116.新しい日々
五学年になり、三か月が過ぎていた。
アヤヒメ先輩とジングラッド先輩はイストーニア国へと旅立ち、
ジョージア様とライニードも卒業している。
リグレット魔術師長とは月に二度会って相談しているが、
ここ最近はビクトリア様の動きがないことから、こちら側から動くこともできずにいた。
何人か魔術師協会側の人間が王宮内にいるそうで、動きがわかれば教えてくれることになっている。
このままビクトリア様がおとなしく卒業まで過ごし、臣下になるのであれば問題はない。
できるのならそうして欲しいと願うが、どうなるかはわからない。
新しい学年になったことで毎日の課題が変わり、今はそれに取り掛かっている。
魔術師科五学年の課題、新しい魔術を作り最終的には魔術書も作成する。
今までにない魔術を作り上げるというのは難しく、すぐにできるものではない。
そのため毎日レイニードと二人で修練場に来ていた。
ふと嫌な感じを受けて、魔術を止める。
きょろきょろと辺りをうかがうような私に気が付いて、
修練場の反対側にいたレイニードの動きも止まった。
「どうした?」
「うん…たまになんだけど、学園内で嫌な感じがするの。
こうなんていうかな…冷たい水を背中にぶつけられるような?
魔力なんだと思うけど、殺気のようなものっていうのか…。」
「殺気のような魔力?
エミリアが狙われているというのか?」
「すぐに消えるから、そういう感じでもないとは思うんだけど…。
さすがに狙われているようならこんな短時間で消えるとも思えないし。
だけど、本当に嫌な感じがして気になるの。」
新しい学年になるころから始まり、もう何度も感じていた。
最初は気のせいかもしれないと思っていたが、
同じ感じが続くのは…同じ人が出している魔力なのだろうか。
「なんだろうな…学園には王弟殿下の結界が張ってあると思うが…。
その学園内でそんな魔力を動かせるなんて…どういうことなんだろう。」
「…もう消えちゃったわ。
今度気が付いたらすぐに言うわね?
私がわからなくてもレイニードが何か気が付くかもしれないし。」
「ああ、わかった。
少し休憩しようか…あ、もう昼になるんだ。
ちょうどいい。休もう。」
「ええ。」
休憩所に向かうと、ちょうどルリナとファルカも休んでいるのが見えた。
二人で座っているが、こちらには気が付いていない。
ふいにファルカがルリナの頭を撫でた。
いつもファルカにそっけないルリナではあるが、
撫でられていることに嫌がらずにうれしそうに笑っている。
あぁ、やっぱり想いあっているんだ。
将来は結婚するとは聞いているが、ファルカからだけでルリナからは聞いていない。
なんとなく想いあっているんだろうなとは思っていたが、
いつもルリナはファルカに冷たくしているように見える。
こうして仲がいいところを見るのは初めてだった。
「ルリナとファルカも今からお昼ご飯?」
「あ、エミリア。そうよ。
二人も今からお昼にするの?」
「うん、ちょっと早いけど区切りがついたところで休憩しようと思って。」
ルリナとファルカが座っていた向かい側に座ってお弁当を出して並べる。
二人は食べ始めたところのようで、まだほとんど手を付けられていなかった。
「どう?新しい魔術、エミリアたちはうまくいきそう?」
「うーん。思ったよりも難しくて苦戦中なの。」
「どういうものを作ろうと思っているの?」
「ほら、私って攻撃魔術が得意じゃないでしょう?
私でもできる攻撃魔術を作ろうかと思ったんだけど、
それよりも相手を無力化させて捕まえたほうがいいんじゃないかと思って。」
「無力化?それは難しいね。対象は誰?」
「すべての人よ。魔術師も騎士も、普通の人も。
怪我をさせることなく相手を無力化したうえで拘束もしたくて。」
「…それはまた難しいことを考えているね。」
「そうよね…まぁ、無理だったら別なものにするかもしれないけど、
できるところまで頑張ってみるわ。」
言い出しておきながら、自分でも本当にそんな魔術ができるのかと思う。
だけど、この先何があっても大丈夫なように、
戦うことができない私ができる最上の魔術を身につけたかった。




