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【書籍化】神の審判でやり直しさせられています  作者: gacchi(がっち)


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122/158

122.責任の行方

ああ。まだレイニードは後悔し続けているんだ。

あの時、神の審判から落ちた私を助けられなかったことを。

ずっと一人にしてしまっていたことも。


もういいのに。

私はやり直ししてよかったと思っている。

レイニードと一緒に過ごせて、ルリナとファルカという友人もできて、

信頼できる先輩たち、失わなくてすんだ家族やカミラ。

そして、魔術師として自分の力で生きていける自信も。


「…もう苦しまなくていいの。

 わかったわ。タイミングはレイニードに任せる。

 だけど、責任は一緒に背負わせて。」


「でも、それじゃ…。」


「二人で背負いましょう?

 もう大丈夫よ、悩むのはやめる。

 かわいそうだから止めてとは言わないわ。

 未遂で助けるのであれば、多少のことは見なかったことにする。

 そのくらいは強くなれたと思うの。

 この国の未来のために、綺麗なことばかり言うのはやめるわ。」


誰かを傷つけたくない。誰も傷つかないでいてほしい。

その気持ちは変わっていないけれど、それよりもレイニードに傷ついてほしくない。

私の自己満足のためにレイニードが傷つくというのなら、

それはあまりにも愚かなことだと気が付いた。

私は誰よりもレイニードを守りたい。

そのためなら…他を切り捨てることもできると思えた。


「そうか…わかった。

 二人で背負おう。」


コホンと咳払いがして気が付いた。

レイニードと手を握り見つめあっているのを、

向かい側のソファから気まずそうにリグレッド魔術師長が見ていた。


「「あ。」」


「うん、思い出してくれたかな。

 俺もいるんだ。何より、魔術師協会がいる。

 責任は君たちに押し付けたりはしない。」


「「…はい。」」


「ただ、やはり現場にいる人の判断が正しいと思う。

 俺たちは遠くから監視することはできるけど、

 直接王宮内に行って動くことはできない。

 魔術師協会の者が令息たちを拘束することは難しいからね。

 レイニード、止めるタイミングは君に任せた。

 それ後、二人で止めに入ってくれ。

 止めた後は証拠隠滅できないように速やかに騎士たちを向かわせる。

 そのくらいはこちらで何とかしよう。」


「わかりました。」


これで話は終わりかと安心していたら、それで終わらなかった。


「あぁ、あと、その二人にも監視を付けているのだが…。

 エリザベス・リンデが薬を購入していたそうだ。

 眠くなる薬と媚薬、しびれ薬まで。

 いったい何を企んでいるのやら。

 ジュリアのほうはドレス選びや化粧品の購入。

 こっちは問題なさそうだけどね。」


「…え?薬ですか?」


「そんなもの…何する気って…

 ライニードに使うに決まってるでしょう!」


「そうだろうな。」


「そうだろうなって、そんなのんきな!」


さすがに兄に薬を盛られるというのは許せないのだろう。

めずらしくレイニードが焦っている。

それでもリグレッド魔術師長はのんびりとお茶を飲みながら答えた。


「何をそんなに心配しているんだ?

 エミリアが魔術具を用意してやれば済む話だろう。」


「「あ。」」


「あんな蓄積型の毒まで無効化するような高品質の魔術具があれば、

 普通の令嬢が手に入れられるような薬は何の問題もない。

 まだ夜会まで三週間もある。作れるだろう?」


「…ええ、はい。三日もあれば材料は用意できますし、

 一度作ったものですから二時間もあればできます。」


最初に作った時は効果をどのくらいにすればいいのか、

材料は何を使ったらいいのか、どの装飾品にするか、

一から考えて作ったものだから時間がかかっていた。

同じものを作るのならその時間は必要ない。あっという間に作れるだろう。


「もちろんレイニードが怒る気持ちもわかる。

 そのエリザベス嬢が薬を使うことがあれば、それはそれで処罰を受けさせよう。

 夜会の後にはなるが、購入した場所や店員の証言も確認してある。

 夜会内で薬を使ったことが公になれば、大変なことだ。

 しかも相手は王太子の側近だ。軽い罪では終わらない。

 そういうことで許してくれないか?レイニード。」


「はい。慌ててしまってすみません。

 そういうことでしたら何も問題ありません。

 エミリアの魔術具があればライニードは無事でしょう。

 あの女にもちゃんと罪を問えるのであれば…それでいいと思います。」


王宮内、しかも夜会で薬を盛ったことがバレたら…。

エリザベスよりも爵位が上のライニードだというのも問題だ。

伯爵家が公爵家にというのは、この貴族社会で許されることではない。

これが逆の立場なら…話は違うのだけど。


伯爵家の爵位のはく奪まではいかなくても…エリザベスの修道院行きは免れない。

もっとも、そんなことをした令嬢だとわかれば結婚相手はいなくなる。

最初から王太子に嫌われた家だと知って娶りたいものはいない。

ましてやエリザベスは家を継ぐ立場だ。

婿入りしようなんて令息は現れないだろう…。

結果、どちらにしても修道院へ行くことは決定したようなものだ。


…本当にそんなことするつもりかしら。

前の時はレイニードにべたべたしていたし、私への嫌がらせはひどかった。

それでも法にふれるようなことはしていなかったと思うのだけど。

やり直しの何かがエリザベスを変えたのだろうか。


「うんうん。あ、そうだ、エミリア。

 この件が終わったら、私にも一つ作ってくれないか?

 リシャエルが言うにはあれは最上のものだと。

 この協会で魔術具と言えばリシャエルなんだ。

 そのリシャエルがそれほどまで言うのだから…ぜひ研究したいね。」


「…っ、はい!

 夜会が終わったら作って持ってきますね。」


「あぁ、頼んだよ。

 では、また何か新しい情報が入れば連絡する。」


「「わかりました。」」


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