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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第5章 異世界に学園ものは付き物でしょうか?
83/165

83. そろそろ一度はっきりさせておこうと思ったんです。

 結論から言って、三人の連係はダメダメだった。

 まず、ジョットがガンガン相手に突っ込んでいくので、ロイが魔法による攻撃を行えない。

 ロイも少しの隙間に魔法を撃とうとしているが、それで一度ジョットに当たってしまった。

 そしてディナ。使える魔法が攻撃するものではないので通常モードで協力ができないのは仕方ないが、狂戦士(バーサーカー)モードになった時、ジョットと攻撃のタイミングが重なって互いの武器を打ち合ってしまうことが度々あった。

 酷かったのは【精神魔法】を使った時。俺が耐えれたのに二人が棒立ち状態になってしまった。お前らがかかってどうする。


「簡単にまとめると、初めて一緒に戦っただろ」

「「「……」」」


 無言であることとしゅんとしたその表情で図星であることは明らかだ。

 これはやることが増えたな。戦闘面での連係もそうだし、ディナは【精神魔法】の対象を絞れるように、二人も慣れさせて耐性を上げないと。

 ……どれからやろうか。特に筆記も問題児なジョットの課題が多すぎる。




 というわけで、やることが決まったこの日からは同じような内容の授業を繰り返すことになる。

 俺は戦闘面や連係、小夜は全体的な補佐以外に銃撃を避ける訓練もさせている。ロティアとヨルトスはジョットに座学をさせたり他二人の魔法も見てくれている。

 五日に一度の休日には図書館でルナについて調べているが、行動範囲が広すぎてどこに居そうかのヒントにすらならない。

 因みに『魔女』『月の魔女』『彼女』と称されることが多く『ルナ』という名前が一回も出てこない本がほとんどな印象で、出てきたのは俺が読んだうちの数冊くらいだろうか。

 ところで何回かに一回気付いたら寝てる。そろそろ一回くらいちゃんと休まないとダメだろうか。


 で、今日は休日なのでいつも通り図書館に向かおうとしたが、


「陽太さん、すみませんが、今日は、別に用事が、あるので、お手伝いできません」


 小夜と一緒の時は互いに見解を言い合ったりしているのだが、今日はこう言われてしまった。


「そうか。気を付けてな」

「はい」


 別に強制していることでもないし、小夜に用事があるのなら仕方ない。

 ロティアとヨルトスは別のことを調べてるみたいだし、ヴラーデは相変わらず料理の特訓。

 ……大人しく一人で図書館に行くか。




 ―――――




 小夜はディナたちの部屋を訪れていた。

 生涯を共に暮らす三人は部屋も一緒らしく、広く豪華な部屋なのにベッドが大きなもの一つしかないところを見るに寝るのも一緒なのだろう。


(着替えも隠さなかったりするのかな)


