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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第5章 異世界に学園ものは付き物でしょうか?
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78. 気が付いたら学園編をやることになってました。

「あら、あなたたちおかえり。帰って来たばかりで悪いんだけど、シサール王国の学校で教師やってくれない?」


 滞在期間の割に長くいた気がする『変化の遊戯場』から帰ってきてギルドに行くと、イキュイさんにそう言われた。


「はい?」


 唐突過ぎる出来事にこんな反応を返してしまってもおかしくないと思うんだ俺は。

 とりあえずイキュイさんの執務室で話を聞くことに。


「その学校からあなたたちに指名依頼が入ったのよ。やっぱり『月の魔女』の弟子っていうのが大きいみたいね」


 ルナも万能だから何を求められてるのかが正直分からんが、俺でいいのか?


「本当はすぐに来てほしかったみたいよ。先代勇者が経営している『変化の遊戯場』に行ってるって伝えたら大人しくなったけど」


 勇者の影響力凄いなおい。


「どうする? 受けてくれるかしら?」

「……正直俺に教師が務まるか分からないですよ? そろそろ捜索もちゃんとしたいですし」

「勉学だけじゃないから分担するといいわ。それに、あそこの図書館は大きいから『月の魔女』としての記述は多いはずよ。ギルドとしても調査はしてるけど、一度自分の目で確かめるのもいいんじゃないかしら?」


 あ、ダメだ。断れない流れだこれ。


「小夜たちはどうだ?」


 せめて否定派が多くならないかなと苦し紛れに聞いてみる。


「私は、陽太さんに、ついて行きます」


 小夜からは信頼の眼差し。人任せにするつもりではないのは分かるが意見くらい聞かせてほしい。


「私は……自信ないなあ」


 ヴラーデはそう答えたが、


「ヴラーデ、『月の魔女』なら教師も容易くこなすだろうし、やっといて損はないと思うわ」

「う……わ、分かったわ」


 ロティアの短い説得であっさり陥落した。憧れてる設定残ってたかチクショウ。


「ヨータ、何事も諦めが肝心よ?」


 そのロティアにはこう言われ、ヨルトスからも『諦めろ』と視線で訴えられ、結局は依頼を受けることとなった。


《あれ、私は?》


 魔人に聞く意味ないだろ。


「……で、具体的に誰に何を教えて、どうしたら依頼達成になるんですか?」

「それは私も一応聞いたけど、そのあたりは依頼人から直接の方がいいと思うわ」


 さいですか。

 まあ、これが学園ものなら落ちこぼれクラスの担任とかになって不良生徒を更生させたり嫌味な上級クラスを打ち負かしたりするのだろうが、そんなものは勇者にでも任せておけばいい。

