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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第5章 異世界に学園ものは付き物でしょうか?
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87. 試験を見守りましょう。(後)

「では、行ってきますね」

「おう!」

「頑張ってね」

「……あ、その前に」


 二人に送り出されるディナだったが、ふとその足を止めてこちらに振り向く。


「先生、優勝したら私のこともちゃんと呼んでくださいね?」

「……はいはい、分かったよ」


 だからそういうんじゃないんだけどなあ。




『さぁ~皆さん、最終日の総合部門が始まりますよぉ?』


 案の定司会は三人目だが……今日のは口調がゆっくりだし若干甘ったるく感じる。

 それは置いといて、総合部門は戦闘部門と同じ形式で行う。風船を割るのも一緒だ。

 ただ、今までと違ってそんなに選手が多くないので最初からトーナメント。

 ついでに魔法などがありな分、負傷もしやすいので今までより厳重体制である。


 出場している選手も様々で、魔導具使いや魔法道具(マジックアイテム)使い、魔物使いなどもいた。

 魔導具使いというのはその名の通り魔導具で戦うスタイルだ。スキルの適性に縛られないので便利だが、魔導具の購入やメンテナンスなど必要な手間とお金が多い。

 司会の紹介を聞いても親が冒険者だったりする人が多いし、多そうで多くないタイプだな。

 魔法道具(マジックアイテム)使いもダンジョンから得られる魔法道具(マジックアイテム)で戦うもので、やはり購入や入手が難しいために数は多くない。

 魔物使いだが、この世界にはテイム系のスキルがない――少なくとも確認されてはいない――ため自力で魔物と心を通わせなければならず必然的に数が少なくなる。それに人々の理解も深まっていない地域もあって何かと苦労すると聞いた。一応冒険者ランク10+に竜騎士がいるらしい。


「ってことは一応俺や小夜は魔導具使いってことになるのか?」

「ヨータは【空間魔法】があるから微妙だけど、サヤちゃんはそうなるわね。ただ、一般的に魔導具使いは数多くの魔導具を使うからサヤちゃんみたいなタイプは珍しいと思うわ」


