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苦手なもの

「わたくし、ネズミだけはどうしても苦手なのです」

 たわわな胸に手を添えて、プリンが一言漏らした。


「それで、大ネズミが出てきた途端悲鳴を上げて逃げ出したと」

 ボロボロの髪を手で直しながら、タルトがじっとりした視線を向けた。


「だって、あの不潔そうな顔を見るだけで、体が震えてきてしまうんです」

「そのせいで、あたしがひとりでその不潔そうな顔を全部相手したんだぞ!」

「相手したっていうか、負けてたけどね」

 冷静にツッコミを入れるショコラ。穴の開いたローブを自分で繕っているところだ。


「まあまあ、仕方ないじゃん。誰でも、生理的にダメなものってあるよ」

 クッキーがフォローに回る。こっちも頬がすすけている。


「へえ。じゃあクッキーにも苦手なものがあるの?」

 面白がるような調子で、ショコラが問う。


「うっ。やめてよ、思い出したくないんだから……」

「あるのね」

「……ボクは、ヘビだけはムリ」

 げっそりした表情。思い出しただけでも気分が悪くなるものらしい。


「ヘビなんかこわいのか? 焼いて食うとうまいんだぜ」

「うぇー。あんなの食べるなんて考えらんない」

「へへっ、今度野宿するときを楽しみにしてろよ!」


「やめなさいよ。本気でおびえてるじゃない」

 静止をかけるショコラに対して、タルトが面白がるような笑みを浮かべる。


「そういうショコラはどうなんだ?」

 ニヤつくタルトに対して、ショコラはあきれた視線を返す。


「私は幽霊が苦手。これで満足?」

「なんだ、魔女のくせに幽霊がダメなのか?」

「魔女じゃなくて、魔法使い!」

 憤慨を絵に描いたような顔で叫んでから、ショコラは大きく深呼吸した。


「子供のころからそういうものを感じやすい体質なの」

「意外と信心深いんだねえ」

「冒険中にアンデッドが出たら、わたくしが守って差し上げますからね」

 苦手なものを告白しあった仲だからか。クッキーとプリンはショコラに同情的だ。


「ネズミのゾンビだったらどうするんだよ?」

「もー、なんでさっきから意地悪ばっかり言うの!」

 傍若無人なタルトのふるまいに、クッキーが非難の声をあげる。


「お前ら、冒険者だろ? 動物だのオバケだのが苦手なんて、笑っちまうぜ」

「じゃあ、タルトさんには苦手なものはないんですか?」

「ないね。お前らみたいに軟弱じゃないんだよ」


「だからってそんな言い方、しなくてもいいじゃんか!」

「はんっ、弱虫は弱虫同士、仲良くしてくれよ!」

 鼻で笑いながら、タルトが席を立った。


「それじゃ、あたしは行くところがあるから。じゃあなー」

「ぐぬぬ……!」

 一同の怒りの視線を浴びながら、女戦士は出口へ。


 と、その入り口から別の姿が現れた。

「すみません。冒険者に依頼をしたいのですが……」

 と、目の前にいたタルトに声をかけたのは、貴族の若者だろうか。すらりとした長身の、身なりのいい青年である。


 眉目秀麗、整った顔立ち。

 青い瞳に見つめられて、タルトの顔が逆に赤く染まっていく。

「あ、あ、あたしは、店のもんじゃねえから!」


「では、どこに行けば……」

「し、知らねえよ!」

 タルトは叫び、あっけにとられる青年を置いて店を飛び出していった。


「……イケメンが苦手みたいですわね」

「意外だねえ……」

「田舎育ちらしいからね」

 三人は口々につぶやき、お互いの顔を見合っていた。

言ってないだけでもっとたくさん嫌いなものがあると思います。特にショコラ。

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