 ふとそんな疑問を抱いたが、すぐに気にするのをやめて、


「それで、ディナさん、ジョットさん、ロイさん。お話とは、なんでしょうか?」


 目の前の三人に尋ねる。昨日の授業終わりに話があるから来てほしいと頼まれたのだ。

 そのせいで陽太と一緒にいられずに若干イライラしている。


「……の前に、ヴラーデさん、いつまで、そうしてるん、ですか」

「だだだだって、おお、おおお王族よ?」

「……はあ」


 小夜の隣には体を緊張させて震わせるヴラーデ。あまり三人と会っていないために接するのに慣れていなかった。

 そんな自分が何故呼ばれたのか、何か間違って大変なことをしてしまったのかとビクビクしている。


「すみません。何か、心を、落ち着かせる、魔法は、ありますか?」

「えーっと、では……[平静(カーム)]」


 杖の先で光る魔石を見て、小夜は自分の心のイライラが小さくなるのを感じていた。

 そして光が収まる頃にヴラーデの方を見ると、


「……ヴラーデさん?」


 小夜の呼び掛けに答えないヴラーデは、瞳の焦点も合わせず無表情でぼーっとしていた。


「えっと、これは……」

「効きすぎて通常の思考力と感情も失ってしまった状態ですね。そんなに強くしたつもりはないんですけど……」

「どうすれば、いいんですか?」

「本能的、もしくは反射的行動を起こさせればそれに伴って思考力も帰ってきますよ」

「そうですか、では……」


 ここで小夜がとった手段は刺激を与えるという一番簡単で分かりやすい方法。

 銃を取り出して威力を最小に設定、魔力弾の先端が尖るように調整してヴラーデの腕を撃つ。


「いったああああぁぁぁ!!」


 その効果は覿面。急な痛みにヴラーデが飛び上がる。


「お目覚め、ですか?」

「え? ……あ! ごめんなさい!」


 小夜の言葉から少し考え、自分の失態について謝罪する。

 別に意識がなくなっていたわけではないのか自覚はあるようだ。


「なんでぼーっとしてたんだろ……」


 そして小さく呟く。

 どうやら直前の記憶は抜け落ちているらしく、また震えが止まっていることにも気付いていない。


「それで、お話とは?」


 そんなヴラーデの様子を見て話を戻す小夜。


「はい。お二人は……その……」

「ぶっちゃけヨータのこと好きだろ?」

「っ!?」


 ディナが顔を赤らめて口ごもるが、ジョットが容赦なく続け、ヴラーデが顔を赤くして驚く。


「僕たちもお世話になっていますので、何かお手伝いできることがあれば、と思ったんです」

「……なるほど」


 更にロイが続けるが、ヴラーデには最早聞こえていないので小夜のみが頷く。


「そもそもどうして二人は惚れたんだ?」


 再びジョットが何の躊躇いもなく尋ねる。


「そうですね……私は、元のせ……故郷では、いじめられっ子で、家族以外には、いじめられるか、他人事のように、距離を置かれるだけでした。でも、陽太さんは、そんな私を、いじめるでもなく、距離を置くわけでもなく、優しくしてくれたんです。後は、一緒に過ごすうちに、好きになっていきました」


 小夜本人、分かりやすい物語もないし、自分でもちょろいと思っている。

 しかしその幸せそうな表情は三人にそんな感想を抱かせなかった。


「私は……元々ヨータは嫌いだったわ」

「「「ええ!?」」」


 続けてヴラーデの番だが、最初の爆弾発言に三人揃って驚く。


「そんなに驚かなくても……」

「ヴラーデさんも、分かりやすい、ですからね」

「……そんなに?」

「例えば、食事の時。必ず、陽太さんの、反応を見ていますね」

「うっ」


 小夜の指摘と無言で頷く三人に言葉が詰まる。


「そ、それで話を戻すけど……」

「逃げましたね」

「うるさい。……嫌いっていうか、嫉妬? 『月の魔女』に憧れてたのに、いきなり誰もなったことがない弟子にヨータがなってて、しかも魔法は使えない。何かズルをしたんじゃないか、何か企んでるんじゃないか、って思ったわ」


 時々あの頃の自分を殴りたくなる。向こうの事情も考えずに勝手に嫉妬していた自分を。


「でも、討伐試験の時に見方が変わったの。幼馴染が死んで……ああ、気にしないで。そのことについてはもう大丈夫だから。で、その時ショックで動けなかった私を身を挺して庇ってくれたり、その幼馴染の火葬にも付き合ってくれたりして、よく分かんないけど……悪く思う気持ちはなくなってた。でも、まだその頃は自分の気持ちから目を逸らしてて、ロティアにからかわれても認めなくて……」


 今思えば、塞ぎ込んだ陽太を叱ったのは好きな人のそんな姿を見たくなかったからなのかもしれない。


「はっきりと自覚したのはサヤに出会ってからね。サヤは出会った日からヨータにべったりで、それを見てモヤモヤが生まれたの。あの時はよく分かってなかったけど、ロティアにそれを教えられたわ。一緒に色々言われて、もう認めざるを得なかったってところね」

