04.旅立ちの時
案内されたところは、家というより屋敷だった。まず屋敷に入る前に鉄格子でできた門があった。その左右には白い石でできた塀が土地を長方形に囲っている。門をくぐるとそこには庭園があった。小さな池から小川が庭で流れていて緑一色の地面はまるで大自然の中にいるようだ。俺の肩ほどの高さの低木が直方体に揃えられ、建物への道を示していた。
建物はすぐには数えきれないほどの張り出し窓に植物で囲われた緑の壁、ドアはこげ茶色の樹木に熊の彫刻が施されていて銀色のドアノブが付いていた。中に入れば黒色の絨毯が広げられていて、燕尾服に身を包んだ白髪の中年男性が立っていた。
ドアが開くのを待っていたかのように待ち伏せた中年男性はソフィアさんを見た時に腰を曲げて礼をしながら
「お帰りなさいませ。ソフィア様。」
と言った。ソフィアさんは『ご苦労。』と言ってその人に剣を渡した。
「ソフィア様。その隣にいらっしゃる方はどちら様で?」
「これはトダコウスケと言って現在迷子になっている者だ。家が見つかるまでここで養おうと思う。」
「承知いたしました。ソフィア様。」
白髪の男性はその後、剣を持ってどこかに行ってしまった。ソフィアさんからはしばらく待っていて欲しいと頼まれて俺はこの場で待つことにした。
このやり取りや屋敷の様子を見てソフィアさんは大層な金持ちだろうということを推測した。そして白髪の男性はきっと召使いと呼ばれる人だろう。そして俺が最も思ったことが長くここに居候するわけにはいかないという事だ。はやく実家へと戻らなくてはソフィアさんを犯罪者にしてしまう。そのことは避けなければならない。
そんなことを勘案していると白髪の男性がもう一度現れた。
「初めてましてコウスケ殿、私、この家に仕えますダレン・ベイリング。ダレンとお呼びください。」
「はい。」
このダレンさんに俺は優しそうな人だという印象を持った。ダレンさんの案内に従って階段を上り、画廊を歩く、廊下はシャンデリアらしきものが何個も天井から吊るされており夜でも多少は明るかった。
やがて歩いて行くと部屋に到着した。扉を自分で開けると綺麗に整頓された部屋に通された。
「ここがお客様の部屋となります。ごゆっくりおくつろぎくださいませ。」
「ありがとうございます!」
俺は元気に礼を言って静かに荷物を下ろした。するとダレンさんから一つ通達があった。
「後で、ソフィア様がお話を聞きにいらっしゃるそうなのでその際はよろしくお願いします。」
「わかりました。」
了解の意を伝えると『では』と言ってダレンさんは去っていった。
しばらくすると、ドアをノックした後、ソフィアさんが俺のいる部屋に来た。
「ゆっくりできているか?ここを自分の家だと思ってくれて構わないぞ。」
「お気遣いありがとうございます。そうさせてもらいます。」
ソフィアさんは部屋にあった椅子に腰を掛け、前にあった机に紙と羽根つきのペンとインクを置いた。
「さて、身元を改めるために、とりあえずいくつか質問をさせてもらう」
「はい。わかりました」
***
一通り話を終えるとソフィアさんは「うーん」とため息をこぼした。
「なるほど。これはなかなか奇特な話だな、気が付いたら違う国にいてあの山にいたと。」
「そうなりますね。自分でもなんでこうなったかわからないです。」
「うーむ。残念だが私では元の家を探せそうにないな。」
マジか。ヤバいじゃん。これからどうしよう。
「そんなに気を落とすな。明日私は魔導士を迎えにウルカヌス公国へ赴く、ウルカヌス公国は優れた魔導士が多いと聞く、魔導士の占いはこういう事柄でもわかることもあるそうだ。だからコウスケが良ければ一緒に行って手掛かりを見つけようじゃないか。」
ウルカヌス公国?魔導士?何の話?ここは本当に地球なのか?でも手掛かりが見つかるのなら行ってみるのもアリだな
「わかりました。明日一緒に行きます。」
藁にも縋るとはまさにこのことだと思った。




