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14.エリザベス

図書室を出て廊下に出てみると、

こちらに向かって来ようとしているエリザベスと、

それを必死になって引き留めようとしているカミラがいた。


茶髪茶目でまだ11歳の化粧をしていない幼い顔したエリザベスを見て、

少しの懐かしさとともにできれば会いたくなかったと思う。

5年後には見事に育っていた大きな胸も、

今はまだ少女らしくほっそりとした体形だった。

確か再婚して引き取った時がこのくらいだった気がする。



「エリザベス?そこで何をしているの?」


「あぁ、やっぱりいた!会いに来てあげたのに、侍女が止めるから。

 もう!早く出てきなさいよ!…って、誰?」



突然やってきて、勝手に屋敷にあがりこんだと思われるのに、

いつも通り横柄な態度のエリザベスにため息が出そうになる。

どうして叔母様とエリザベスは身分が上の侯爵家相手にこんなことをするのだろう。

伯爵夫人と伯爵家令嬢だったころもそうだったけれど、

今はその身分すらないというのに。


再会の衝撃で言い返すこともできずにいると、

私の後ろから出てきたレイニードを見て、エリザベスは不機嫌そうな顔になる。

エリザベスがレイニード相手にこんな顔をするなんて?

そうか、エリザベスにとってはこれがレイニードと初めて会うことになるんだ。

公爵家のレイニードとして初めて会った前回とは違う…。



「誰って、君こそ誰だよ。失礼な女だな。」


これがやり直しでは初対面とはいえ、

レイニードにとっては何度も会って話もしていたエリザベスだ。

仲が良いとは思ってなかったけれど、それなりに交流していたと思う。

どう対応するのかと思ったが、

その冷たい声は聞いただけで拒絶しているのがわかるほどだった。


「私?エリザベス・リンデよ。あなたは?」


「俺はレイニード・ジョランドだ。」


レイニードの冷たい態度が気に入らなかったのか、

睨みつけるかのような顔で挨拶したのに、レイニードの名前を聞いて、

エリザベスの顔つきが変わった。

いかにも清楚で真面目な女の子ですといった雰囲気に変わるのを見て、

嫌な記憶がよみがえった。


あぁそうだった。エリザベスってこういう子だった。

それがとても嫌でレイニードと話してほしくなかった。

たとえ私のことが嫌で婚約解消になったとしても、

エリザベスのこんな演技なんかに騙されてほしくなかった。


「あなたがレイニード様なのね。騎士になるって聞いたわ。

 ねぇ、お茶でもして話してくださらない?騎士団に興味があるの!」


にっこり笑って近づいてくると、レイニードの腕を取ろうとする。

それをスッとかわして、レイニードは私の手を取った。

エリザベスから逃げたというよりも、私を守るような体勢にみえる。


「さわらないでくれないか?俺はエミリアの婿なんだ。

 初対面で男にさわるようなふしだらな女とは、

 たとえエミリアの親戚だとしても関わり合いたくないね。」


顔色一つ変えずにそう言ったレイニードに、エリザベスの顔は赤く染まった。

恥ずかしさと怒りでいっぱいなのだろう。

一瞬だけ悔しそうな顔をしたが、次の瞬間泣きそうな顔で、


「わ、わたしそんなつもりじゃ…レイニード様にお会いしたのがうれしくて…。

 ごめんなさい!」


そう言うと、小走りで去って行った。

その後ろ姿を見送ってしまった後で気が付いた。


「…エリザベスがいるってことは、叔母様が来ている!?」


「っ!それはまずいな。行こう!」



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