21.入学試験の免除
お母様の一件が無事に終わったすぐ後、
レイニードが一通の手紙を出しながら話してくれた。
入学試験の魔力検査のことを神父様に相談してくれていたらしい。
「神父様に魔力検査のことを手紙で相談したら、その返事がきたよ。
入学試験の免除をできるかもしれない、と書いてあった。」
「入学試験の免除?できるの?そんなこと。」
「うん、魔術師協会の推薦状があれば無試験になるらしい。
卒業後は魔術師協会の所属になるみたいだけど、
神父様はそのほうがいいだろうって。
魔術師協会の所属になれば、王宮からの要請に応えなくていいんだって。
そのために一度魔術師協会の方に行ってくれって。
神父様の知り合いがいるらしくて、連絡してあるそうだ。」
「そうなんだ…魔術師協会の推薦状って簡単にはもらえないわよね?」
「多分ね。入学試験と同じようなことをして試すんじゃないかな。
でも、魔術師協会での魔力検査は外部に知られないそうだから、
その辺は安心していいみたい。
もし推薦状がもらえなかったら、その時にまた考えよう?」
「うん、わかった。」
神父様が知り合いの魔術師協会の人に取り付けてくれた約束は、
三日後の午後となっていた。
お父様に相談すると、二人だけで行かせるわけにはいけないけれど、
他の者がついていって話を聞くのはまずいだろうと言われた。
結果、カミラと一緒に行くけれど、
カミラは馬車の中で待っていてもらうことになった。
「…それでは馬車で待っていますが、お二人で本当に大丈夫ですか?」
「カミラ、何かあったら俺がエミリアを守るから大丈夫だよ。
魔術師協会の中に魔力が無いものが入ると体調を崩してしまうらしい。
だからカミラは馬車の中で待っていてくれる?
そんなに時間はかからないと思うから。」
「ごめんね、カミラ。
待たせてしまうことになるけど…。」
「いいえ、待つのは大丈夫です。
それでは、お気をつけて。いってらっしゃいませ。」
「うん。」「行ってきます。」
魔術師協会は王都の真ん中にあった。
知らなければ貴族の屋敷にしか見えない。
門の前で名前を告げると、門兵が扉を開けて中に入れてくれる。
まっすぐな石畳をそのまま進むように言われ、ふたりで歩きはじめる。
貴族の屋敷とは違って、案内の人はつかないようだ。
「ずいぶん広い屋敷だね。」
「その割には人が少ないな。
さっきの門兵以外はどこにも見えない。
使用人達はどこにいるんだろう?」
「使用人はいないよ。」
いつからいたのか、目の前に人がいた。
真っ白な髪で真っ赤な目をした長身の男の人がにっこり笑っていた。
「君たちがヘリオスが話してた子たちだね。
俺はリシャエルだよ。
魔術師は家名を名乗らないルールだから、聞かないでね。」
「はじめまして、レイニード・ジョランドです。」
「エミリア・エンドソンです。」
「あぁ、君、エンドソン家なんだ!なるほどね。」
「うちを知っているんですか?」
「ああ。もちろんだよ。
何と言ってもエンドソン家の図書室は魔術師にとってのあこがれだからね。
この国で二番目の蔵書数なんだよ。
しかも、あの有名なエミーレ様が手掛けた動く図書室。
…一度でいいから、中に入らせてほしいよ。」
あの図書室やっぱりすごいものだったんだ。
お父様に話したら図書室の中を知らなかったらしくて興奮していた。
でも、エミーレ様?って誰。
「あの、エミーレ様って誰ですか?」
「え!?知らないんだ!
エミーレ様は200年ほど前にエンドソン家に嫁いだ魔術師だよ。
エンドソン家が魔術師の名家になったのは、エミーレ様の子孫だからだろう。
…その子孫が知らないとは思わなかったな。」
「…うちの父は魔術師ではありませんので…。」
「あーそういえばそうだった。
それじゃあ知らないのも仕方ないか。
で、入学試験の免除をしてほしいんだっけ。」
「「はい。」」
「それじゃあ、まずは話をしようか。
この部屋に入って。」