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12.話し合い

「それで、レイニードは魔術師になるってことに決めていいんだな?」


「はい、父上。」


「そうか。では、このまま侯爵家で頑張りなさい。」


「ありがとうございます。」


説得が難しいかと思っていた公爵だが、あっさりと許可が下りていた。

先日お父様が話しに行ったのは知っていたが、

騎士の名門である公爵家なのに、これほど簡単に許されるとは思ってなかった。


「あぁ、それとな。

 ライニードも騎士団には入れないことにした。」


「ええっ?」


「ライニードだってやりたいことがあるんだ。文官を目指すと言っている。

 何も…うちに生まれたら何が何でも騎士にならなきゃいけないわけじゃないぞ?

 リンクスだって魔術師の家系だが、文官として身を立てている。」


「それはそうですが…いいのですか?」


「俺はいいぞ。公爵家を継がないって言われたら困るけどな。

 それだって、領主の才能がある嫁を貰うという手もあるし。

 領民を守ることを忘れなければ、職業なんて好きに選べばいい。

 それにな…お前が騎士にならなかったら、ライニードが狙われるかもしれん。

 銀髪の騎士なんてめずらしいからな。」


「…っ!それは…確かにそうです。

 父上は俺たちのことをすべて聞いたのですね?」


「ああ。俺は、いや俺たちはすべてを知った上でお前たちを守ると決めた。

 どう対応するか決めるためにも調べてみたら、

 ビクトリア王女は最近「騎士と姫さま」という本を購入したそうだ。

 これがきっかけになるんだろう?この後に何が起きるか想像がつかない。

 お前だけじゃなくライニードも王宮には近づかない方が良いだろう。」



ビクトリア王女が「騎士と姫さま」を購入した。

この時期から読み始めて、数か月後にはレイニードを護衛騎士にしている。

確かにレイニードだけではなく、容姿が似ているライニードも危ない。

ライニードではなくレイニードが選ばれたのは、

レイニードのほうが騎士として優れていたからだろうけど、

レイニードがいなかったらライニードが選ばれる可能性が出てくる。


「父上…いろいろとありがとうございます。」


「ああ。それで、今後のことを相談しようと思って来たんだ。

 騎士にならなければそれだけで危険から遠ざかれるのか?

 他にも避けなければいけないことはあるんじゃないか?

 何かあるのなら、先に手を打っておきたい。」


「あ。」


そうだ。この半年後に大きな出来事があった。とてもとても悲しい出来事が。

あのこともあってお父様にも近づけなくなってしまったきっかけ。

今のお父様なら相談できる。

お父様と公爵の力を借りたら、未然に防げるかもしれない。



「あの…公爵様というよりも、お父様に聞いてほしいのですが、

 この半年後にお母様が亡くなります。」


「っ!なんだと!ユリアナが!?」


「それは、どういう理由でだ?」


「…病死ということになっていましたが、おかしいと思います。

 その前の日まで元気でお茶会をしていました。

 お茶会の相手は叔母様です。」


「ヘルメス夫人が?どういうことだ?

 ユリアナとは仲良くないだろう?」


お父様がそう言うのもわかる。お母様と妹であるヘルメス夫人は仲が悪かった。

もともとお父様とお母様の結婚は家同士の結びつきからだった。

お父様の二つ年上のお母様と一つ年下の叔母様。

侯爵であるお祖父様は叔母様との結婚を考えていたようだが、

二人に会わされたお父様が選んだのはお母様だった。

叔母様はお父様と結婚するつもりだったらしく、最後まであきらめなかったそうだ。


叔母様はその後リンデ伯爵と結婚したのだが、

お父様とのことを根に持っていて、今でもお母様を恨んでいるという話だった。

叔母様と従妹のエリザベスとは、侯爵家での葬儀などでしか会わない関係だった。

会ったとしても嫌味を言われるので、あまり近寄らないようにしていた。

だが、そんな関係が変わったのは…。



「確か…リンデ伯爵が亡くなって、ヘルメス夫人は娘を連れて家を出ていました。

 それで、お母様を頼って何度か訪ねて来ていました。

 お母様の生家の侯爵家に身を寄せていたはずです…。」


「そういえばリンデ伯爵が病気だという話は聞いている。

 亡くなった後で実家に戻って、姉に頼るというのはわからないでもないが…。」


「お母様がヘルメス夫人とお茶会をした次の日の朝、お母様は亡くなっていました。

 毒殺も疑われましたが何も出て来ず…。

 でも、おかしいんです。

 お母様が亡くなった後は叔母様にお父様と私を任せると書いた手紙が出てきて。

 そのせいでお父様は叔母様と再婚することになりました。」


「再婚だと?俺が?あの女狐と?」



よほど嫌なのかお父様がしかめっ面になっている。その気持ちはわかる。

私だって、その時はどうしてお父様が再婚することになるのか理解できなかった。

お父様が叔母様のことを嫌っているのは知っていたから。



「俺の予想ですけど…多分、証拠をつかもうと思ってたんじゃないかと。

 毒殺されたのは間違いないと思うんですけど、証拠がなかった。

 だから近くにいさせて、油断させて証拠を探していたんじゃないかと思います。」


「あぁ、そういうことなら理解できる。

 俺がユリアナ以外と結婚するなんてありえないからな。」


「でも、そのおかげで侯爵家にヘルメス夫人だけじゃなく、

 その娘のエリザベスも養女として引き取られ、

 エミリアは二人に虐げられていました。

 部屋を奪われ、カミラは辞めさせられ、俺とは引き離されていました。」


「…証拠集め以外にも何か理由はありそうだが、

 同じ条件下にするわけにはいかないな。

 まず、ユリアナにはヘルメス夫人を近づけない。

 ユリアナを亡くすわけにはいかないし、

 それならヘルメス夫人もエリザベスも入り込めないだろう?」


「それは確かにそうです。

 …リンデ伯爵の病気のこと、調べたほうが良いかもしれません。

 そっちも毒殺の可能性がありますよ。」


「ああ、わかった。デレニオンも協力してくれないか?」


「もちろんだ。病死に見える毒殺か…調べてみるよ。」


お母様が亡くならないかもしれない。確実ではないけれど希望はある。

毒殺の疑いはあったけれど、本当に病死かもしれないから、

お母様本人に話すわけにはいかない。

ここにいる4人が協力して、半年後に何も起こらないようにしなければ。


どれがきっかけになるかわからないし、行動を変えたことで先が予測しにくい。

何かあった時にすぐに対応できるようにと、

定期的に話し合いをすることを決め、今日の話し合いは終わった。



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