 ロティアの言う通り、戦っている選手も二種類か三種類以上は使っていて戦法が幅広そうだ。

 それだけ親が冒険者として稼いできたのだろうか。まさかラノベみたいに子供の頃から無双してるなんて滅多にないだろうし。


 そしてディナの初戦。開始と同時に相手が力が抜けたようにぼーっと立ち尽くし、何の反応もないままディナが風船を割っていった。

 全ての風船が割られてから正気に戻った相手は訳が分からなさそうにしている。

 ……改めて思ったが、【精神魔法】怖え。


「そういえばさ、【精神魔法】の扱い上手くなったよな」

「え?」

「いや、対象を絞れるようにもなってるし、効果も上がってる気がするんだよな……ってどうしたお前ら」


 何故か全員から『何言ってんのコイツ』みたいな、変な目を向けられた。解せぬ。


「なあ、どうしたんだよ?」

「え? さ、さあ……な、なんでもないわよ。ねえ?」

「そそ、そうだぜ」


 こういう時はボロを出してくれそうな赤髪二人に聞くに限る。案の定目は逸らすし声が震えている。


「ちゃんと俺の目を見て言ってくれよ。本当に、なんでも、ないのか?」


 二人に近付きながらゆっくり問い掛ける。二人共冷や汗たっぷりだ。


「ほ、本当よ! 図書館でヨータを眠らせたりなんかしてないんだから!」

「ああ! ディナの魔法の練習相手になんてしてないぜ!」

「へぇ~……教えてくれてありがとう」

「「……あ」」

「「……バカ」」


 追い詰める前にあっさり自供し、青髪二人が溜め息を漏らす。


「どおりで気付いたら寝てることが多いし異様に寝相が悪かったわけだ。どうせ黒幕はロティアだろ」

「『どうせ』って何よ。まあその通りだけど」


 ぶっちゃけこの中でやりそうなのはお前だけなんだよ。


「ま、いいさ」

「あら、もっと怒るかと思ったのに」

「いや怒ると思うならやるなよ」

「てへ☆」

「……殴っていいか?」

「殴ってから言わないでほしいわね」


 涙目なロティアの頭にたんこぶが生えた。


「ともかく、魔法の練習のためなんだろ? 結果として上達はしてるし相手になるくらいは構わねえよ」


 あのお姫様は酷いことはしないだろうし。


「ただ、勝手にやるのはどうかと思うが」

「それじゃあ抵抗されるじゃない」

「抵抗するようなことをやらせようとしたのか?」


 もう一度殴ろうと拳を構える。


「いえ、受け入れようとしても無意識のどこかでは抵抗してしまうものよ。だから練習していることを知らないヨータを相手にしていたの。無断になってしまったのは謝るわ」


 しかし割と真面目な話が帰ってきて拳を止める。

 それっぽい話を述べただけに聞こえなくもないが、完全に否定するには知識も話術も足りない。


「はあ……」


 溜め息を出すしかなくなった俺は次の標的に意識を向ける。


(キュエレは知ってたのか?)

《うん!》

(……教えてくれても良かったと思うんだが?)

《だって、聞かれなかったし♪》


 さいですか。確かに普通に寝ただけだと思ってたから聞かなかったけども。

 結局、行き場のなくなったこの拳は……


「完全に丸く収まる流れだったじゃない……」

「日頃の行いだ」


 ロティアのたんこぶを二段重ねにするのであった。




 さてディナの方だが、多少の抵抗なら無視しているのか【精神魔法】で次々と相手をフリーズさせ余裕で勝ち進んでいる。

 逆に子供に【精神魔法】に抗えるほどの実力を期待する方が難しいよな。

 一度魔物使いとも当たったが、魔物が主人の風船を割るという結果に終わった。後で聞いたらディナと対戦相手の認識を逆にしたらしい。


 しかし決勝、魔導具使いの相手が【精神魔法】を防ぐ魔導具を持っていたらしく、今までの戦法を諦めたディナが狂戦士モードになった。


『因みになんですけどぉ、あの状態のディーナ姫って意外と人気がありましてぇ、普段の優しさとのギャップが良いというものからぁ、踏んでほしい蹴ってほしいというドM全開なものまでぇ、様々なコメントが寄せられていますぅ』


 ……マジでか。大丈夫かそいつら。まあ、将来は国を治めるわけだし人気がないよりはいいんだろうけど。

 戦闘の様子だが、ここまで順調だったディナが不利。相手の魔導具が周囲に風の刃を撒き散らしていて、接近戦がメインのディナが思うように近付けず風の刃を避け続けている。

 このままだとディナの狂戦士モードが解けるのが先か、相手の魔力切れが先かの勝負になる。


『あっ、ディーナ姫が元に戻りましたぁ、これは絶体絶命でしょうかぁ?』


 先に変化があったのはディナ、狂戦士モードの表情がなくなり、いつもの優しい雰囲気を身に纏う。

 しかし上がっていた身体能力も元に戻ってしまったディナが容赦ない風の刃を避けきれるはずもなく、風船が何個か割れ体に切り傷ができる。


「「ディナ!」」


 ジョットとロイも心配そうな声を上げる。

 流石に分が悪いと思ったか、ディナが後ろに跳び下がって距離を空け、一瞬攻撃が緩んだ隙に再び狂戦士と化した。

 良かった、なんとか持ち直せた。二人も少し安堵している。


 しかし持ち直したところで状況は良くならない。相手に近付けずに風の刃を避け続けるのが再開されるだけ。

 その後も度々ディナの狂戦士モードは解け、少しずつ風船が割られていく。毎回ちゃんと持ち直せるだけ凄い方だろう。


 とはいえそれもいつまでも続けられるわけではない。

 ついにディナの風船は残り一個になってしまった。次に狂戦士モードが解ければ攻撃を避けきれず最後の風船が割られてしまうことだろう。

 だが相手の表情もつらそうだ。魔力切れが近いのであれば、もうすぐ底をついて魔導具を動かせなくなりディナの勝利がほぼ確定する。


 頼む、あと少しだけもってくれ……!


