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世界構成リブートライン  作者: 鳥路
第一章:大社トライアルサバイブ
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01-002:駅前の柊と風見鶏

鈴海は人工島であり、元になった「鈴鳴島すずなりしま」を囲むように五つの人工島が作られており、それぞれ、区域番号が割り振られている


第一次産業をメインに行う第一区域

鈴海の窓口であり、商業施設等娯楽に富んだ第二区域

鈴海の中心であり、行政機関も集まる第三区域

そして、鈴海の防衛機関の中心である鈴海大社があり、第二次産業が盛んな第四区域

最後に、住宅街など暮らしの為に作られた第五区域


それらの区域の中で、俺たちは生活している


現在地は鈴海第五区域の住宅街

大社に行くためには、電車に乗って鈴海第四区域まで向かわなければならない


駅に来たのは初めてだった

二ノ宮家で星無しとして過ごしていた時、移動は基本車だった

路地裏時代は徒歩が基本

そして白露に連れてこられてからも徒歩が基本だった

だからこういう乗り物に乗るのは初めてで、内心わくわくしていていた


「えっと・・・まずは切符を買うんだよな。券売機というのは何処にあるんだ」


白露から教えてもらったことを記したメモ帳を取り出して、これから行うことを振り返る

駅の構内を見渡しても、それらしいものは見当たらない

券売機というのはどういう形をしているのか教えてもらっておけばよかった

さまよっていると、駅員さんを見つけた

よし、ここは聞こう。聞かなきゃ遅刻する


「あの。すいません」

「どうしたのかな?」


駅員さんは丁寧な物腰で対応してくれる

「券売機というのは何処にありますか?」

「えっ・・・ああ。券売機だね。こっちにあるよ。ついてきてもらえる?」


駅員さんは少し驚いた後、すぐに俺を案内し始める

・・・絶対にこいつ券売機も知らないのかよって思ったな

一般の人は券売機というものを知っているのが常識なのかもな


駅員さんについていくと、そこは駅の入り口


「ほら、ここだよ」


・・・駅の入り口にあったぞ。灯台下暗しってやつだな


「ありがとうございます・・・・」


いざ買おうとすると、ボタンが大量にあり、どこを押せばいいのかわからない

上の路線図らしきものを見てもさっぱりだ

駅名の下に三桁の数字が書いてあるが・・・もしかしてそれが券の値段だろうか


「もしかして、使い方がわからない?」

「はい。教えてもらえますか?」

「わかった。じゃあどこに行くか教えてもらっていい?」


駅員さんは俺の代わりに券売機の前に立ち、操作を始める


「鈴海大社本部前です。よろしくお願いします」

「え、今なんて?」


上手く聞き取れなかったのか、駅員さんは俺にもう一度問う


「よろしくお願いします?」

「その前だよ」

「鈴海大社本部前です?」

「そうそれ。君鈴海大社の入隊試験を受けに行くんだね。そんなに小さいのに」

「身長は小さいですがもう十一歳ですよ」

「十一歳でも、俺的には小さく思う。ほら、ここだよね」


画面を俺に見せて確認を取らせる


「鈴海大社本部前・・・あっています」

「お金は540円。ほら、投入できる?身長足りる?」


こいつ・・・自分の身長が高いことを誇っているように煽りやがって・・・

お前と同じ歳になったら必ずその身長を追い越してやる。何歳か知らないけど


「自分で入れます!身長はちゃんと足ります!」


そう言って鞄の中から預かった白露の小銭入れを取り出し、540円を取り出し投入口と書いてあるところに入れる

・・・少し届かなくて背伸びをしたのをあの駅員に笑われた。むかつく


「入れれたね。券発行まで少々お待ちください・・・ほら、出てきたよ」


出てきた券を俺に手渡す


「ありがとう。助かった」

「あれ、いきなり敬語なしに?」

「・・・あんたよくそれで接客サービスする職業なんか選んだな。子供相手でも手を抜いたらダメだろ」


俺が溜息を吐いて呆れる


「・・・そういう君こそ、年上相手にタメ口はダメでしょ。俺は君より年上なんだから敬ってよ」


それを聞いた駅員はへらへらしながらそう言う


「・・・これが大人かよ。敬う気失せるなあ」

「・・・可愛げのない子供だな。流石、その年で鈴海の入社試験を受けるだけあるよ」


二人揃って互いの悪口を言う


「でもあんた本当に転職は考えた方がいいぞ。接客業は向いてない」

