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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第6章 いよいよ勇者と共に出発の時です。
95/165

95. 実力を披露しましょう。(中)

「さて、僕も何かした方がいいんでしょうかね」


 俺とハルカの手合わせを見届けた人為(ひとなり)さんが――


「ってちょっと待ちなさいよ!」


 と、急にハルカが叫んだが、一体どうしたというのか。


「あたしは? あたしの出番は!?」

「出番? 何を言ってるんだ、つい今さっきまで俺と戦ってただろ」

「そうだけどそうじゃなくて!」


 何を言ってるんだこいつは?


「ハルカも強かったぞ? エルフだけあって属性魔法を何種類も使えるし、流石に無詠唱とか同時にってわけにはいかないみたいだが威力も精度もバッチリ。近接戦に弱いけどそこは俺たちでカバーすればいいし、何の問題もない」

「いやああぁぁぁ簡潔にまとめないでええぇぇぇ!!」


 大粒の涙を流すハルカ。褒めているというのに何が不満なんだか。


「なんでよ……そもそも本編でメタなことはしないって聞いてたのに……なんであたしだけ回跨ぎでカットされるのよぉ……」


 言動も別次元に行ってしまったようなので、手と膝を着いて泣いているハルカは放置して話を戻すことにする。


「人為さんまで無理に乗っかることはないぞ?」

「無視!?」

「でも、僕ができることの説明をしてないですからね」

「人為様までぇ!!」


 因みに善一(よしかず)たちが省かれてるのは正式メンバーじゃないからだ。

 ニルルさんも地味に厳しいお人であるが、後で勝手に見せるのは構わないと言ってくれただけ良い方だと思う。


「……え、待って、地の文でも触れてくれないの?」

「この前のってなんだっけ?」

「何がだ、ヴラーデ?」

「ほら……ジョットたちと戦った時のあれ」

「体が、重くなった、魔法ですね」


 あ~、あれな。


「【光魔法】の……なんだったっけ?」

「[聖域(サンクチュアリ)]です」

「そうそれ」


 何故か人為さんより早くニルルさんが答えたが触れないでおこう。


「当然他にも色々できますよ」

「例えば?」

「そうですね……ところで、あれどうしましょう?」

「……あれは流石にやり過ぎだな、とりあえず転移っと」

「ぷはっ! げほっげほっ!」


 今の会話の後ろで、ロティアとフェツニさんがハルカを捕まえて縛り、【水魔法】で作った池に放り込んでいた。

 動機は『訳の分からないことばかり言ってうるさかったから』らしい。

 魔法を使われないようになのか口も何かで抑えられていたのだが、転移の時に縄と一緒に外れたっぽい。


「あ~、死ぬかと思った……」

「メタ発言には気を付けような?」

「うん……あれ? 今……」

「おっと」


 俺も毒されてしまったかもしれない。気を付けねば。




「改めて説明しますと、【光魔法】は勇者専用のもので、基本的に光を操ることができますが、聖剣を媒介に回復魔法や[聖域(サンクチュアリ)]など特殊な魔法を使用することもできます」


 あれ聖剣必須のスキルだったのか。でも考えてみれば光の領分は超えている気がしないでもないな。


「【光魔法】単体でも、光線を発射したり、幻像を出したりと戦闘に困ることはないですね」


 割とチートじゃね?

 俺も【空間魔法】で[太陽光線(ソルレーザー)]を撃てるが、準備に時間がかかるし太陽が出てないと使えないなど欠点が多すぎて使いどころが滅多にない。

 それが【光魔法】だと魔法として光線を出すから手間もかからないし屋内でも使える。

 ……完全に上位互換だこれ。必殺技っぽい感じだから気に入ってたんだが、この分だとキュエレごと出番は少ないな。


《しょぼん……》


 ごめんて。


「幻像って?」


 そんなことを考えている間にヴラーデが疑問を素直に尋ねていた。


「こういうものですね」

「うわっ! ヨータが出てきた!」

「……いえ、立体映像、ですね」


 結局あんたも俺をネタにするんかい。

 人為さんが出したのは俺の幻。唐突に現れたそれにヴラーデは驚き、小夜は躊躇なく触ろうとして空振っていた。


「はい。ただ、出現させるだけでもかなり難しいので動かせはしないんですがね」


 その言葉通り直立姿勢のまま動く気配はなく、髪や服が風に揺れるなんてこともない。

 時間が止まっているかのような俺の幻を小夜とヴラーデが好奇心丸出しで色んな角度から観察している。無駄に恥ずかしいからやめてくれ。


「ふっ、細部が甘い、ですね」


 しかも小夜は勝ち誇った顔でそう告げやがった。


「まあ、咄嗟の目晦まし程度ですからね。今はこの姿勢ですが、出現させる時に姿勢を指定することはできますよ」


 流石の人為さんも苦笑いで流す。


「なるほど……どんな姿の、陽太さんでも、再現できそうで、羨ましい、ですね」

「いや無理に俺の流れ続けなくていいからな?」


 その流れで行ったら、幻の俺が変な格好やポーズをさせられてしまう。主にロティアあたりに。


「あら、また何か失礼なこと考えてない?」


 視線すら向けてないのに、こいつ……!


「少し話が逸れましたね。さっきとは逆に姿を消すこともできますが……聴覚や嗅覚などは誤魔化せませんし、少しでも動いてしまうと解けてしまうのであまり実用的ではないですね」


 透明人間にはなれないのか。意外と【光魔法】も便利ではないらしい。


「【光魔法】についてはこのくらいにして――何か来ます!」

「えっ?」


 俺たちが一瞬唖然とする中、人為さんが前に出ると、そこに飛んできた何かを剣で弾いた。

 あれは……短剣?


