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マジックアイテム

「結局、魔法のアイテムは見つかりませんでしたね」

 先日の『カラキリ市』の件を思い出し、プリンは残念そうに首を傾けた。


「仕方ないわ。運次第だし、せっかく見つけたものがあれでは……ね」

 一緒に買い物に行ったショコラも、髪をかきあげながらつぶやく。


 けっきょく、被害についてはアプフェルシュトゥルーデル(人名です)と、魔法の機械を売っていた商人が折半したらしい。

 もとはと言えばショコラがアプフェルに忠告もせずに機械を渡したせいなのだが、うやむやのうちにその責任を追及されることはなかった。ラッキー。


「私たちの戦力不足を補うような道具がほしかったんだけどね」

「おいおい、あたしがいるのに何の不足があるっていうんだ」

 二人の話に割り込んで、タルトが身を乗り出した。

「なぜ毎回自信を持ってそんなことが言えるのか、とても不思議です」


 敵の攻撃をひきつけ、仲間を守るはずの戦士がろくな防具をつけていない……という点については、パーティ結成当初から何度も話題に上がった。

 しかし、そのたびにタルトが、

「防具は問題じゃねぇ。心の強さなんだぜ」

 こういった理論をぶち上げてくるので、なかなか進展しないのだ。


「タルトが納得するような防具が見つかれば、いいんだけど」

「どんな防具だよ」


「タルトは体を隠すような恰好がイヤなんでしょ?」

 と、今度はクッキーが割り込んでくる。

「じゃあ、指輪とか、腕輪とか。防御力が上がる魔法がかかってたら?」

「そりゃいいな。そういうアイテムなら大歓迎だ」


「無理よ、魔法の指輪なんてみんな高級品なんだから。私たちに手が出る値段じゃないわ」

「やっぱり、体を隠すものに防御の魔法をかけたほうが利き目が強いんでしょうか」

 ショコラとプリンは深刻にうなずきあっている。


「いっそ、野蛮人には見えない鎧があればいいのにね」

「それなら、寝てる間に着せてしまえばいいわね」

「さすがのあたしも鎧を着せられたら見えなくてもわかるよ!」

「見えない件は受け入れるんですね」


 いいかげん、この話を続けられては厄介だ。タルトは矛先をそらすことにした。

「クッキーはどうだ? 何か欲しいアイテムはないのか?」


「ボク?」

 自分を指さして、クッキーはクセっ毛の間を指で掻いた。

「んー……そうだ、うわさで聞いたことあるよ。指が器用になる手袋があるんでしょ?」


「指が1本増えるとか、機械のように精密に動かせるとかって聞くわね」

 高名な盗賊が、そんな手袋を持っていたらしい。どんな鍵でもたちどころに開けることができたという。


「それさえあれば、どれだけ罠があっても平気だよ! ……なんで目を伏せるの?」

「いや……」

「それは……」

 夢想に目を輝かせるクッキー。だが、仲間たちは下を向いて目を合わせてくれない。


「クッキーさんの場合、まず罠を見つけることが問題なんじゃないですか?」

 こういう場合、言いにくいことをずばりと突くのはプリンだ。


「これでも、ちょっとずつ感知できるようになってると思うんだけどなあ」

「あたしの記憶と食い違いがあるな」

「冒険を始める前は、ぜんぜんわからなかったし」

「ポジティブさは本当にすごいと思います」

 プリンはほめて伸ばすタイプだった。


「わたくしは、どんなに動いてもズレない下着がほしいです」

「当てこすりッスか?」

「ショコラ、口調間違えてるぞ」


「真面目な話です。いまでも気を使って、体に合わせた形にしているのに、走ったりするとすぐ……」

「ああ、そう」

「真面目に聞いてあげなよ」

 すっかり聞く気をなくしているショコラ。クッキーは励ますような、とがめるような、そんな対応だ。


「気にしなきゃいいんじゃねえか?」

「それで平気なのはタルトさんだけです」

「ああ、そう」

「聴覚を遮断している……!」

 生返事を自動的に繰り返すマシーンと化したショコラの肩を盗賊娘が叩き、意識を取り戻させる。ついでに、話題も変えることにした。


「ショコラは? 自分だったら、どんな道具がほしいの?」

「私は……やっぱり、杖かしらね」

 存外に普通の答えを返して、ショコラは立てかけてある自分の杖を眺めた。樫の木でできた、長いスタッフだ。


「これにも愛着はあるけど、振るだけで魔法が出るようなものがほしいわ」

「自分も魔法使いなのに?」

 タルトの問いかけに、ショコラはふいとそっぽを向く。


「たまには、私だって派手な攻撃魔法を使ってみたいわよ」

「ぜんっぜんイメージつかねえな……」

 杖から炎をほとばしらせるショコラ……を想像してみても、なぜかろくでもない結果ばかり浮かんできそうだ。

「別に、思うくらいいいでしょ!」


「取らぬ狸の皮算用ってやつだな」

「タヌキって?」

「そういうやつがいるんだよ、どっかに」

「さっきの言葉はどういう意味なの?」

「手に入れてもないうちから使い方を考えるなんてばからしい、ってとこだな」

 やれやれとばかりに、タルトは両掌を天井に向けた。


「ここまでの話、全部その皮算用ですね」

 残念、今日もスイートメイツの会議はここで終わってしまった。

作者が好きなマジックアイテムはプラス修正がたくさんつくやつです。

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