弱点
今回で化け物との戦闘は終わりです。
強化された化け物の攻撃に俺は防戦一方だった。
「ぎえぁっぁっぁぁぁぁぁぁ」
先ほどよりの更に速くなった化け物の肥大化した拳をガードしようとするも目で追うのが精一杯で間に合わず顔面に直撃する。
「ぐぅ————」
殴られた衝撃で視界が歪み、身体が浮くような浮遊感を感じる。どうやら、思い切り殴り飛ばされたらしい。しかも、吹き飛ばされた先に化け物が瞬時に移動していた。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
宙に浮いた玲二に力任せに腕を腹部に叩きつけられ、衝撃で地面が陥没し、土煙を高く巻き上げる。
「がふっ————」
肺から空気が絞り出され、口腔に血の味がする。
起き上がろうとするが身体に力が入らない。しかし、化け物の容赦なく追撃は止まらない。足首を掴まれ、持ち上げられてそのまま顔面から地面に叩きつけらる。
「がぁ————」
一応ガードをしたものの、衝撃を消しきれない。再度化け物に持ち上げられる。
「このっ!」
身体を振り子のように身体を振り勢いをつける。
「やられっぱなしじゃねーぞ。」
そのまま勢いを利用して力一杯顔面殴りつけた。
「なっ!?」
しかし、先のように拳がめり込むどころか、ピタッと止まって動かない。というか滅茶苦茶硬い。
「ぎっぎっぎっ」
まるで、効かねーよとでも言うかのように嘲笑い、玲二を放り投げる。
「がぁ————」
背中から地面に叩きつけられた。
「くそっ・・・やばいな・・・」
速いうえに硬いとかどうすりゃいいんだよ。重い身体を起こし口の辺りを拭うと黒い液体が付いた。なるほど、血も赤ではないんだな。
「大丈夫ですか。異形さん!」
女の子が心配そうに駆け寄ってくる。
あれ?何でここに・・・と一瞬思ったが、どうやら俺がこの子の隠れていた場所付近に落ちただけのようだ。
「君・・・危ないから・・・まだ離れて————」
「待って下さい!あの異形は恐らく複合型です。」
「複合型?」
「はい。通常この辺に出る、いわゆる野生の異形には人型、虫型、鳥型、動物型の四種類がいます。ですが、いずれも特定の一種の生物で構成されていて、複数の生物の部位や特性を持たない異形です。」
あぁ・・・やっぱりあれは普通じゃないのか。て言うか野生がいるのかよ。
「あの異形、私には姿は見えませんが音と匂いから察するに人間と虫の特徴を持っているのではないですか?」
「あっあぁ・・・そうだな。」
マジかよ。音と匂いだけでわかるもんなのかよ。
視力がない人は視力の代わりに他の五感が優れているということを聞いたことはあるが、普通はそこまでわかるものなのかと玲二は思った。
「やはり・・・ですか。」
「何かあるのか?」
「はい。複合型の異形は、複数の生物の特性と高い再生能力を持っているため普通の方法では倒せません。」
「どうすりゃいい?」
「体内の何処かにある核を破壊すれば肉体が崩壊すると聞いた事があります!」
なるほど、どうりで素手のパンチじゃ無理なわけだ。
「因みに核の場所は?」
「そこまでは————伏せて!!」
女の子は何かを感じたようで、咄嗟に叫ぶ。嫌な予感がした玲二は咄嗟に伏せると、頭上を巨大な触手の束が音を置き去りにして通り過ぎる。木々を粉々に粉砕する。
う~わっ・・・怖っ。あんなの喰らったらひとたまりもない。
「異形さん・・・お願いがあります。」
その声は何かを決心したような声色だった。
「私を乗せて戦ってくれませんか?」
それは、共闘の申し出だった。
「おいおい、何言ってるんだ!君は戦えないだろ。」
「はい、私自身は確かに戦えません。ですが————右に飛んで下さい!」
言われた通りに女の子を抱えて右に飛ぶと、伏せていた場所に高速移動してきた化け物の拳が叩き込まれた。
「代わりに攻撃のタイミングは全て私に任せてください!」
「だが・・・」
「異形さんは攻撃で私は回避をサポートする。こうすれば異形さんは攻撃に集中出来るはずです。お互いの能力を最大限に生かして戦うべきです。」
確かに、この子に任せれば回避は楽になるし、なにより理にかなってる。
「私たちが組めばこの状況を何とかできると思いませんか?」
そう言って女の子は薄く笑みを浮かべた。
そんなこと言われたら、やらない訳には行かないよな!
