150.結婚の日取り
無事に卒業が決まったことで、
私たちの結婚式の日取りを決めることになるのだが…。
結婚式は侯爵家の中庭で行うことになる。
日取りや招待客、ドレスのデザインなど、
決めなければいけないことは山ほどあった。
そのはずなのだけど、朝食の後で応接室に呼ばれたと思ったら、
お父様があっさりと日取りなどを決めてしまっていた。
「まぁ、エミリアもレイニードも王宮に勤めるわけじゃないし、
今すぐ領主になるわけでもないから、こじんまりとしたものになるだろう。
日取りや招待客は、それでいいかな?」
渡された紙に書かれている招待客を確認してレイニードが答える。
横から見ていた私も、大丈夫だと確認する。
「ええ、義父上。俺はこれで大丈夫です。エミリアは?」
「ええ、大丈夫よ。
…そっか。私たち王宮とは関わらないから、夫人の会も関係ないのね…。
呼ばなければいけないものだとばかり思っていて。
でも、こじんまりしたほうが安心できていいわ。」
お父様もお義父様も王宮に勤めている。
そのため、その妻であるお母様とカリーナおばさまは夫人の会に入っていた。
…やり直し前はレイニードが王宮騎士団の騎士だったから、
結婚した後は私も夫人の会に入ることになっていた。
以前は令嬢たちの間で孤立していた私を心配して、
カリーナおばさまはお茶をする時に夫人の会の話をよくしてくれていた。
結婚後に夫人の会で困ることがないようにと。
だけど、今回は魔術師になるので、夫人の会は入ることがない。
カリーナおばさまからも夫人の会の話はされていなかった。
「そうだな。夫人の会に入るのであれば、
それなりに夫人たちも招待しなければいけなかっただろうな。
普通に貴族として生活するのであれば多くの人を呼ぶことも必要になる。
だが、お前たちは魔術師なのだから、社交界での立場を気にしなければいけない。
あまり他の貴族と仲がいいと面倒なことになる。
付き合いは少ないほうがいいだろう。」
「そうですね。気を付けます。」
どの家も魔術師との付き合いは欲しがるものだ。
私たちがうかつにつきあってしまえば、利用される可能性が高い。
社交界にあまり出なくてもいいというのはうれしいことではあるけど。
学生ではなくなり、魔術師になるからには気を引き締めなければいけない。
私たちの結婚式は招待客が少ないこともあり、準備もそれほど必要にならない。
それでも二か月後になったのは、ドレスの仕立てに時間がかかるからだった。
お父様は日程と招待客だけを確認すると部屋から出て行った。
お母様はドレスの仕立て屋と相談しているらしい。
いくつかの案を決めてから私に選ばせてくれるという。
「意外とあっさりと決まったわね。」
「…いや、義父上、半年も前から悩んでたよ。
俺たちが卒業できるかわからなかったから、話をしなかっただけ。」
「え?そうなの?気が付かなかったわ…。」
考えてみればそうだった。卒業したら結婚するのはずっと前から決まっていた。
ただ、私たちがいつ卒業できるのかはわからなかった。
もしかしたら…かなり心配されていたのかもしれない。
「それでさ…結婚式が終わったらどうするかなんだけど。」
「ん?結婚して落ち着いたら、魔術師協会で働くのよね?」
確かその予定だったと思うけど…
レイニードは少しためらった後、決意したように言った。
「…しばらく、ジンガ国に行ってみないか?」
「ええ???」




