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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第4章 いわゆる状態変化という奴です。
77/165

77. 良い感じにまとめようとしました。

 大会に優勝した翌日。明日にはここを出ないといけないので実質今日が最終日だ。


「というわけで今日はどうする?」

「え? でもタダで入れるんだしもっと遊びましょうよ?」

「ヴラーデ? 話聞いてなかったの?」

「何が?」


 ロティアの問いに首を傾げるヴラーデ。


「タダになるのは入場料だけ。まあ、それもかなり高いからお得ではあるんだけど……他の代金は出さなきゃいけないのよ?」

「え?」


 血の気が引き始め、


「さて、今持ってるお金はあと何日もつかしらね?」


 あわあわと体が震え始め、


「どうする? 滞在期間延ばす?」

「やめときます……」

「よろしい」


 完全に折れた。


「それで今日だけど、最初が自由行動だったから皆で回ってみない?」




 道行く人に声を掛けられながら五人で色々体験していく。

 今まで体験したところでも複数人なら面白さも倍増だった。

 皆でポーズをとって石化したり、三人がパペット人形になって残りの二人で即興の劇をやってみたり、五人で一つのパフェになってみたり、ロティアとヨルトスが粘土になった俺たちで一つの作品を仕上げたりと、非常に楽しい時間を過ごした。