「危なっ!!」


 くるくると回転しながら飛んでいた短剣がロティアの足元に刺さるのを見て、ようやく俺たちも戦闘態勢に入るが、


「丁度いいですし、ユニークスキルの実例のご紹介にしましょう」


 人為さんのその言葉にフェツニさんやサリーさんに続いて俺と小夜も最低限の注意のみに抑える。


「えっ? 何、どうしたの?」


 ヴラーデたちは戸惑っているようだが……そうか、人為さんのユニークスキルを知らないのか。


「見てれば分かると思うぞ」


 人為さんの視線の先に現れたのは二人の女性。

 一人はまるで忍者のような服装で、その茶色い耳と尻尾から猫の獣人であることが分かる。顔も目より下が隠れているが、目の大きさや身長の低さからして成人しているかも怪しいくらいの女の子。

 もう一人は気を失って獣人の片腕に抱えられたシスター、恐らく人質だろう。

 相手の出方によっては俺たちも加勢しないといけないかもしれないが、一旦様子を見ることにする。


「勇者ヒトナリ、ですね」

「如何にも」

「あなたに恨みはない、ですが……我が主の命により、その命を奪わせていただ、きます」

「その方の無事は?」

「抵抗しなければ保障、します」

「……分かりました」


 獣人の言葉に人為さんが剣を捨て、腕を横に広げて受け入れる姿勢をとる。

 どうでもいいが、語尾が途切れるくらいなら無理に丁寧な言葉遣いしなくても良いのに、と思ってしまった。


「ちょっと、大丈夫なのあれ!?」

「落ち着け。無理に入るわけにもいかないだろ」


 このままでは人為さんがが殺されてしまうと小声ながら強く訴えるヴラーデをなんとか抑える。

 その間に獣人はシスターを抱えたまま人為さんの前まで歩いて立ち止まる。


「それでは、失礼、します!」


 その言葉と同時、動いたのは人質だと思っていたシスター。素早く人為さんの後ろに回って短剣を首に深く通らせる。

 獣人の方も左肩から斜め一直線に逆手に持った短剣で斬りつけていて、普通の人間なら間違いなく即死だっただろう。


「っ!?」

「ぐふっ!」


 しかし、次の瞬間シスターの首から血が勢いよく吹き出し、獣人も黒い服に血を滲ませながらその場に倒れた。

 一方人為さんは服が斬られているがその下に見える体は無傷、首も無事に繋がったままだ。


「え? 何が起こったの?」


 全く動かずに攻撃を受けたはずの人為が無事で攻撃を仕掛けた二人が倒れる光景にヴラーデが戸惑う。


「これが僕のユニークスキル、【的確な反撃(アキュレートカウンター)】です。ご覧の通り、受けた攻撃をそのまま相手に跳ね返す能力です」


 勇者だから当然かもしれないが、やっぱりその能力チートだと思う。

 ただ、以前は軽く確認しただけだから気付かなかったが、服は守れないのか。


「ニルル、獣人の子は回復させて尋問を、こっちは然るべき処理をお願いします」

「かしこまりました」


 ニルルさんはまず無詠唱の回復魔法で獣人を回復させる。


「[罪人の十字架(クルーシフィクション)]」


 次の魔法を唱えると宙に浮かぶ十字架が出現し、気絶している獣人を引き寄せて磔にした。

 手足の先が完全に埋まっているので簡単に脱出は出来なさそうだ。絶対にお世話になりたくない魔法だな。


「[聖炎(セークリッドフレイム)]」


 首を負傷し動く気配のないシスターを青白い炎が燃やし尽くす光景は、ただの火葬というより浄化しているように見えた。

 一見攻撃にも使えそうだが、威力そのものは強くなく、あくまで死人やアンデッドを浄化するための魔法だそうだ。


「あのスキル凄いわね。ヨータたちが焦らなかったのも納得だわ」


 ニルルさんが準備を整える中、ヴラーデがそう言った。


「まあシスターが人質じゃなかったのは驚いたけどな」

「完全に、不意討ち、でしたが、それすら、防ぐとは」

「そういうスキルですから。ただ、あのシスターがここの者ではないことには気付いていましたよ」

「マジで?」

「そうなの?」

「はい。僕もここに住んでいますからね、全員の顔と名前くらいは記憶しています」


 ということは人質と見せかけて攻撃してくることを見抜いていたわけか。


「ふふん、どーよ、人為様ってば無敵でしょ?」

「そうとも限らないわよ?」

「むっ、なんでよ」


 ハルカの自慢を否定するように、ここまで黙っていたロティアが口を開く。


「別に直接攻撃しなければいい話だもの。極端な話、どこかに監禁して餓えさせたりとかね」

「うっ」


 確かに。防御チートだと思って深く考えてなかったから気付かなかった。


「それに、さっきはどうして短剣を弾いたのかしらね?」

「突然の事でしたからね。普段は服や装備を傷つけないように対処していますから」

「まあ、そうよね。……でも、な~んかそれだけじゃない気もするのよね~」


 その言葉に人為さんは微笑んだまま何も返さない。


「まだ情報が足りないから予想の域を出ないけど、もし当たっていればそのスキルの弱点って結構あるんじゃないかしら?」

「……怖い人ですね」

「あら、褒めても何も出ないわよ?」


 褒めてねえだろ、とはとてもツッコめない雰囲気をどうしようか考えていると、


「すみません、準備が整いました」


 ニルルさんが準備を終えたらしく、人為さんのスキルの件は置いといて獣人に対する尋問が始まることとなった。

次回予告


小夜「えっと、実は、この獣人は、初登場ではない、という情報が、入ってます」

陽太「……マジで?」

小夜「教会にいた、獣人ではない、らしいですよ」

陽太「この小説は色々と描写省いてるからそれだけで絞れそうだな」

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