「OK。やろうぜ!振り落とされるなよ!」
女の子を抱えて、右肩に乗せる。
「もちろん!」
女の子は力強く頷き、首に捕まる。
「しかし、どうする?」
核を攻撃しようにも、そもそも打撃が効かない。攻撃回避手段は得たが打開策は浮かばない。
「取り敢えず手当り次第攻撃を加えて、核の場所を探しましょう。例え表面上でも核の場所に当たりそうになれば本能的に防ぐ筈です。」
「よし、それで行こう。」
短く返事をすると、化け物に向かった走る。
「がぁ―――」
が触手を振るう。やはり目では追えない。
「左、来ます!」
指示通り、走りながら右に避けると触手が真横の地面を叩く。
「次、右です!」
左に避けるとまた真横の地面を叩く。
「横です!」
「下から来ます」
「次、上です。」
女の子の指示通りに動き、次々と触手の攻撃を回避しつつ、前に進む。
すげぇ・・・すげぇよ。当たらねぇ。これなら怖くない!
「後ろに!」
一瞬止まって、後ろに飛ぶと元いた場所に拳が降ってくる。
「まずは一発。」
振り下ろした腕の懐に入り、顎に回し蹴りをお見舞いする。
「ぐがぁ?!」
蹴りを喰らった化け物が僅かに身体を仰け反らせるもすぐに、反撃してきた。
「右に半歩!」
右に半歩ズレると拳が通り過る。
「もう一発。」
左脇腹に拳を叩き込む。しかし、怯みもしない。
「まだまだ!」
化け物からの攻撃を躱しつつ、胸、鳩尾、脇腹、下腹、肩、と次々に当てていくがやはり、大して効いていないようだった。
「あぁぁぁぁあぁぁァァァ―――」
突然攻撃が当たらなくなっただけでなく、一方的にボカスカ殴られていることに激しく激昂し、それぞれの触手を鞭のように振るう。
「おっと・・・」
触手を振り上げる呼び動作を感知した女の子の指示で咄嗟に距離を取った為に当たりはしなかった。
「おーお、怒ってる怒ってる。しかし、手応えは微妙だな・・・」
「そうですね・・・」
それなりに攻撃を加えてみたがどうも反応はいまいちだった。女の子も微妙な反応をしていた。
「上ではなく、下の方かもしれませんね。」
下ってあの芋虫部分の事だよな。正直触りたくないけど、そうも言ってられない。
「あぁぁぁぁぉぉぁぁぁぁ―――」
もはや絶叫に近いような声をあげながら、化け物は更に身体が肥大化し始めた。
「おいおい、まだでかくなるのかよ。」
これ以上強くなられると、ヤバいんだけどと思ったけど、肥大化した為負荷に耐えられなくなって、脚があらぬ方向に折れていた。あれじゃもう使えないだろう。
「なんか、メタボみたいになったな。」
全体的にメタボ並にぶくぶくに太るがまだ肥大しつづける。
何かおかしい。強化にしては、肉体が肥大化しすぎて丸くなりつつあった。
「なんか・・・嫌な予感が・・・」
止まることなく肥大を続けしまいには顔や腕すら飲み込み、巨大な肉塊になりつつあった。
玲二の中である可能性が膨れがっていく。
「おいおい・・・まさか・・・」
「その、まさかみたいですね。」
どうやら女の子も同じことを考えていたようだ。俺は化け物に背中を向けて全速力で逃げだした。
「自爆します!」
そう少女が口にすると同時に、化け物が弾け周囲を巻き込まれ大爆発が発生した。
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