表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

着任

了解と言ったものの、俺はいったいこれから何をすればいいのやら。ゼロ小隊は任務の特性上、まだ大々的に動く訳にはいかないんだそうだ。その為、着任式等も無い。今日は小隊の執務室で他のメンバーと顔合わせをする予定になっていた。なんでも、俺が教育隊に行っている間に俺の部下になる者達で準備を進め、既に駐屯地周辺の調査も行っているそうだ。

俺は、本部管理中隊の階段下倉庫の前に到着した。ここは演習等で使われるばっかん、いわゆるクーラーボックスや増加食がしまわれている所だ。こんな所に執務室が?俺の仕事場は階段下倉庫なのか?連隊長は階段下倉庫に行けばわかると言っていたが・・・。

考えていても仕方がない、鍵は持っているし入ってみるか?うーん、なんだか騙されているような気がしてならない。と、考えていると後ろから声をかけられた。


「すみません、ここに何か御用でしょうか?ここの階段下倉庫は連隊長の許可を得た人しか入ってはいけない事になっているのですが」


「うぉっ!」


突然声をかけられビックリして振り向くと小柄な女性隊員が立っていた。髪は肩にかからない程度の長さで肩口で揃えている、眉はキリッと吊り上がり気味で目つきもそれに合わせてキツイ印象だ。口元をへの字に曲げ、明らかに警戒しているようだ。しかし相手は陸士長、こちらの方が階級は上だ。ここは毅然とした態度でいくか、何もやましいことなんてないんだし。


「あぁ、すまない。俺は連隊長の指示を受けてここに来たんだ、ここの鍵もちゃんと受領してきている、ほらこの通り」


ポケットから本管の事務から受領した鍵を見せる、すると女性隊員はハッとしたように態度が変わった。


「もしかして、稲葉3曹ですか?」


そう聞くや否や俺の階級とネームを確認する


「やっぱりそうでしたか、失礼しました。私は陸士長、新堂音羽(しんどうおとは)と言います。稲葉3曹が着任する小隊の隊員です」


そう言いながら敬礼する音羽の表情はなんとなく緩んだ気がするがそれでもキリッとした表情は変わらなかった。警戒していたのもあるかもしれないが元々こうゆう顔つきなのかもな。それはそうと、同じ小隊の人間に出会えたのは幸いだ。折角なので聞きたいことを聞いておこう。


「ちょうど良かった、連隊長に言われてここに来たがここで合っているのか?どう見てもただの倉庫にしか見えないんだが」


「それはですね、カモフラージュですよ。ここの階段下倉庫は昔からいわく付きの場所でよっぽど用事が無い限りは誰もが避けて通る場所ですから」


そうなのだ、自衛隊にはどの駐屯地にもワケありな場所というのが存在する。例に漏れずこの駐屯地にもそういった場所がいくつかある。その中でも特にヤバいと言われているのがこの本部管理中隊の北側に位置する階段下倉庫なのだ。それ故に、昼夜問わずここに近づく人間はほぼいない。

連隊長の話では、大っぴらに行動する事が出来ないという事だったから確かにこの場所はうってつけだが、だからといって倉庫か。中は大した広さもないしせいぜい2畳位しかなかったはずだ。そんなことを考えていると新堂士長はそそくさと鍵を開ける。


「ここでは人目が気になるので詳しくは中でゆっくり話しましょう、ほとんど誰も来ないとはいえ警戒はするべきでしょうし。さあ、中にどうぞ」


促されて俺は倉庫の鉄扉をくぐった、少し階段を降りるともうひとつ扉があった。そこを開けるとそこは俺が知っている階段下倉庫ではなかった。先程、2畳位しかないとか言ったが訂正しよう、明らかに20畳位はある。正面には立派な机と椅子が置いてあり、その正面には簡素な長テーブルが四角形に並びパイプ椅子が置いてあり、床は連隊長室などで使われるような赤い絨毯が敷かれている。右側にはガンロッカーだろうか、少し小さめのロッカーが並んでいる。反対側には2つ扉があった。一応、申し訳程度に食器棚もある。それにしても倉庫を改装したのだろう、こんな所にこんな空間があったなんて。驚いていると、新堂士長が簡単に説明してくれた。