『おっとぉ? ディーナ姫が先に限界を迎えましたぁ!』


 その祈りは届かずディナの狂戦士モードが解ける。もう無理か……!


『そこに容赦ない刃の嵐が……来ないですねぇ?』


 しかし風の刃を出し続けていた相手の体が、ぐらりと前に倒れた。


『どうやらこちらも限界だったようですぅ! そして今、ディーナ姫が風船を一つずつ割ってぇ、チャンピオンの座をかろうじて勝ち取りましたぁ!』

「よっしゃあ!」


 ジョットの喜びに合わせて俺は安堵の息を漏らす。

 ……危ね~、ホントギリギリだったな。とにかく、ロティアによるお仕置きは回避……ちょっと残念そうな表情するのやめろ。


 因みに、ディナの【精神魔法】によりなす術なく敗退した人について、成績が付けられないので後日別の試験を行うらしい。

 うちのクラスが全部門でやり直しを発生させてしまって申し訳ない。




「やったな、ディナ!」

「最後、本当によく頑張ったと思う」

「ありがとうございます、二人共」


 戻ってきたディナはジョットたちと簡単に言葉を交わすと俺の前にやってきて微笑む。

 何を求めてるのか分からない俺ではないが、なんとなく目を逸らしてしまう。


「優勝おめでとう、……ディナ」

「はい!」


 ディナは満面の笑みで応える。この世界の美人率に慣れていなかったら惚れていたかもしれない。


「でもつまんないわね。折角ディナちゃんの【精神魔法】でヨータにあんなことやこんなことをさせる計画立ててたのに」


 ……こいつはまた変なこと考えやがってたのか。三人共優勝できて良かったよホントに。


「もう何でも良いから遊ばせてくれないかしら?」

「いやふざけんなよ?」

「くっ、こうなったら……行きなさい、ヨルトス!」


 どうしても俺のことを捕まえて弄びたいのかヨルトスに命じたが……


 スパァン!


「にゃっ!?」


 どこから取り出したのかヨルトスのハリセンがロティアの頭に炸裂し、目を回して気絶。


「……すまない、最近暴走し足りなかったようだ」

「こいつ定期的に暴走させなきゃダメだっけ?」


 というか普段から割と暴走してる気もするんだが。

 起きた時に面倒にならないよう、ロティアの体をきつく縛っていると、


『えぇ~皆さん、少しよろしいでしょうかぁ?』


 突然、司会の声が響く。表彰も既に終わっているのだが、まだ何かあるのだろうか。


『実はなんとぉ、勇者であるヒトナリ様にお越しいただいておりましてぇ、只今よりエキシビションマッチを行うことになりましたぁ!』


 え、居たのあの人? 全然知らなかった。

 対象は各部門で優勝した三人ということで、ジョットたちが観戦部屋を出る。

 三人の連係もかなり上手くなっているが、相手は勇者だ、恐らくとんでもなく強いはず。果たしてどこまでやれるだろうか。

次回予告


人為「ふふ、作者から出番を勝ち取ってくることができました。これは頑張らないとですねえ」

陽太「ゲームだったら三人が優勝した時限定の隠しボスだよな」

小夜「恐らく、正規ルートは、陽太さん対、ディナさんたちで、好きな方を、選べそうですね」

陽太「たまに見かける勝敗関係ないイベントな」

人為「……何の話ですか?」

二人「「作者の妄想の話」です」

人為「……」

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