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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第6章 いよいよ勇者と共に出発の時です。
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98. 一般的なパレードとは違うかもしれませんが気にしてはいけません。

「どうしたのよ、三人揃って……」


 呆れたように言うロティアの目の前で、俺と小夜、ヴラーデが椅子に座って体を震わせていた。

 自分では分からないが顔も青褪めてるかもしれない。


「い、いや、そのだな、何と言うか、緊張しちゃって……」

「そんなの見れば分かるわよ。何を緊張してるのって言ってるの」

「……パレードってことは、大勢の注目を浴びるってことだろ?」


 声まで震えた俺の言葉に横の二人も首を縦に振る。

 俺は元の世界でも特に前に出るようなことはしていないため、こういう経験は少ない。

 小夜は改善しつつあるようだがこんな性格だし、ヴラーデも普段強気そうな割に意外とメンタルが弱い。

 その結果、無様に三人で震えてしまっているわけだ。


「はぁ? 今更そんなこと言ってるの?」


 しかしロティアには一蹴されてしまった。


「いい? 勇者に指名された時点で、私たちはこの大陸で有名になる運命なの。しばらくはどこに行っても注目を集めるでしょうね」

「で、でも……」

「でも、じゃないわよ。それに醜態を晒してみなさい、永遠にその姿が語り継がれることになるのよ」

「うっ……わ、分かってるわよ……」


 そう、俺も過去の勇者の本を読んだが、誇張したのではないかと思うくらいコメディーと化している部分もあった。

 真偽は定かではないが、逆に言えば俺たちもそうなってしまう可能性がある。それは避けたい、避けたいのだが……


「緊張しちゃうものは仕方ないと思うんだ」

「何開き直ってるのよ……」


 一層呆れられてしまった。


「というか、あなたたち襲撃の可能性忘れてない? 緊張してる暇なんてないわよ?」

「そう言われてもだな……」

「はぁ……もうすぐ出番だし、なるようにしかならないんだから腹くくりなさい」


 今は人為(ひとなり)さんとニルルさんがシサール女王からお言葉を頂戴しているが、全く頭に入ってこない。

 因みに女王様は親子なだけあってディナをそのまま大人にしたような人だった。


「すみません、準備お願いします!」


 心の準備がまだです!

 ……などと言えるわけもなく、パレード用の馬車の御者さんの指示で馬車の上に登る。

 まず先頭に人為さんとニルルさん、ハルカを乗せた馬車、次にフェツニさんたち三人の馬車、最後に俺たち六人の大きい馬車の順になっている。

 この前の一件で俺の奴隷になったカルーカは正式メンバー扱いらしい。そんなカルーカは緊張する様子はなく、むしろ出番を待ちわびているかのように目を輝かせている。

 ついでにキュエレは脳内でうるさくされても困るのでルオさんに新しく追加してもらった機能で黙らせたが、何故か白地に赤いバツマークのマスクが装着された。今もジト目で不満そうにしている。


『それでは、改めて勇者様たちに、そして今回ご同行していただく頼もしき仲間にご登場していただきましょう』


 緊張が全く治まらないまま、ついに出番がやってくる。

 まず人為さんたちを乗せた馬車が外に出ると大きい歓声が聞こえてきた。

 ここからでも三人のようすがかろうじて見える。人為さんはイケメンスマイルをばら撒き、ニルルさんも会釈している。ハルカも手を振って少しでも目立とうとしているな。


 続いてフェツニさんたちが出た時も歓声が湧く。王族なだけあって知名度や人気もあるのだろう。

 時々ネージェさんが小突いていることから、フェツニさんは女性をメインに反応していそうだ。


 そして俺たちを乗せた馬車も動き出す。

 一度外に出れば当然勇者の仲間を一目見ようという視線が大量に集まり、俺たちの頭を白くしていく。


「あれが魔女の弟子……」

「姫って思ってたより小さいな……」

「王女の手料理食べてみたいわ……」

「純人五人組って聞いてたんだけど、あの獣人は誰かしら?」


 など色々な声が飛んでくるが特に反応できず、しばらくぎこちなく手を振るのみであったが、


「ご主人、ぼくの頭を撫でて、ください」


 袖を引っ張ってそう言うカルーカの視線を追うと、少し離れたところに獣人の子供の集団を見つけた。

 なんだろうと思いつつ、半ば無意識にカルーカの頭を撫で始める。


「あれが『獣人堕としの手(ビーストキラーハンド)』……」

「いいなあ……」

「わたしもなでられてみたい……」


 なんか変な二つ名付けられてる!?