 俺は普通のクラスを教えてルナについて調べつつも普通に過ごせればいいや。




 流石に即出発ということにはならず、一度帰宅し明日出発することになった。

 案の定転移での移動は禁止されたので、地道に『変化の遊戯場』を経由して移動し、シサール王国の王都に着いた時に依頼書を見せて学校までの道を教えてもらう予定だ。


「それで、小夜さん。あなたは一体俺の部屋で何してるんですか?」

「何って……当然、お土産の、配置です」


 キリッとして当然とか言われても。

 何も置かずに使い道に困っていた俺の部屋の棚に、小夜が綺麗にフィギュア等のお土産を飾っている。


「陽太さんの、ことですから、きっと、遠慮すると、思いまして」


 それは否定できないが、だからって勝手にやるか普通。

 因みにこの家は綺麗そのもので、そういえば自動でやってくれるんだっけなと改めて実感した。

 更に防犯機能もバッチリなので住人である俺・小夜・ルナや、メンテを行うルオさんの許可なしに入ろうとすれば痛い目に遭うことになる。


「ふう。……陽太さん、片付けちゃ、ダメですよ?」


 関係ないことを考えてる間に小夜の作業が終わり、一言残して満足そうに出ていった。


「それにしても……教師かぁ~……」


 将来の夢なんぞ子供の頃に不可能なものを抱いたくらいで、進路もどうしようか悩んでいたというのに、まさか異世界で教師をやることになるとは。

 実感が湧かないし不安もあるが、ちょっぴりの期待を胸に眠りに就いた。




 翌日には出発し、多少魔物と戦ったりはしたが無事に中継地点の『変化の遊戯場』に到着。

 国を跨ぐ際にここを経由する人は少なくなく、その為に宿場町が各国方面に一つずつ用意されている。今回泊まるのはシサール王国方面だ。


「う~、また遊びた~い」

「はいはい、また今度ね」


 駄々をこねるヴラーデはロティアが宿まで引き摺っていった。


《わたしも遊びた~い》

(お前はフィギュア貰ったばかりだろうが)

