いきなり論理クイズ!
「はあ……」
いつものテーブルで、クッキーが小さく息を吐いた。
「どうした、悩み事か? 元気出せよ」
いかにも悩みがなさそうなタルトが、口をもぐもぐやりながらの気楽さで気楽さで慰める。慰めになってないが。
「悩みって言うか……」
「話してみると楽になるかもしれませんよ?」
言いよどむクッキーの掌に手を重ねて、プリンが優しい声音で告げる。
「……じゃあ言うけど」
言いにくそうな様子で顔を上げ、うかがうような視線を三人に向けた。
「また男と間違えられた」
「なんだ、いつものことじゃねえか」
と、タルト。聞いておいてこのリアクションなのだからタチが悪い。
「いつものことだから悩んでるんでしょ!」
拳を振り上げるクッキー。どうやら根は深いようだ。
「気にしなくていいわよ、それぐらい。もう少ししたら成長して、女っぽくなるんだから」
顔にかかった髪を払うショコラ。彼女なりに慰めているようだ。
「でも……」
「でも、何よ?」
まだ不安げなクッキーに、ショコラはいらだちを隠せない。はっきりしないのが嫌いなのだ。
「……タルトみたいになったらヤだし」
「おい、そりゃどういう意味だ?」
今度はタルト……大柄で筋肉質な女戦士……が、クッキーを睨み着ける。
「見ての通りじゃないですか?」
「ボク、そんな筋張った体になりたくないもん」
「骨と皮みたいなショコラよりはマシだろ!?」
「なんでこっちに飛び火させんのよ!?」
がた! と二人が立ち上がる。いつもの調子である。
「まあまあ……皆さん、悩んでらっしゃるのですね」
プリンはひとり、我関せず、という調子で紅茶を口に運んでいた。
「ボク、身長もないし、胸もぜんぜんだしさ……女らしくなんかならないんじゃないかなって」
プリンの、神官服の上からでも分かるような立派なふくらみを羨ましげに眺める。
「ちょっと、今あたしらを蚊帳の外にしただろ」
「なんだかすごく失礼な扱いを受けている気がするわ」
にらみ合いを止めて、クッキーに非難の視線を向けるふたり。
クッキーは素知らぬふりでそっぽを向いた。
「身長はもうちょっと欲しいし、できれば体もさ。女っぽくなればいいのに」
ささやかな自分の胸に手をやるクッキー。ショコラはじろりと睨み着けている。
「あたしも昔は小さかったんだ。すぐに大きくなるって」
小さな肩をばしばし叩いて、タルトが慰める。慰められているクッキーがむせかけていてもお構いなしだ。
「焦る気持ちは分かりますが、成長は焦ってもどうにもなりません。今のクッキーさんも、素敵ですよ」
笑顔で安心させるように、プリンが言う。
「みんな……」
クッキーは潤んだ瞳で仲間達を見つめ……その視線を向けられたショコラが、ゆっくり頷いた。
「まあ、小さいままだったら諦めるしかないわね」
「慰めるかおとしめるかどっちかにしてよ!」
さて、ここで読者の諸君に問題だ。
まずは以下の四人の証言を聞いて欲しい。
タルトの証言。
「四人の中で一番身長が高いのはあたしだぜ」
「でも、胸が一番大きいのはあたしじゃないぞ」
ショコラの証言。
「身長が一番低い人が胸も一番小さいのよ。普通のことでしょう?」
「もちろん、胸が一番小さいのは私じゃないわよ」
プリンの証言。
「ショコラさんはわたくしより身長が高いですよ」
「タルトさんは四人の中で二番目に胸が大きいんです」
クッキーの証言。
「少なくとも、タルトとプリンはボクより背が高かったはずだよ」
「ボクより胸が小さい人は、一人しかいないよ」
四人のうち、三人は本当のことを言っているが、ひとりは嘘だけを言っている。
つまり、8つの証言のうち6つは「真実」で、誰かひとりが言っている2つの証言は「嘘」だ。
さて、四人の身長とバストサイズの順番が分かるだろうか?
ごく簡単なクイズなので、答え合わせはありません。