 そして最後にやってきたのが、


「団体専用部屋作り……?」


 家具化のところでそんなサービスを受けることになった。

 それぞれが好きな家具になって部屋の自由な位置に配置、最終的に出来た部屋をミニチュアにしたものを貰える。

 貰えるのは一つだけなので一人一つとなると買わないといけなくなるあたりちゃんと商売している。


「ていうか、またお土産(そういう)系?」

「またも何も、そういう系しかないじゃない。今更言うことじゃないでしょ」

「それもそうか」


 受付でカードが入ったかごを受け取った後何もない質素な部屋に案内された。


「このカードを好きなところに置いて、その上に乗ると……」


 ロティアが一瞬光に包まれ、椅子になったロティアが現れる。空気椅子の姿勢から腕を床に着くまで下に伸ばして体を薄くしたように見える。


「こんな風に家具になるから、それで配置するみたいね」

「戻る時は?」

「戻ろうと思えば戻れるわ」


 再びロティアが光に包まれて元に戻る。


「じゃあまずは色々やってみましょうか」


 まず小夜が適当に取って床に置いたカードに乗るとベッドになった。さっきの椅子と同じようだが、あっちは空気椅子の姿勢だったのがこっちはブリッジの姿勢だな。


「服がシーツに……つまりこの下は裸!?」

「やめい」


 シーツを外そうとするロティアの手を掴んで制止している間に小夜は元に戻った。




「……小物もあるのね」


 次に俺はハサミになった。頭は中央、腕は長く伸びてそれぞれ輪っかになり、足は刃になった。

 ヴラーデの呟きの後に小夜が俺を持ち上げて開いたり閉じたりする。


「あの、元に戻りたいんですが小夜さん」

「も、もうちょっとだけ……」


 別に面白いものでもないと思うが……

 俺が戻った後、ヴラーデが抱き枕になる。


「なんか視界が重なって見えるし、体の感覚も二つあるような……」

「そりゃ両面で違う姿勢だからな」

「え!?」


 ただ本人がそのままではなく、アニメとかのグッズで時々見かける、前と後ろで違う姿勢で寝転がってるパターン。

 当然だが別に危ない格好はしていない全年齢対象仕様だ。


「うわ、ふわっふわね。ヨータも抱いてみなさい」

「ん? おう」

「え、ちょ!?」


 何度も抱き締められるとは思わなかったのか慌てるヴラーデを渡され抱いてみる。


「んーこれはいいなー」

「でしょ?」


 正直カバーを外して中を確認してみたいほど気持ち良い。まあファスナーとかが一切ないので外したくても外せないのだが。

 その後、どういうわけか戻ったヴラーデの顔は真っ赤に染まっていた。


「……あ」


 少し考えたら分かった。俺からすれば普通に抱き枕を抱いただけでもヴラーデからすればいきなり男に抱き締められたことになるのか。


「悪い、ちょっと配慮が足りなかったな」

「え? ……あ、いや、別に……嫌じゃ、なかったし……」


 別に俺はラブコメの鈍感主人公ではないのではっきり聞き取れた。

 つまり抱く方も心地良いが本人も心地良さを感じることができるのだろう。


「陽太さん、抱き足りないなら、今度は、私が、なりましょうか?」

「ん? そんな話はしてないぞ?」

「そうですよね……」


 凄いがっかりしているが、小夜も抱き枕として抱かれてみたかったのだろうか。

 ヨルトスはクローゼットになり、ロティアが上半身の扉や下半身の棚を開けて物色している。


「これ、元に戻る時、中にあるものはどうなるのかしら……」


 実験の結果入れたものは出てくることが判明した。要らんだろこの実験。


「ねえ、気になることがあるんだけど」


 他の家具も確認しているとロティアがふと口に出す。


「何人かで同時に乗ったらどうなるのかしら?」


 またこいつは……

 ロティアから渡されたソファーのカードに小夜とヴラーデと俺で同時に乗る。


「なるほどね~」


 一人一人が別ではなく、横長のソファーが一つ出来上がった。

 正座した俺たちは俺を中央にして体がくっ付き、腕は肩を組んでいる。端に残る腕が肘掛けだ。

 こうして改めて色々試し始めたわけだが……


「どう考えても五人じゃ足りないわね」


 悲しい結論に至った。机と椅子とベッドだけで三人必要で、しかもそのベッドは掛け布団や枕はないので五人だとどうしても装飾が少ない寂しい部屋になってしまう。

 結局良い案は出ずに無難に作って終わった。


「そういえば、陽太さん」

「ん?」

「スマホと、スキルは、いいんですか?」

「あ」




《う~ん、よく寝た~!》


 幽霊(レイス)だから普通に考えて寝なくてもよさそうだが、夜寝る時など電源を落としてる間はぐっすり眠っているらしい。

 逆に電源を付けない限りは起きてこないので現在時刻とかは分からないんじゃないだろうか。

 もう夕方とは知らずに体を伸ばすキュエレを見て冷や汗が止まらない。


『おにいちゃんたちおはよ~』

「お、おはよう」

『わたしが起きたってことは大会終わったんだよね!?』

「そ、それがな……」


 ここで嘘をついても仕方ないので正直に話す。


『え~~!? もう夕方なの~!?』

「あ、ああ」

『ずるい~! わたしだって遊びたい~!』

「す、すまん」


 実体がないから状態変化では遊べないと思うが、今突っ込むべきことではない。


「落ち着いてください」

『ドワーフのおねえちゃん……』


 画面を覗き込むルオさんが優しく声を掛ける。


「実は解説の合間に作ったものがありまして、部屋の中のプレゼントボックスを開けてみてください」

『え? ……ホントだ、何かある』


 キュエレがその箱を開けた中には……


『お~わたしだ~!』

「はい、キュエレさんのフィギュアです」


 台座から棒で支えることで宙に浮いているのを表現し、悪戯心いっぱいの笑顔を浮かべたキュエレのフィギュア。


「台座側面のスイッチを押せば石や金属など様々な変化が起こりますので少しはお楽しみいただけるかと思います」

『うわ~ホントだ! 面白~い!』


 キュエレがスイッチを連打して遊んでいるのを見てホッと一息。


「ありがとうございますルオさん」

「いえ、私としてはこれだけしかできなかったのが申し訳ないくらいで……」


 それにしても凄いな、まさかスマホの中にフィギュアを作るなんて……ちょっと待て、どうなってんだこれ。スマホの中ってことは3Dデータか何か? ルオさんってそんなものも作れるの?

 しかし仕組みを聞こうとすれば話が長くなりそうだし、そもそも理解できる自信がないのでやめておいた。

 キュエレも寂しい思いを払拭できたみたいで、少なくとも夜になっても遊んでいた記憶がある。




 そして翌日。


「ついに、お別れね」

「何センチメンタルになってんのよ。またお金貯まったら来ましょ?」

「ええ、そうね」


 夜になってから出ても危ないだけなので朝食後に出発することになっている。

 必要以上のシリアスをばら撒くヴラーデと珍しくツッコミに回ったロティアがそんな会話をしている。


「よく考えたら、凄いですよね」

「何が?」


 小夜の近くには俺しかいなかったので俺が聞き返す。


「元の世界、だったら、あり得ない、体験を、できたんですから」

「確かにな」


 ほとんどの変化はどう考えても物理的におかしいし、生きていられるのだって不思議だ。

 というかこの世界においても割と異質な部類のはずなんだが、今そこをツッコむのは違うだろう。


「逆にこっちの世界にゲームとか持ち込めばあり得ないって言われるんじゃないか?」

「……それも、そうですね」


 ゲームに限らず、魔力があるこの世界にとって魔力なしに動く科学技術なんてあり得なさそうだ。


「……陽太さんは、元の世界に、帰りたい、ですか?」

「……」

「私は、元の世界ではいじめられっ子で、ずっと嫌な思いをしてきました。でも、この世界に召喚されて、陽太さんや、ヴラーデさんたちに出会え、面白い体験をできたと思います。命の危険があるのは、今でも怖いですが」


 口調が普通になりつつある小夜の言葉を黙って聞き続ける。


「だから、私は、別に帰れなくても、いいと思うんです。陽太さんは、どうですか?」

「俺は……」


 どうなんだろうか?

 確かにファンタジーの世界は楽しいし面白い。でも命の危険は向こうより高いし、利便性や娯楽は圧倒的に向こうの方がいい。

 自由に行き来できれば一番いいが、そう都合のいいものがあるかも分からないし、いずれどちらか選ばないといけないかもしれない。

 でも……


「分からん」

「えっ!?」


 それは今じゃない。今後元の世界に帰りたくなるかもしれないし、この世界に残りたくなるかもしれない。そんなもん今決めたって無駄だ。


「そんな堂々と……」

「そもそも帰れるかどうかも分からねえじゃねえか」

「そうですけど……え~……」


 それに、『帰らない』と『帰れない』は別だ。帰る方法を見つけてから決めたって遅くはないだろう。


「ちょっと二人共~? 行くわよ~?」

「すまん今行く! ほら、行くぞ」


 その為に俺はルナを探し出したい。あんな別れに納得がいかないって方が大きいんだがな。




 探し出したいんだが……


「あら、あなたたちおかえり。帰って来たばかりで悪いんだけど、シサール王国の学校で教師やってくれない?」

「はい?」


 いい加減その為に開放してくれてもいいと思うんだ俺は。

次章予告


陽太「教師やるの? 俺が?」

小夜「これが、オタク系女子、だったら、『学園編キタコレ!』……って、叫ぶんでしょうね」

陽太「なんか今、小夜とは思えない声が聞こえたんだが」

小夜「ヒュー、ヒュー」

陽太「誤魔化し下手か。口笛できてねえし。……あれだろ、好きだって言ってたアニメにも学園編あったとかだろ?」

小夜「……………………まあ」

陽太「……なんだ今の間」

小夜(陽太さんの教師姿楽しみ……)

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