137.公爵からの報告
夜会から一週間が過ぎ、王宮からの知らせに誰もが驚いていた。
どういうことなのか知りたくてジョランド公爵に連絡すると、
すぐさま侯爵家まで話をしに来てくれた。
「ビクトリア様が亡くなったって本当ですか?」
「あぁ、本当だ。
高熱が続いてそのまま亡くなったという話だが…。
調べてみたら夜会の最中にいなくなって、そのまま誰も見ていない。」
「あの夜会の間に何かあったということですか?
ライニードの話では女官が呼びに来たと言っていましたが。」
「俺もライニードに話を聞いてみたんだが、
その女官を知らないというんだ。
どんな顔をしていたか聞いてみても思い出せないというし…。」
「ライニードが思い出せないっておかしいですね…。」
「何か顔がわからなくなるものを使っていた?
たとえば認識阻害の魔術具を持っていたとか?」
女官として働いている以上、顔を隠しているわけはない。
そうなると何か魔術が使われたと考えるしかなかった。
「魔術具を持って王宮内で動いていたとなると、
魔術師協会のほうが知っているかもしれないな。
レイニードは何か聞いてないか?」
「今はまだ何も聞いていませんが…。
ビクトリア様が亡くなったとなれば調べていると思います。
わかればリグレッド魔術師長から連絡が来ると思います。」
「そうか…何かわかったら俺にも教えてもらえるか?
なんていうか、王宮内で知らないことが多すぎて落ち着かない。
これでも騎士団長なんだが…。」
「あぁ、そうだ。
あの令息たちの処罰はどうなりましたか?」
「あいつらは全員勘当されたぞ。七名ともな。」
「まぁ、そうなりますよね…事件が表ざたになってしまいましたし。」
騎士団が動いたことでジュリアとエリザベスが襲われたことは公になってしまった。
未遂だということも公にはなっているが、襲われかけたことに間違いない。
令息たちは伯爵家以下の二男三男だったこともあり、
事件を知った家からはすぐに勘当されてしまったようだ。
「勘当されたとして、平民になってどう生活していくんでしょうか?」
「そこは騎士団としても考えた。
放り出したところで破落戸になって王都で問題起こされても困るからな。
全員、学園の騎士科に入学し直させることになったよ。
寮に入れて、騎士科で一から鍛えなおす。
それでまともになって卒業できるようなら騎士団で拾ってやるよ。
未遂だったこともあるしな…
根性を入れ替えて反省するのであれば認めてやろうと思う。」
「…それでもダメだった場合は?」
「地方の騎士団に入れて、また鍛えなおしてもらうか。
辺境伯のところへ入れて、魔獣のえさにしてもらうのもありだな。」
「あぁ、なるほど…。
それならいいかもしれませんね。
もう二度とあんなことをしようなんて思わなくなるはずです。」
未遂だったからいいというものでもないし、
あんなことをすることに抵抗がなかった時点で人としておかしい。
騎士科の訓練は厳しいことで有名だし、
騎士団に入るためには上位の成績で卒業しなければいけない。
それをやり遂げるようなら、心を入れ替えたのだと認めてもいいかもしれない。
まぁ、それでも汚点はついたままだし、
一生責められることに変わりはないだろうけど。
「お前たちもあとは卒業するだけだろう?」
「まだ魔術書を仕上げなければいけませんが、学園生活も残り二か月ですね。」
「そうか…頑張れよ。」
「「はい!」」