《にっしっし》


 悪ノリするキュエレに言い返すと『分かってる』と言わんばかりに笑ってフィギュアで遊び始めた。




 一泊して再出発、大したイベントなく王都が見えてきた……と思ったら。


「ぎゃあああぁぁっ!!」


 男の悲鳴が聞こえ、頷き合って駆けつける。誰かが魔物か盗賊に襲われているのだろう。


「くそっ、何なんだお前ら!」

「ふん、子供だからってバカにするからこうなんだよ」


 しかし、少年の声が聞こえた瞬間に飛び出すのをやめ、陰から様子を見ることにする。

 そこでは、ガラの悪そうな男の首に赤い髪の少年が剣を突き付けていた。


「ふ、ふざけやがってえええぇぇぇ!」


 男が拳を振り上げるが、当然少年が首を斬り落とす方が早かった。躊躇いとかないのかあの子。


「終わったぞ。だから言ったろ? オレだけで十分だって」


 少年が後ろを振り返った先に、ふわっとしたウェーブがかかった長すぎるピンク髪の少女と、それを守るように杖を構える青色の髪の少年。

 三人共似通った服装をしていて、十代前半の見た目も合わせて学校の制服を思わせるが、これから行く学校の生徒だろうか。


「だ、大丈夫ですか? どこかお怪我は……」

「おう! 指一本触れられてねえぜ!」

「ほ、本当にですか?」


 少女が心配そうに赤い少年の体をまさぐる。少年も慣れているのかそれを受け入れている。


「良かった……」

「毎回毎回心配性な奴だな~。オレが強いのは知ってん……いてっ!」


 しばらく丁寧に確認作業をした後、安堵の息を漏らす少女に明るく話す赤い少年の頭に杖が振り下ろされる。


「何すんだ!」

「調子に乗らない」

「……へいへい」

「それに……まだ終わってないよ」

「ん?」

「そこにいるのは誰?」


 赤い少年を叩いた青い少年の杖がこちらに向けられる。


「恐らく戦闘音を聞いて走ってきたんだろうね、足音が丸分かりだったよ」


 仕方ない気はするがバレてたか。

 大人しく姿を現すと、少年二人は警戒を強めて少女は怯えて後ろに下がり、それぞれが髪と同じ色の瞳を向けてくる。


「……お前らは?」

「その青い子の言う通り、戦闘音を聞いて誰かが魔物や盗賊に襲われてるかもと思って駆けつけた冒険者だ」

「ふーん。どうする?」

「そうだね、手を貸さなかったことからこの人たちの仲間ではなさそうだし、僕たちに対する態度から捕まえに来たわけでもなさそうだ。普通に別れればいいと思う」


 青い少年は小声で話しているが、耳が良い俺には丸聞こえだ。

 またドワーフでもなさそうだし冒険者にしては年齢が足りなさそうなのでこういうところにいる時点で怪しいと思われることには気付かないのだろうか。

 それにしてもピンク・赤・青か……どっかで聞いたことあるような……

 記憶を探りながら少年たちの相談が終わるのを待っていると、


「こっちだ! こっちから聞こえたぞ!」


 また別のところから男の声が聞こえた。


「この声は……」

「やべっ」

「ああ、やっぱり叱られてしまうのでしょうか……」


 その声を聞いて少年たちが焦り始める。


「とりあえず逃げよう」

「そだな!」

「あ、おい! これどうすんだ!」

「くれといてやるよ!」


 転がった死体を放置して逃げ去ってしまった。

 仕方ないと代わりに片付け始めようとすると、


「すいません!」


 全身に鎧を身に着けた、騎士のような集団が現れた。


「三人組の子供を探しているのですが、見かけませんでしたか!?」


 特徴を尋ねると見事にさっきの三人と一致していたが、これは素直に教えてしまっていいものなのだろうか。


「ここで戦闘をした後どこかに走っていきました」


 なんて悩む暇なくロティアがあっさり答えた。


「方向は!?」

「急なことだったもので……そこまでは」

「そうですか……あなたたちは何故ここに?」

「依頼でトーフェ王国からここの王都に向かっている途中、戦闘音を聞いて来たらその子たちが無傷で戦闘を終えたところでした」

「なるほど……ご協力感謝します! ……話は聞いてたな!? 首飛ばされたくなかったら死ぬ気で探せぇ!!」


 騎士はここの片付けに数名を残して散らばっていった。

 死ぬ気って……あの子たちは一体……


「なんだったんだ?」

「さあ? 王族がここにいるとは思えないけど」

「ん? ……ああ!」


 そうだ、王族だ。ルナからこの世界の説明を聞いた時に王族はあの三色だ的な話も聞いた記憶がある。


「……あぁそうね、ヨータたちは王族って言われてもピンと来ないわよね」

「一応聞いてはいたが完全に忘れてた。……思いっ切りタメ口だったけど大丈夫かな」


 もしさっきので不敬罪に問われるとかあったらどうしよう。


「気にする様子はなかったしいいんじゃない? そもそもそうと決まったわけでもないし」


 ロティアはこう言っているが……う~ん。

 それを考えていてもしょうがないので再び歩き出し、以降は何もなく王都に着いた。

 門番に依頼書を見せて学校への道を聞くと、王都で目立つ三つの建物で城と教会を除いた残りの一つを示された。

 正直学校には見えないほど豪華だし、かといって屋敷とか豪邸にも見えなかったのだが、あれ学校だったのか。

 しかも昼食後に移動を始めたのだが、その建物までまだ距離が離れているのに入口となる門に着いてしまった。いつか見学に行った大学以上の広さはありそうだな。




 どうやら座学系はあの一番大きい中央棟で行う他、各授業に合わせていくつもの訓練場があるらしい。

 当然学生寮や教員寮もたくさんあるが、今俺たちは中央棟の校長室に向かっている。


「そういえば、ヴラーデたちはどんな学校に通ってたんだ?」


 途中でふと気になって尋ねてみたのだが、


「学校自体がなかったわ」

「え?」


 そんな答えが返ってきた。学校がなかったにしては読み書きや計算すらができないというわけでもないが……


「じゃあどうしてたんだ?」

「ロティアとヨルトスの両親が四人でお世話してくれたわ」


 なるほど、学校がない代わりというわけではないかもしれないが、ちゃんと教えてくれる人はいたのか。

 ……そういえば、その両親たちって何者なんだろうな。家族ぐるみの付き合いがあって、恐らく三人の家も用意したんじゃないだろうか。冒険者なりたてで買えるとは思えないし。


 そんなことを考えているうちに、授業中なのか誰ともすれ違わず目的の部屋に着いたのであった。

次回予告


ロティア「そういえばサヤちゃん、ヨータの部屋には色々置いといてくれたかしら?」

小夜  「はい、大丈夫です」

ロティア「サヤちゃんとヴラーデの比率が偏ってたりしない?」

小夜  「約束ですから」

ロティア「ならよし」

小夜  (……個人的には納得いかないけど)

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