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1.追い詰められた

あと数歩後ろに下がったら落ちてしまうだろう。

振り返ると、暗闇の奥に、もっと暗い奈落が見えている。

神の審判と呼ばれる、王城の奥にある巨大な穴にせり出している崖。

落ちたら、助からないどころか、遺体が見つかることも無い。



その、神の審判のギリギリのところにエミリアは立っていた。

風が吹いている上に、裾が広がっている夜会用のドレスでは足元が見えない。

こんな不安定な崖の上にいるのには訳があった。




「もうあきらめてこっちにこいよ。皆で可愛がってやるからさ。」


「そうそう。痛くないように薬も用意してあるし、

 そのドレスはダメになっちゃうだろうけど、

 ちゃあんと王女様のおさがりのドレスに着替えさせて帰すから。」


「怖がらなくていいよ。

 そんな場所にいたら落ちちゃうぜ。

 死ぬよか俺たちの相手をしてたほうがマシだろう?

 氷の騎士に相手にされない地味なあんたなんだしさ。

 最初くらいは優しくしてやるぜ?」



じりじりと寄ってくる令息たちに追い詰められるように、

エミリアは少しずつ後ろに下がっていく。


怖い。

神の審判から落ちたいなんて思ってはいない。


王女様が気に入らない令嬢を、

取り巻きの令息たちに命令して乱暴させているという噂は聞いていた。

その際に王女のおさがりのドレスに着替えさせて帰すということも。

自分の娘が乱暴されて帰されても、

王女のドレスを着ているということは王女の指示だということになる。

王家に文句を言いに行くような貴族の家はない。

それがどれほど悔しくてもだ。




自分が王女様に嫌われていて、狙われているのは知っていた。

だからこんなことにならないようにうまく立ち回ってきたはずなのに。


逃げ場がなくなる前に誰かに助けを求めたら良かったのだろうか。


ここに来るはずもない婚約者の顔が浮かんだが、すぐに消えた。

彼が助けに来るはずなんて無い。


ああ、もうどうしたらいいんだろう。






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