会に行って測定する。
この辺の子どもたちはみんなそうしている。
だけど、測定するだけ。測定したからと言って何か変わることは無い。
次の日からまた日常生活に戻るだけだった。
10歳の誕生日の次の日、私も教会に連れて来られて、測定した。
神父様や侍女のアンナが騒いでいるけど、どうして騒いでいるのかわからない。
「…何かあったの?」
「お嬢様、魔術師になれるんですよ!すごいです!
私、この水晶が光るの初めて見ました!」
「普通は光らないものなの?」
「光りませんよ!ただ、手を乗せておしまいです。
何のために測定するんだろうと思ってましたけど、
お嬢様のような方を見つけるために測定するんですね!」
「そうなの…?」
この測定は誰のためでもなく、私を見つけるためのものだった?
だから他の子たちは測定しても変わりなく生活していた?
じゃあ、私は?
「これは大変なことです。
国に報告もしますが、まずはユルガ様に報告しましょう。
喜ばれると思いますよ!」
「お父様に?」
興奮している神父様を連れて家に帰ると、
連絡が来ていたのかお父様とお母様が待っていた。
「ミーア!すごいじゃないか!
魔術師の才能があるだなんて!」
「本当ね!実は私のひいおばあさまの従姉が魔術師だって聞いたことがあるの。
その才能が出たのかもしれないわ!」
今まで見たことも無いくらいお父様とお母様が喜んでいる。
その勢いに負けないくらい喜んでいる神父様がお父様に説明をする。
「国に報告したら、おそらく学園に入学するように言われると思います。」
「学園ですって?」
「学園の魔術師科ですよ。」
「…お父様、学園って貴族の方しか通えないのでは?」
「それは貴族科で、魔術師科には貴族はいません。
昔はいたそうですけどね、貴族で魔術師だった方も。
その家系から魔術師がいなくなったので、
今の魔術師科に貴族はいないようですよ。」
「じゃあ、大丈夫だろう。
ミーア、うちは貴族ではないけど、大商家だ。
王都にいくつも王族御用達の店を構えている。
ミーアは貴族以外では負けないよ。」
「そうなの?
貴族じゃなければうちが一番なの?」
「ああ。それにもしかしたら、
数年後には一代男爵をもらえているかもしれん。
魔術師科で一番の身分になれるだろう。
ミーアをいじめるような身分の者はいないよ。大丈夫だ。」
「うん!わかった!
ミーア、魔術師科に行って頑張るね!」
「我が教会から魔術師が…なんという名誉。
ミーア様、がんばってくださいね。」