「ははは、実は俺、駅員のふりはしたけど駅員じゃないんだよね。君、腕章ぐらいしっかり確認しなよ」

「腕章・・・あっ」


男が見せた腕章は、駅員が身に着けているようなものではない

五角形の中に鈴が収まり、その周囲にスズランが咲いている紋章

その腕章をつけている人間は、あの組織の人間しかいない


「あんた、鈴海大社の職員なのか」

「そういうこと。ちなみに第一部隊所属のね」

「エリートなのかよ、そのなりで」

「もちろん。その中でも屈指の方ね。君、入社試験を受けるならテレビの一つでも見なよ・・・情報戦だったらすでに敗北してるよ?」


「白露が修行中は娯楽禁止だって言って見せてくれなかったんだよ」

「・・・白露の。じゃあ君が二ノ宮紅葉君なんだ」

「そうだが、あんたは?」

「名乗りが遅れたね」


男はくるりと一回転

そして、襟元につけたローマ数字の「1」をかたどった記章を見せつけるように俺の前に立った


「俺は鈴海大社特殊戦闘課第一部隊司令官。つまりのところ特殊戦闘課の総司令官を務める春風柊はるかぜひいらぎ。よろしくね?」

「よろしく・・・」

「とりあえず、早く電車に乗らないと遅刻するよ。俺も試験監督任されているし、急がないとマズいんだよねー」


お気楽に言う柊は緊張感も焦りもなく適当に笑っていた


「で、急がなきゃヤバい奴が・・・なんでこの時間にここにいるんだよ」

「寝坊した!」

「・・・」


呆れで何とも言えない

これが、鈴海大社の特殊戦闘課。その中でもトップクラスの人員が集まるという噂の第一部隊の司令官

そして、全体の総司令官を務める男だとはにわかには信じられない


「ついでに君にミッションを与えよう」

「ミッションって?」

「券売機の前でうんうん唸っているあの和服の少年がいるだろう。声をかけておいで。待っているから」

「いいけど・・・待ってろよ」

「勿論!」


柊から謎の指令を受けて、俺は券売機の前でうんうん唸っている和服の少年のところまで向かう

足元に置いた風呂敷、紐で閉じた手帳

時代錯誤なその少年に俺は恐る恐る声をかけた


「なあ、何してんの?」

「え、あ・・・その」

「なんだかうんうん唸ってたから。どこに行くんだ?」

「えっと、鈴海大社本部前・・・に行きたいんだ。どれを買えばいいのかわからなくて」

「お前も、試験受けるの?」

「うん。もしかして君も?」


まさか、こんなところで受験者に会えるなんて思っていなかった

見た限り俺と同い年だと思う。若干、気弱なようだが

しかし、試験を受ける人間ということは・・・かなりの手練れなのかもしれない

人は見かけによらないな


「ああ。とりあえず、540円出して。その買えばいいから」

「ありがとう・・・」


少年からお金を受け取って、俺は先ほど覚えた通りに同じ券を購入する

出てきた券を取り、俺は少年に手渡す


「ほら」

「ありがとう」

「そうだ。一緒に行こうぜ」

「いいの?」

「行き先は一緒だしな」

「助かるよ・・・一人だと不安で」


少年は安心したように胸をなでおろす


「俺もだよ。まあ、今回はおまけもいるけど・・・」

「おまけ?」

「おーい。二ノ宮君、終わったー?」


呑気に手を振る柊を見て、少年は頬を引きつらせていた


「・・・は、春風柊総司令官さん。なんで」

「あいつ、寝坊したらしくて。あいつも一緒に大社に行くから」

「ええ・・・」


少年は柊の事を知っているようで、寝坊したという事実に若干驚いていた

同時に、今まで抱いていた感情が全部抜けたような目を柊に向けていた


「そろそろ時間だから行こうか」

「そうだな。行こうぜ・・・ええっと」


少年の名前を呼ぼうとするが、まだ少年の名前を聞いていないことに気が付く


「僕は、地井夜雲じいやくもだよ。君と同じで大社の試験を受けに行く・・・年齢は十一だよ」

「夜雲な。俺は二ノ宮紅葉。同い年同士、試験頑張ろうな」

「勿論。というか、同い年だったんだね」

「驚いたか?」

「少し。年上に思えたから」


柊の後を歩きながら俺たちは互いに名乗る

柊と完全にはぐれない距離で、夜雲と俺は話しながら歩いていった


「そう。そうだぜ二人とも、ズルはよくねえかもしれないけど・・・新たに築いたその関係は「生き残るために必要な関係」なんだぜ」

「初対面の人間より、やりやすくしてやったんだ」

「必ず受かれよ。俺の目的の為に・・・」


前を歩く柊の声を、俺たち二人が気に留めることはなかった

同時に、柊の企みに今の二人が気が付くことも、なかった

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