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思いっきり殴っちまった

主人公とヒロインのご対面です。

掛け合いは次回からですが・・・

「誰か・・・誰かいませんかぁ————」

森の中を歩きながら大声で叫んでみるが、自分の言葉が辺りに山彦のように虚しく響くだけだった。

「駄目か・・・」

あれから二時間ぐらい歩き続けているが、未だに森の出口のようなものは見えない。いや、それどころか。

「むしろ・・・迷ってね?」

歩けば歩くほどに森が深くなっているような気がするのは俺の気のせいだろうか。

「それに・・・さっきから静かすぎないか?」

目が覚めた時から思っていたのだが、森の中なら少なくとも鳥のさえずりや動物や虫の鳴き声など何かしらの生き物の音がしているはずなのだが、この森には風や木々が揺れる音以外不自然なほどに何も聞こえない。

「何も、居ないのか・・・」

人気どころか、生物がいるような気配すらない。

そう考えると、本当に人に会えるのか不安になってきた。

「こうなったら・・・何処か高い所から辺りを見渡してみるしか————」

などと考えていると、ドンッという何か重いモノを打ちつける様な音がした後に木がミシミシと折れるような音がした。

「な、なんだ?」

音のする方を見ると、今度は移動しながら何度も何度も地面に響くような叩きつける音がし、衝撃で粉砕されたであろう多くの木々が砕ける音と共に、自分のいる位置からも見えるほどに空中に木片と土煙が上がっていた。

音と状況からして、恐らくなんらかの巨大な生物が何かを追いかけているようだ。

「急いで行ってみよう。」

幸い音がする方は今自分がいる位置から一キロも離れていないように感じる。

右足を全力踏み込み地面を蹴ると、身体が勢い良く加速した。

「てっ・・・はえぇぇぇぇ。」

人間の時と同じ感覚で走り出したつもりだったのだが、高速道路で車を飛ばしている時に窓から手を出したときのような、猛烈な加速感と風を感じる。

起きたらばかりの時は見知らぬ所に放り出されてパニックになっていて気にしていなかったが、やはり異形になった影響で身体能力まで変化しているらしい。みるみる音のする場所に近づく。

しかし、それと同時に玲二はある事を考えていた。

「俺が行ったところで何ができるんだ・・・」と確かに今の自分は人間であった時より身体能力が高いかもしれないが、気持ちは人間のままだから、もしも相手が自分よりもでかい化け物だったり、自分を捕食するような魔獣だったりしたらどうしようと考えてしまう。仮に自分と同じぐらいのサイズだったとして、何かしらの武道や武術に心得があるわけでもないし、喧嘩もそんなにしたことないし、そもそも戦えるかといわれると無理かもしれない。ただの高校生が素手で野犬と戦えと言われても無理である。

「様子を見てそれから判断した方がいいかもな。」

走るスピードを落とし、音のする方にしゃがんで近づいていく。

近づいていくに連れて、何にか声が聞こえてくる。

「ちょこまか!逃げる!!」

しわがれた男性のような声が何かに向って叫んでいるようで木の影から様子を見てみた。

「うわ・・・」

思わず嫌悪の声が漏れた。

そこに居たのは、紫色の芋虫の身体に蜘蛛のような脚、芋虫の顔の上あたりには茶色の人間の上半身が生えて、ぶくぶくに膨らんだ体に、巨大な左腕、右半身から生える八本の黒く細い毛虫のような触手、顔の部分は四つに裂けた異形の化け物が触手を振り回しながら周囲を破壊していた。

「うへぇ・・・気持ち悪っ!」

生理的嫌悪感を感じる見た目おもに触手が、既に無いはずの鳥肌が立つような寒気がした。

サイズ的には、自分と同じくらいのようだが、はっきり言って近づきたくもないし、可能なら見たかもない。

「何に攻撃しているんだ?」

化け物の必要に攻撃している視線の先に目を向けると、黒髪ショートに褐色の少女が軽やかにステップを踏みながら、周りの木々を利用して、逃げ回っていた。

「おぉ、やったぞ、人だ。しかも可愛い女の子だ!」

かれこれ2時間でようやく人を発見出来たことに、玲二は静かにがっつポーズをした。

「しかし・・・上手く避けてるな。すげぇ・・・」

小さな体で完璧に攻撃を回避してる少女の動きに、思わず驚嘆の声が漏れる。

そして少女を見ていて気づいたが、どうやら俺の身体は少女の軽く五倍以上はあるということに気づいた。

まぁ、俺が異形である事を考えれば少女が小さいのでは無く、俺の方がデカイことは安易に予想がつくけどね。

「ちょこまか!ちょこまか!にげる!!」

攻撃が当たらないことに苛立ちを感じたのか化け物は声を荒らげ、より一層触手を激しく早く振るった。

激しくなる猛攻に少女の動きは段々と余裕が無くなり、足元が度々もつれそうになっていた。

「ヤバい!このままだと・・・」

食われるのが時間の問題になりつつあった。

そして、ついに木の根に躓き転んだしまった。

そこからよく覚えていないが、気がつくと俺は、無意識に少女の方に向かって全力で走り出していた。先程まで生理的嫌悪だの戦うのが怖いだのと感じていた気持ちはもはや微塵も無かった。

あの子は人間で勝てないと分かってても必死に抗おうとしているのに自分は一体なんなんだ。デカイ図体してるのに、ビクビク怯えて、自分が情けなくなる。

「あぁもう、かっこ悪いな。俺は!」

せっかく見つけた、この世界の人間の少女が無残に食べられる姿を見たくはなかったし、何より困っている女の子見捨てるのは何よりかっこ悪い。

「人間じゃ無理でもこの身体なら―――」

一発殴るぐらいは出来るはずだ。そんで、どうしても無理そうなら彼女を抱えて逃げりゃいいだけだ。

右足をブレーキ代わりにして滑らせながら、化け物と少女の間に躍り出る。

「え?」

女の子は俺の突然の乱入に驚いているようだった。

「!?」

化け物の方も突然の同種の乱入に驚き止まろうとするが急には止まれない。

「どぉりぁぁぁぁぁぁぁッッ―――」

そのまま右足に全体重を乗せて、こちらに向って走ってくる化け物の顔面に左の拳を叩きつけた。

拳がメキメキと異音をさせながら、手首辺りのまで顔面に埋まった。

「ぬぅぅぁぁぁぁ―――」

「ぐぎゃぼォ―――」

そのまま拳を振り抜くと、化け物は短い断末魔をあげながら明後日の方向に吹き飛び、木々を薙ぎ倒し、地面に叩きつけられた後に、地面を二、三回転した。

「ふぅ・・・思いっきり殴っちまったぜ。」

玲二は独り言のように呟いた。








次回は主人公化け物との戦闘回になります。

多分前後半に別れると思います。

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