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盲目の少女

本作のヒロインの登場です。

名前だけでも覚えていってね。


「はぁ、はぁ、クソどうしてこんなことに!」

中年男性が、息を切らしながら愚痴をこぼした。

「この辺りにあんな大型の異形が出るなんて聞いてないぞ。」

「リゼフさん、これからどうしましょう・・・・」

中年男性、改めてリゼフの後ろ走る先程のリックとベガを助けようとした女性が不安そうに尋ねる。

「そんなもん俺が聞きたいわ!今逃げてる方向だって村とは反対方向だし、かと言って戻る訳にも行かない。連合国に行くには遠すぎる―――」

「では、取り敢えず向こうにある旧文明の廃墟に行ってみるのはどうでしょうか?異形達は基本人間より身体が大きいですから、建物入りにくいはずですし、時間を稼げるかも知れません。」

女性に手を引かれて走っていた。褐色の両目を瞑った盲目の十五歳ぐらの少女が提案する。

「そうか・・・廃墟か。あるかもな。」

この辺りの森は昔は大きな都市だったらしくあちこちに旧文明の廃墟が残っていたりする。中にはどういう仕組みで作られたか分からないが異形の攻撃でも傷一つ付かないものもある。

「場所がわかるの?!」

目が見えない筈の少女のいかにも廃墟が見えているような発言に女性は驚いていた。

「はい、何となくですが・・・風が吹き抜ける音と土の匂いに混ざって石と金属の匂いがします。」

そう言うと東の方角を指さした。

「嘘は言ってねぇはずだ。クゥリャは目が見えねぇがそれ以外の五感が異常な程に敏感みたいでな。一キロ先の異形が移動する足音でも聞こえるみたいなんだよ。」

「それは、凄いですね!」

「あぁ、今回の取引にクゥリャを連れて来たのも接近する異形をいち早く感知できるからなんだよ。」

「まぁ、音が突然現れたって言った直後、に上からアレが降って来たんだから今回のはどうしようもないけ―――」

「皆さん止まって下さい!!」

クゥリャが何か不穏な音を感じた為にリゼフと女性を呼び止める。

「「え?」」

しかし、既に手遅れだった。

突然森の影から現れた毛の生えた黒い触手にリゼフが一瞬で連れ去れ、数秒後、リゼフの断末魔が森に響いた。

そして、地面を揺らしながら先程と同じ化け物が姿を表した。

「ひぃぃぃ―――」

女性は短く悲鳴をあげて後ずさる。

「これは、先程の異形じゃない・・・違う匂いが違います。」

「ま、まさか、二匹目ってこと?」

「恐らくは・・・」

「4jc4、iy:@yk/r、ivg。」

化け物は涎を垂らしながらゆっくりとこちらを見て、何かを呟いている。

「逃げましょう!」

恐怖で硬直しそうになっていた女性の手をクゥリャは力強く握り、引っ張った。

「少しでも異形から―――」

離れましょう。と言おうとした言葉は続かなかった。

それは、引っ張っていた手の感触が一瞬で無くなり、後ろからはグチュグチュバリボリと肉や骨を咀嚼する音が聞こえたからだ。クゥリャは察してしまったのだ。女性は、もう食べられたしまったのだと。

「4je!4je!iy:@yk/r4je!mzsh0p\6!!」

状況を直ぐに理解したクゥリャはすぐさま元来た道ではなく左に広がる森の方に走り出した。

「i:@q!i:@q!64b\rh4!!」

クゥリャの背中に向けて化け物は触手を放つ、しかし、クゥリャはまるで見て避けているかのように周りの木々を利用して綺麗に触手を回避していく。

「音が丸聞こえですよ!」

二本、三本、四本と迫る触手を右に避け、左に避け、ジャンプで避け、木や岩を利用し、避け続ける。

「a9bjt!i:@.!!」

化け物は何かを叫ぶと触手の動きがより一層激しくなり、クゥリャからスレスレの地面や木々を砕く。

「まだ・・・まだ大丈夫・・・」

息を切らしながら、若干足ももつれそうなりつつどうにか回避していた。

しかし、いくら攻撃のタイミングが分かっても、十六歳の少女であるクゥリャの体力は限界に近かった。

「a9bjt!a9bjt!i:@.!!」

化け物が放った触手の1本がクゥリャの足元の地面を砕いた。

「くぅ・・・」

衝撃でバランスを崩して倒れそうになって咄嗟に足を前に出した瞬間、足が木の根っこに引っかかった。

「しまっ―――」

その場で胸から派手に転んでしまった。

「かはっ―――」

打ちつけた痛みで、頭がぼやりする。

それでも身体を動かし、這って前に進むと、大きな木の幹に触れた。

痛む身体を幹で支えながら起こすのと同時に化け物が目の前まで来ていた。

「ここまで、ですか・・・」

あぁ、案外呆気ないものなんだなとクゥリャを思う。こんな化け物がわんさかいる世界で生きていればいずれこうなるだろうとは思っていた。

父も母もそうであったように、今度は私が食べられる番なんだね。短い人生だったけど、そんなに悪くはなかったと思う。

願わくば、次に生まれ変わる時はもっと普通の世界で、空を見てみたいな。そう願いながら、ズボンの裾を強く握った。

「どぉりぁぁぁぁぁぁぁッッ―――」

何処からともなく、少年の掛け声と目の化け物と同じぐらいの足音の巨体がクゥリャの目の前に立ちはだかった。

「え?」

突然現れた新たな化け物の存在に驚いている直後ドンッという鈍い殴打音がした。

「h@g@73-@―――」

短い断末魔のような悲鳴をあげながら、木々を薙ぎ倒しながら化け物は後方へ吹き飛ばされた。

「おい。君大丈夫か?」

新たなに現れた化け物の方から、自分を心配する少年の言葉が聞こえ、思わず返事をする。

「あ、はっはい・・・大丈夫です・・・」

「そうか、そりゃ良かった。」

「あの、貴方は・・・」

「あぁ・・・悪いが後にしてくれ。あいつ起き上がって来たみたいだし。くそ、やっぱ殴っただけじゃくたばらないよなぁ。」

少年の声は舌打ちをした。

「何処かその辺に隠れてくれ。巻き込まれると危ねぇからな。」

そう言う少年の声はとても優しいものだった。

「分かりました。その・・・頑張って下さい!!」

クゥリャは少年の好意に答えるべく、今できる精一杯のエールを送った。

「おう!さっさと倒してくるから待っててくれよ。」

その言葉は、クゥリャが今まで聞いた男性の言葉の中で一番キュンとするものだった。

次回は主人公が颯爽?と助けるまでのお話です。

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