 カルーカもあの子たちにドヤ顔を向けるんじゃありません。


 少し落ち着いてきたので手は止めずに周りを見渡すが、やはり人が多いせいで再度緊張し始める。

 小夜とヴラーデも多くの視線を向けられてずっとオロオロしている。

 そんな中、不意に少し遠くからある声が聞こえてしまった。


「女王に踏まれてえ……」


 ……うん、聞かなかったことにしよう。

 しかもあそこらへんの人が全員同意している。お近づきになりたくないな。

 ロティアについて話しているようだが、その中の一人が禁句を口にした瞬間、


「誰だ今『貧乳』っつったの!!」

「ありがとうございま~す!!」


 地獄耳ロティアが【水魔法】で集団をまとめて吹き飛ばした。

 キラキラしているのは水しぶきのせいだと思いたい。


「……っておい! 何ナチュラルに魔法使ってんだ!」

「こうしとけば魔法の襲撃があっても演出だと思ってくれるかもしれないでしょ?」

「周り少しパニクってんじゃねえか。……というかあの集団サクラ?」

「さあ、どうかしらね」


 どうしてそこぼやかすんだよ。


「でも、女王を信奉するドM集団は存在してるらしいわよ?」


 ……ガチかよ。

 そういえば襲撃来ないな。好機を窺ってるのかもしれないし、裏で教会が暗躍してるのかもしれない。


「なんて言ってたら、ほら」

「ん?」


 ロティアが指で示した先、フードを深く被った人物が剣を振りかぶりながら人為さんに飛びかかり、その周りから悲鳴が聞こえた。


「大方一般人に紛れてても攻撃されると焦ったんでしょうけど、悪手よねー」


 人為さんが素手で剣を受け止め、そのスキルによって逆に手に傷を負って怯んだ襲撃者をニルルさんが素早く取り押さえた。


「おお!」

「凄い……」

「流石勇者様と聖女様じゃ……」


 文字に起こせば一行か二行で終わりそうな攻防に、周りもパニックになることなく二人を褒め称えている。


「ほら、何ぼーっとしてるの、どんどん来るわよ?」

「え? ……うぉっ!?」


 ロティアの言葉に振り向けば、次々と飛びかかってくる襲撃者。

 更には矢に魔法も飛んできている。


「……思ってたより多いな」


 それを【空間魔法】での壁を小出しにして防ぎながら呟く。

 裏で意外と暗躍していないのか、それとも暗躍してこの量なのか。


「ヨータ、壁出しっぱなしにできないの?」

「移動中は無理だ」


 攻撃を対処しながら、以前小夜にもした説明をヴラーデにすると納得してくれた。

 観衆に混乱はほとんどないが、ロティアのおかげかは知らん。流れ弾もないし襲われる立場じゃなきゃ魔法が綺麗だし。


 俺たちのところでは俺が矢と魔法を防ぎ、直接登ろうとしてくる人たちは小夜の銃撃やヴラーデたちの魔法で落とされている。

 それでも突破されそうなら俺とカルーカが直接相手するつもりだが、勇者たちの馬車とは少し離れているからかカルーカが暇そうだ。とりあえず頭を撫でておく。

 ついでに何もしてないように見られるのも嫌なので、壁を出す時に手でも向けてみるか。


「あっ、また撫でられてる……!」

「早く片付けて、私たちも、撫でられましょう」

「そうね!」


 何故か女子二名が気合を入れ始めた、俺は小夜たちも撫でるなんて言ってないのに。

 ……期待されているようなので撫でるつもりだけどな。


 さて、フェツニさんたちは……何だあれ、電流の網?

 恐らくだが、ネージェさんが出した糸にサリーさんが【雷魔法】を流しているのだろう。

 おかげで近付こうとする人は皆無。網をすり抜けた魔法はフェツニさんが盾でうまく防いでいる。……何でも持ってるなあの人。

 人為さんたちも余裕を持って対処している。ハルカなんて炎の壁など派手な魔法を連発しているが魔力が尽きる様子はない。


「……誰も馬車そのものを攻撃しないわね」

「ぼくの推測、ですが」


 ロティアの言葉にはカルーカが反応した。


「ぼくの時がそうだった、ですが、命令が『勇者と邪魔者の排除』なので関係ない人や物には攻撃するつもりがないんだと、思います」

「なるほど、邪魔かどうかの判断基準を言われてないから少しでも対象を減らそうとしてる、ってとこね」

「はい」


 なるほど、奴隷として命令されてるから仕方なくやってるだけで、良い人たちなのかもな。

 もしかして例の奴隷を買い漁った人がわざとそういう人を……?

 ……いや、それは俺が考えることじゃないな。


「この分ならゴールまでは十分対応できそうだな」

「陽太さん、それフラグ……」

「別に建築士になった覚えはないんだが?」


 ご都合主義とか強敵フラグなんてものは勇者である人為さんにでも任せておけばいい。

 現に敵もあそこが一番多いしな。


「やっぱり多すぎだろ。どんだけ奴隷買ってんだ」

「奴隷の相場は、知りませんが、これだけの人数を、買えるもの、なんでしょうか?」

「どうなんだ、ロティア?」


 俺も以前店に行った時値段は全く見てなかったからな、相場は全く知らん。


「そうね……裕福な家どころか、由緒正しき上流貴族くらいじゃないと難しいでしょうね。冒険者なら最低でもランク10ってところかしら」

「最低でも、か」

「あとはその人の収入と支出次第ね」


 そうすると結構絞られる気もするが……


「そもそもどうしてロッピーニって奴に協力してるんだろうな」

「さてね。それはその人を捕まえてから聞けばいいことよ」

「それもそうか」


 そんな会話をしているうちに、王都の門も近付いてきている。


「何にせよ、あの門を出ればパレードも終わり、あともう一踏ん張りだ」

「それがそうともいかないのよね~」

「ん?」

「ロッピーニの潜伏先が分かってない以上、警戒を解くわけにはいかないわよ?」

「……あ」


 すっかりパレードの終わりがゴールだと思い込んでいた。


「そしてこういう場合って大概外に出ると……」

「おいどうしてそこで黙る」

「ロティアさんまで、どうして、フラグを、建てるんですか……」


 どうかそのフラグが回収されませんようにっ!

次回予告


陽太  「って終わり方だと絶対フラグ回収するよな……」

小夜  「ああ、陽太さんが遠い目を……」

陽太  「もう諦めよう……」

小夜  「でもそんな陽太さんも……」

ロティア(遠い目と恍惚が並んでる……)

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