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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第6章 いよいよ勇者と共に出発の時です。
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93. 顔合わせをしましょう。(後)

 いつもなら数分で戻ってくるはずのロティアだが、今回は珍しく十分以上経っても戻ってこなかった。


「どうしたのかしら……」


 流石に心配になってきたのか、ヴラーデが呟く。


「別に元気そうではあるが……位置も分かるし、呼んできた方が良いか?」


 こういう時にGPSみたいに使える俺のユニークスキルは便利だ。

 ただ本当は召喚するのが手っ取り早いのだが、周りに人がいると騒ぎになりかねないので直接行かないといけない。


「そうね、私たちも行った方が良いかしら?」

「う~ん……あれ、こっちに向かいだしてる?」


 暴走していた時のためにヨルトスは連れていこうか、などと考えていたらロティアとの距離が縮んでいくのを感じた。


「となると……一旦待つことにして、こっちに来る様子がなければ迎えに行くか」




 数分後。


「ただいま~!」


 ここを飛び出した時の様子は幻だったのかと思うくらい明るい表情でロティアが帰ってきた。


「途中でここに向かってる人たちに会ったんだけど、あんたたちの知り合い?」


 呆れる俺たちを見ようともせず、人為(ひとなり)さんたちに尋ねる。


「……何名でしょうか?」

「三人よ」

「髪の色は男性が赤、女性が青とピンクではありませんでしたか?」

「入れてもよさそうね。呼んでくるわ」


 ニルルさんと言葉を交わしたロティアが再び出ていく。

 ……というか、その色の組み合わせは昨日まで見ていたこともあって心当たりしかない。

 ロティアの様子と性別からしてあいつらではないだろうが、ほぼ間違いなく関係者だろう。

 案の定、入ってきたのは……


「あ~やっと入れたぜ……」

「待たせてしまって申し訳ないな」

「大体フェツニのせい。死ね」

「目が冷たい!」


 最初と最後が赤い髪の男性。爽やかというより荒々しさを感じる美形で、細マッチョな体は十分に鍛えられていそう。

 二番目はピンクの髪の女性。ツリ目がちな表情は凛としていて、高い背に佇まいや装備は俺的に騎士のイメージ。

 三番目が青髪の女性。怠そうな目のせいか表情が乏しそうに見える。杖を装備しているので魔法使いだろう。背が低く童顔なので他の二人より幼く見えるが、会話や雰囲気的には同年代っぽそうだ。

 ……ていうか『死ね』て。


「お待たせしました、こちらのお三方は――」

「お! こっちにも可愛い娘いんじゃん!」


 ニルルさんの言葉の途中で男性が小夜とヴラーデの前へ。

 油断していたのか目で追えない速さだった。


「俺はフェツニっていうんだ! 可愛いお嬢さんたち、良かったら今晩一緒にメシでも行かない?」

「「へ?」」


 ……は? 何その唐突なナンパ。


「ほら、奢るからさ。好きなもん食っていいぜ?」


 話を遮るどころか、驚く二人に声を掛け続ける光景は見ていて不愉快だ。


「あ、名前聞いてなかったな! お二人さん、名前は?」

「ヴラーデです……」

「サヤ、です……」

「よし! じゃあヴラーデちゃんにサヤちゃん、改めて今晩食事でもどごぉっ!?」


 そろそろ割って入ってやろうかと身を乗り出すと、それより先に男性の頭に何かが叩き付けられた。


「フェツニ」

「……何でしょうかネージェさん」

「話ぶった切って何してんの?」

「……食事のお誘い?」

「はぁ……ちょっと来て」

「え? いやもっと話進まなく――」

「来い」

「はい」


 杖の先の魔石で叩いた青髪の女性が男性を連れていくのを、理解が追い付いてなさそうな小夜たちが苦笑いで見送る。

 二人の姿が見えなくなると、大量の殴打音と男性の悲鳴らしき声が聞こえてきた。

 前に出ようとしたままだった体を戻すと、ニヤニヤするロティアが目に入った。


「……何だよ」

「いんやぁ~? べっつにぃ~?」

「ムカつくからその顔と口調やめろ」


 っつーか何で俺はイライラしてんだ。

 あれか? これから自己紹介って時にナンパ始めやがったからか? ……何か違う気もする、分からん!




「悪かったな、二人共」


 鈍い音がしてた割に無傷の男性が小夜たちに謝る。

 改心させられたのか、その目は小夜たちに対する興味が薄いように感じ、俺のイライラもどこかに消えていく。


「んじゃ改めて自己紹介。俺はフェツニ・ソーラ・スギア、あんたらにはジョットの叔父って言った方が分かりやすいか?」

「ああ、ディナたちがお世話になったんだったな。私はサルレーヴェ・レヤル・シサール、ディナの叔母だ。サリーと呼んでくれ」

「……ネージェ・ジルト・トーフェ。ロイの叔母」


 やっぱり王族だった。予想ができていただけに驚きはないに等しい。

 俺たちも名乗った後、ニルルさんが呆れた様子で話し出した。


「それで、遅れた理由はやはり……」

「そう。フェツニのいつもの癖」

「またですか……」

「私も止めてはいるのだがな……」

「ホントごめんって」

「『いつもの癖』とか『また』って?」


 会話の内容にヴラーデが素直に疑問を口に出す。


「こいつ、片っ端から女に声を掛けまくる」


 答えたネージェさんの表情はあまり変わっていないが、それでも怒りが強いことだけは分かった。ぶっちゃけ怖い。


「いやネージェ、流石にそこまでは……」

「じゃあ、今日ここに来るまで、声を掛けた人数は?」

「え? 一、二、三……」

「数える時点で罪は重いと知れ、クズが」

「すんません」


 うん、今の二人の会話で大体察しが付く。


「とはいえ、いつも時間は守るのだがな」

「今日は時間を指定しませんでしたからね……」


 だが、サリーさんとニルルさん曰くそこまで酷いものではないらしい。


「ロティア殿と会ってなければもっと遅れたであろうな」


 あ、だから三人を引き連れてたのか。


「じゃあ、もしかして帰りが遅かったのも……」

「ええ。最初に私を見るなり心にもない口説き文句を言ってきたから股間を蹴り上げて――」

「おいちょっと待て」


 さらっとほとんどの男性が震えあがる発言したぞこいつ。

 フェツニさんは動きやすさ重視なのか硬い防具を着けてないし大ダメージだと思うんだが?


