141.学園長室
「まず、結果から話そうか。
四人とも合格だ。
文句のつけようがないくらい素晴らしい魔術だった。
これほど質のいい魔術書がそろったのは久しぶりに見たよ。」
合格という言葉に、誰かがほっと息を吐くのが聞こえた。
これで問題なく卒業できる。その安心感でいっぱいになる。
「面白かったのは、全員の魔術書が同じ場所に飛んで行った。
まずはこの学園の図書室。魔術師協会の図書室。
まぁ、ここまでは当然だけど、そしてエミリア。
君の家の、エンドソン家の図書室。
ここもまぁエミリアがいるからね。納得できる。」
この三か所の図書室は私たちが予想した通りだった。
では、残りの二か所は?
「イストーニア国の魔術師協会の図書室。
これは去年の卒業生ジングラッドのおかげかな。」
あぁ、ジングラッド先輩のいる場所に飛んで行ったのならわかる。
イストーニアにはアヤヒメ先輩もいるだろうし、
私たちが作り出した魔術書を読んでもらえたらうれしい。
…残りの一か所は。
どこだろうと思って考えていると、学園長はニヤッと笑った。
初めて学園長の顔に感情が見えて、そのことに驚いてしまう。
「ふふ。よくやったよ。四人とも。
もう一か所はジンガ国の図書の森だ。」
「ええ!?」「うそっ!」
ファルカとルリナが驚いて声を上げたが、私とレイニードはきょとんとしてしまう。
ジンガ国の図書の森…?図書室じゃなくて、森?
「あぁ、そうか。
エミリアとレイニードはあまり魔術師について詳しくないんだったな。
ジンガ国の図書の森は、六か国すべての魔術師のあこがれの図書室だ。
最古の魔術書からおいてあると言われているが、
その中には選ばれたものしか入ることはできない。
その選ばれる基準が、自分で作った魔術書を収めることなんだ。
ただし、今までにない魔術書で、上級書に限られているし、
図書の森が呼ばなければ収めることはできない。
このサウンザード国でも数人のものしか収めていない。」
図書の森に呼ばれなければ、魔術書をおさめることができない。
サウンザード国でも数人しか収めていない。
「…それって、ものすごく名誉なことです、よね?」
「そのとおりだ。よくやった!」
「あ、ありがとうございます。」
図書の森のことは知らなかったけれど、それほどすごい図書室ならば行ってみたい。
収めてあるのが上級魔術書のみということは、中に入っても読めるとは限らないけれど…。
最古の魔術書か…どんな魔術なんだろう。
「四人にはそのうち図書の森から入館証が送られてくるだろう。
ジンガ国は少し遠いが、いつか行ってみるといい。
図書の森は…何年通っても読み切れる場所ではないが、
魔術師として入館証があるのなら一度は行ってみるべきだと思う。」
その口ぶりだと、学園長も図書の森に魔術書を収めているのだろう。
何年通っても読み切れないほどの魔術書…聞いただけでわくわくする。
ルリナもファルカも目を輝かせて話を聞いている。
レイニードはと思って顔を向けると、何か考え込んでいるように見える。
私がレイニードを見ているのにも気が付いていないようだ。




