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30.変わる未来

「あ、見つけた。レイニード、エミリア!」


笑って手を振ってくる相手を見て、すぐに手を振り返した。


「ライニード!」


レイニードと同じくらいの身長だけど、

細身のライニードが貴族科の制服で立っていた。

銀色の髪は耳の高さでそろえ、灰色がかった緑色の目は優しそうに笑ってる。

容姿はどちらも母親似で兄弟なのがわかるのに、見た目の印象はかなり違う。

騎士を目指していない今のレイニードだが、

今でも一人で早朝に訓練しているらしく筋肉はそれなりについている。

並んでみると身体の大きさが全く違う。


「久しぶりだね、エミリア、レイニード。

 二人とも全然うちに来ないから、母上が寂しがっていたよ。」


「え。カリーナおばさまが?そう言えばしばらくお茶していなかったわ。

 ごめんなさい。入学前にすることが多くて忙しかったの。」


「父上から聞いていたから、忙しかったのは知ってる。

 でも、入学したし、そろそろいいんじゃないかと思って伝えに来たんだ。

 レイニード、たまには帰っておいで?」


「…あぁ、そうだな。」


「お前が心配しているのは騎士団がいるんじゃないかってことだろう?

 大丈夫だよ。半年前くらいから家に来なくなったんだ。

 父上に聞いたら、何か貴族の家で借りてた修練場で問題起こしたとかで、

 もう貴族の家の修練場を借りて訓練するのはやめたんだって。

 代わりに若手は山に遠征に行って訓練しているんだってさ。」


貴族の家の修練場で問題…きっと、うちのことよね。

そっか、ライニードは知らされていないんだ。


「わかった。それなら今度エミリアを連れて帰るよ。

 母上に伝えておいて。休みに戻るって。」


「ああ、伝えるよ。」


ニコニコ笑うライニードを見て、ライニードの運命も変わったんだとわかる。

やり直し前の時、騎士団の訓練についていけないライニードは、

たまに見かけると暗い顔をしていた。

今は文官になるために勉強しているのが楽しいのだろう。

昔のように笑い合っているライニードとレイニードを見て、

なつかしさに思わず私も笑顔になる。


「ライニード…そろそろ紹介してくれない?」


声のする方を見ると、金色の髪を後ろで結んだキラキラした男の人が立っている。

金髪で深い緑色の瞳…見ただけでこの人が誰なのかわかってしまった。

第一王子…ジョージア・サウンザード様。そうか…ライニードと同級生なんだ。


「すみません。忘れてました。」


「忘れるなよ…。で、紹介してくれる?」


「ええ。俺の弟のレイニードと婚約者のエミリアです。

 こちらはわかるだろうけど、第一王子のジョージア様だ。

 俺と同じ貴族科の一年だ。二人に会ってみたいって言うから一緒に来たんだ。

 ちょっと忘れてて…話し込んじゃったけど。」


「よろしくね、レイニード、エミリア。」


「レイニード・ジョランドです。」


「エミリア・エンドソンです。」


あわてて礼をしようとすると途中で止められる。


「ああ、礼はいいよ。同じ学生だし。」


「はい。」


にっこり笑う王子に嫌な印象は無いけれど、レイニードは冷たい表情を崩さない。

そういえばビクトリア王女に脅されたとき、

陛下と第一王子に従うように説得され、口止めされたって言ってた。

その時に何かあったのかもしれない。


「そう警戒しないでよ、レイニード。

 騎士志望でとても優秀だって聞いてたから、

 本当は俺の護衛騎士にしたかったんだよね。

 でも魔術師になるんでしょう?

 卒業したら魔術師としてでいいから側近にならない?

 ライニードも卒業したら俺の側近になる予定なんだ。」


側近?第一王子の側近に魔術師として?ライニードと二人とも?

どうするのかと思ってレイニードを見たら、険しい表情をしていた。


「申し訳ありません。お断りします。」


「え?ダメ?理由を聞いてもいい?」


「俺とエミリアは魔術師協会に所属しています。」


「…あぁ、そうなんだ。そうか。

 それじゃ仕方ないか…。

 まぁ、考えが変わることがあったら言って?」


最後まで笑顔だった第一王子とライニードが貴族科の校舎に戻っていくのを、

しばらく黙って見送っていた。


変わってしまった未来。何が起きているんだろう。




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