「何?」

「何っておま……いいや、続けて」

「で、ここに向かってるって話を聞いたから一緒に行くことにしたんだけど、半定期的に発作が起きるものだからここに来るのに時間がかかったってだけよ」


 発作て。


「話は分かった。ニルルさん、これで全員ですか?」

「はい。次はそれぞれ実力を見せ合う予定でしたが……もう昼食の時間ですね。只今準備の方を――」

「ニルル殿」

「はい?」

「ここはヴラーデ殿に頼んでみては如何だろうか」

「え、私!?」


 サリーさんから急に振られてヴラーデが驚く。


「料理の腕前は噂で聞いているのでな。楽しみにしていたのだ」

「え、でも……いいんですか?」

「うむ、是非味わわせてもらおう。皆も異論はないな?」


 当然そんなものは誰にもなかった。


「う……わ、分かりました、作ります。厨房はどこですか?」

「案内致しますのでこちらへどうぞ」

「じゃあ他の皆は食堂ね。こっちよ」

「リオーゼ、君はお手伝いしてこようか」

「了解です、ヨシカズ様」


 あ、リオーゼさん家事メインって言ってたな、なんてハルカの案内を受けながら思った。




 しばらくして三人が全員分の料理を持って食堂にやってきた。

 流石に十四人分ともなれば持ちきれるわけがないからなのか、それぞれがワゴンに乗せて運んできたので全員で協力して机に置いていく。


「というかリオーゼさんって食事もできるんですか?」

「料理のために味覚を付けて、食べてそのまま出すのも勿体無いので中で細かく砕いて魔力などの動力として取り込めるようにしてあります」


 何でもありかよ。一応アンドロイドって話だったはずだが、人造人間の域じゃないだろうか。


 既に何人か座っていたが、改めて一つの長机に全員で席に着く。

 片側がヨルトス、ロティア、ヴラーデ、俺、小夜、善一(よしかず)、リオーゼさん。

 反対がヨルトスの対面からサリーさん、ネージェさん、フェツニさん、ハルカ、人為さん、ニルルさん、ルオさん。

 誰かが口出ししたわけではないんだが……まあ、普段一緒のメンバーで固まるよなそりゃ。


 そして、その料理を一口食べれば……


「うっっっっっっっっっまあああぁぁぁぁぁぁ!!」

「ふむ、噂通り……いや、噂以上だ!」


 フェツニさんとサリーさんは大絶賛。


「そういえば初めて食べました! リオーゼ、この味を再現できるよう努めなさい!」

「了解です、味覚情報を登録しておきます。先程の調理風景も保存してありますが、どうしますか?」

「よくやりました!」

「しかし、完璧に同じ手順を辿ってもこの料理には遠く及ばない計算なのです。何故でしょうか?」

「な、そんなことが……」


 ルオさんはリオーゼさんに同じクオリティを求めるが、どうやら不可能らしい。

 ヴラーデの料理の腕前は完全に常識の範囲外にあるようだ。


 他も口に出さないものの、ネージェさんは目を輝かせて黙々と、ハルカは最早喋るのも惜しい勢いでガツガツと、残り三人も驚いた表情だがその手は止まっていない。


「く~~、お前ら普段からこんなの食ってんのか! 幸せ者だなあ!! 将来の結婚相手も羨ま――いてっ! ちょっ、普通に褒めただけじゃねえか!」

「うるさい、黙れ」

「今回は違うのに!?」


 いや、それ以前に隣で騒がれたらウザくて肘を叩き込みたくもなると思うのだが。


「う~ん、やっぱり……」

「あ、サヤもそう思う?」


 そんなフェツニさんとネージェさんのやり取りを見て、よく分からない会話が俺の両隣で始まる。


「ヴラーデさんも?」

「ええ。……どう、ロティア?」

「まあ、合ってると思うわよ」


 何の話だよ。


「でもそれだけじゃないけどね」

「え?」

「まだ何か……?」

「あ~流石にそこまでは気付かないか。じゃあ伏せておくわ。その方が面白そうだし」

「うっ、気になる……」


 だから何の話だよ。


《いいな~わたしも食べてみたいな~》


 そしてお前は勝手に混ざるな。

 スマホから出れないし、出れたところでこいつ食事できるのか?




 当然全員残さず食べきり、後片付けをニルルさんがシスターたちに頼んで……って、いたのかシスター。いや紹介がなかっただけでいないわけないか。

 ともかく、俺たちは互いの実力を見せ合うため、裏庭にやってきたのだった。

次回予告


キュエレ《わたしは紹介してくれないの?》

陽太  (お前自分の立場忘れたのか?)

キュエレ《そうだけど~、魔人って言わなきゃ普通の女の子でしょ?》

陽太  (普通の女の子はスマホに入れません)

キュエレ《む~……っていうか出番ちょうだいよ~》

陽太  (知るか、作者に言え)

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