「その時に、ロティアさんから、私と、仲良くするように、言われたんですよね」

「そうね。今思うとあのタイミングで良かったって思うわ」

「私もです。もう少し、遅かったら、私たちは、犬猿の仲に、なってたと、思います」


 あの時、ヴラーデはロティアに言われるがままに、小夜も友達ができるならと仲良くし始めた。それがもう少し遅かったならば恋敵として争う日々になっていたかもしれない。

 今もライバルではあるのだが、どちらが幸せになるかという物騒なものではなく、両方幸せになったうえでどちらがより幸せになるかを争っている平和なものだ。

 もし陽太が片方しか選ばなかったとしても、向こうが幸せになるならと身を引く覚悟もある。


「あとは、私が、そうだったように、一緒に過ごして、好きになってくれるのを、待っています」

「告白しちゃえばいいじゃん」

「ダメです」

「え、なんで?」


 話を締めた直後のジョットの言葉に、小夜がきっぱりと否定した。


「恐らく、陽太さんは、こういう経験が、ないんでしょうが、そのせいで、自分が好かれる、とは考えないように、している節があります。無意識でしょうけど……鈍感な理由も、そこですね。そんな陽太さんに、想いを告げたところで、どうすればいいか分からず、保留にされる可能性が、高いでしょう。そしてその後、意識してしまい、気不味くなる、ところまで、予想できます」

「え? そうなの?」

「……ヴラーデさんには、話したはず、ですけど」

「そ、そうだっけ? あはは……」


 小夜に軽く睨まれて下手な笑いで誤魔化すヴラーデ。


「……はあ、いいです。それで、そうなるくらいなら、陽太さんに、私たちを好きに、なってもらって、逆に告白させよう、ってなったんです。そこの赤い人は、忘れてしまった、ようですが」

「ごめんなさい」

「ロティアさんたちにも、協力してもらって、いますが……結果は、ご覧の通りです」

「……あ、もしかして、私の魔法の練習って……」

「はい、その一環でも、ありますね」


 ディナの言葉を肯定する小夜だが、それについて理解できない人が一人。


「え? どういうこと?」

「ヴラーデさんは、いつもいないので、知らないでしょうが、ロティアさんが、【精神魔法】の、練習と称して、陽太さんを私に……これ以上は、言えないですね」

「んなっ!? ずるい!」

「料理ばかりに、気を取られてるのが、いけないんですよ」

「うぐぐ……」


 勝ち誇った顔で告げられた内容に抗議するも、あっさり敗北。


「い、いいもん。私にはその料理があるから。皆の胃袋は私のものよ」

「あ、その点については、既に諦めてるので、別にいいです」

「ふふん、そうやって悔しがって……あれ?」


 苦し紛れに別の勝負にすり替えるが、自分の予想した結果にならず腑に落ちない。


「とまあ、こんな感じです」

「ありがとうございます。それで、私たちに何かできることは……」

「……私には、分かりませんね」

「そうですか……」

「一応、ロティアさんたちにも、協力して、いただけることは、伝えておきますので、指示には、従った方が、いいかと思います」

「分かりました」


 こうして、協力者が増えたところでお開きになるかと思われたが……


「で、結局あいつのどこが好きなわけ?」

「僕も気になりますね」


 ジョットがニヤニヤと冗談半分に尋ね、ロイも頷く。


「……聞きたいですか?」

「「え?」」


 二人は後に語る。『あの時ほど自分の発言を後悔したことはほとんどない』と。

 『ほとんど』というのは、ジョットのロティアに対する貧乳発言があるためだったりするが、それは別の話。

 先に危険を察知し、【精神魔法】で自分を認識されないようにしてこっそり抜け出していたディナが夕方に帰ってくると二体の屍があったのも別の話。

次回予告


陽太  「へくしっ」

キュエレ《大丈夫?》

陽太  「……なんか寒気がする」

キュエレ《寝てればいいのにっ♪》

陽太  「でも折角の休日だしな……ってかなんで楽しそうなの」

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