表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/158

16.鑑定

「鑑定で何も出なかったのですか?」


「ああ。できるかぎり調べた結果だ。

 人に害があるような物は出なかった。」


先日ヘルメス夫人が土産として持ち込んだ茶葉と菓子に、

何か仕込まれていると予想していたのに、鑑定では何も出なかったという。

今回はお母様に手紙を書かせるのが目的だったから、まだ毒はいれていない?


「それにしても…どうして義母上とお茶を?

 ヘルメス夫人とは会わせないようにしていたのではないのですか?」


そうだった。

お母様が殺されることがないように、

ヘルメス夫人とは会わせないようにしていたのでは?

なのにどうしてヘルメス夫人とエリザベスが来ていたのだろう。


「…他の夫人とのお茶の約束だったそうだ。子爵家のミラー夫人と。

 夫人が都合が悪くなったからと、代わりに来たと言ったらしい。」


「え?代わりに、ですか?

 その子爵家の夫人とは仲がいいのですか?」


「何度かお茶をするくらいには仲が良かったそうだが…。

 今回のことでもうお茶に呼ぶことは無いだろうね。

 格上のわが家に呼んでもいない客を送り付けたのだから。」


無理に叔母様が代わって来たのだということは予想できる。

妹だから大丈夫とでも言ったのだろう。

ミラー夫人には少し同情もするが、こんな無礼を許しては後々なめられかねない。

あの家は子爵家に見下されるような家だと噂されることになる。


「叔母様はまた来ると言ってました…。

 大丈夫でしょうか。あきらめなさそうな気がします。」


帰っていく時に言った言葉、にらみつけるような目、どことなくすさんだ雰囲気。

義母だった人ではあるが、あんな顔は見たことが無かった。

きっと再婚後はそれなりに余裕があって、侯爵夫人としての顔をしていたのだろう。

今のヘルメス夫人は元伯爵夫人。貴族としての身分は無い。

血筋が侯爵家の出なので、さすがに平民扱いされることはないが、

貴族としての収入があるわけではない。

生家の侯爵家に居候しているのはそれなりに辛いことなのだろう。


だからこそ、お母様に代わって侯爵夫人になることをあきらめていない。

またきっと何か手を考えて訪ねてくるはずだ。

あまり侯爵家に入り込む機会がないことを考えると、

次こそはお母様の命を狙って来るかもしれなかった。


「ユリアナの護衛を増やしておく。それと屋敷内に騎士も。

 デレニオンから、騎士の練習場所が足りないと聞いていた。

 うちの修練場を貸し出すことにする。

 何かあればこちらに手を貸してもらうことを条件にしてな。」


「騎士たちですか…。」


「ああ。修練場は中庭の向こうで、出入り口も別だ。

 本宅には入ってこないとは思うが…

 もし会えばレイニードは何か言われるかもしれん。

 無理ならやめておくが、どうする?」


騎士になると言ってたレイニードが騎士団に入らなかったことを、

騎士たちは残念がっていたと聞いた。

公爵家にはたくさんの騎士が出入りしている。

だからレイニードは小さいころから騎士たちに可愛がられ、

小さな木剣を使って教えてもらっていたそうだ。

剣の才能も期待され、騎士団に来るのを心待ちにしていたという。

そんな騎士たちがうちに来てレイニードに会ったら…何を言われるだろう。


「いいえ。大丈夫です。

 ここで会わなくても、いずれどこかで言われるでしょう。

 俺はもう侯爵家の婿です。

 勝手に騎士団に連れて行かれるようなことも無いでしょう。

 俺のことよりも義母上が心配です。そうしてください。」


「よし、わかった。

 何かあればすぐに言うんだぞ。

 レイニードはもううちの子だ。騎士団になんて連れて行かせないから。」


少しだけ目を細めて笑うお父様にレイニードはぐりぐり頭をなでられている。

レイニードも困った顔しながらも嫌そうじゃないところをみると、

本当はうれしいのかもしれない。


ずっと見てたらお父様に気が付かれて、私も一緒にぐりぐりなでられた。

…うらやましくて見てたんじゃないんだけどな~と思ったけど、

こんな風に子ども扱いされるのがなんだかうれしくて。

レイニードを見ると同じ顔していて、目があったら二人で笑った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