「正面にあるのが稲葉3曹が使う机になります、ガンロッカーは申し訳ないのですが私達と同じ並びに置いてあります。反対側の扉の先は更衣室になっていますので着替えなどはそこで行ってください。あっ、そこに置いてあるロッカーはこの1番奥のロッカーを使ってください。そこに新しい個人装備が格納してありますので」


「私達という事は他にも小隊のメンバーがいるんだよな、今は何をしているんだ?」


「他のメンバーは駐屯地周辺の情報収集にあたっています、近頃魔物達の動きが活発化しているので」


「魔物?魔物ってあの魔物か?」


「はい、その魔物です。連隊長にはその辺の説明もしておくように命令を受けていますので、どうぞ小隊長の椅子にお座り下さい、今お茶をお出ししますので」


そう言って新堂士長はお茶を準備し始める、俺はガンロッカーに入っている物を確認することにした。ロッカーを開けると・・・これはなんだ?刀?それにOD色の防具の様な物が入っている。それも防弾チョッキの様なものではなくちょっとした鎧の様に見える。これは一体・・・


「お待たせしました、どうぞお茶です。立ちながらもなんですし、座って話をしましょう」


そう促され、俺は自分の椅子に座る。おぉめっちゃ良い椅子だ、フカフカである。


「ではまずは第ゼロ小隊の主な任務ですが、連隊の担当区域内で起きているフォトンに関する事件の調査及び問題の解決です。フォトンと聞くとあまり馴染みがないですが、魔力もしくは霊力と言っても差支えはありません。任務の特性上、ゼロ小隊のメンバーは皆魔力の量や親和性が高い人間が集められています。と言っても現在は小隊長と私を含めて4人だけなのですが。先程言った魔物についてですが、魔力の影響で野生の動物等が変異したものを私達は魔物と呼んでいます。」


なるほど、漫画やゲームなんかであるような魔力と同じようなものと考えてよさそうだな。俺もゲーム好きだからその辺は理解するのに困らない。連隊長が言っていた失踪事件もその魔物が絡んでいるという事か。


「何か、ここまでで質問はありますか?」


「いや、大丈夫だ続けてくれ」


「わかりました、ではその魔物についてなのですが、現在分かっているのは野生生物が変異したタイプの他に魔力の澱みから生まれるタイプがいるということです。特性として、野生生物が変異したタイプは生物としての本能で行動している為、食事や排泄などを必要とします。その為、私達はこのタイプを「魔獣」と呼称しています。魔力の澱みから生まれるタイプは生物としての行動を必要とせず、行動パターンが読みにくい特性があります、こちらのタイプを私達は「魔物」と呼称しています。現在調査している失踪事件は獣の痕跡が無いことから魔物の仕業と思われます」


「その魔物を狩るのが俺達の仕事って訳だ、正直話を聞いただけではにわかに信じ難い話だな」


「そうでしょう、私も初めて話をされた時は壮大な嘘か何かと思いました。さっき見ていた装備も一般の隊員が使用しているものとは違い、特殊な施しをした装備になっています。なんでも、私達の魔力を通しやすい素材で出来ているそうです。私もその辺はあまり詳しくないのでうまく説明出来ないのですが、それによって高い防御と攻撃が可能なんだそうです。その辺は実際に使ってみればわかるかと思います。明日から小隊長も座学と実施訓練が始まるそうなので、私達と一緒に訓練することになると思いますのでよろしくお願いします。事後については、連隊長室にて訓練の詳細な指示があるそうなので昼食後1300(ヒトサンマルマル)までに連隊長室前までお願いします」


「わかった、まだまだ聞きたいことはあるがそれはおいおい聞かせてもらうとするか」


「はい、これからろよしくおねがいしますね小隊長」


うむ、小隊長という響き・・・悪くない。とりあえず飯食ったら忘れずに連隊長室に行かないとな。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