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チート魔女に召喚されました。  作者: 熾悠
第4章 いわゆる状態変化という奴です。
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61. 第六種目:一度動物になってみたいと思ったことはありませんか?(前)

 第六種目、三番目まで呼ばれて『2』の小屋に入る。

 続けて入ってきた相手チームは全員が緑髪の女性で俺たちよりは上か……なんか一人だけ目を輝かせてこっちを見てるんだが。


「すみません、『太陽の魔法剣士』ヨータさんですよね?」


 目を輝かせながら挨拶を交わしに来て、興奮を隠しきれない丁寧な口調でそう言った。


「はい」

「となるとこちらがガンス……いえそう呼ばれると嫌なんでしたね、サヤさんと『炎の王女』ヴラーデさんに『蒼の女王』ロティアさん、『大地の忍』ヨルトスさんですよね!?」

「は、はい」


 なんだろう、凄い興奮が伝わってくる。


「ナビといいます! あなたたちのファンです!」

「へ?」


 ふぁ、ファン?


「あら、私たちも有名になってきたってことかしら。普段の活動場所は?」

「あなたたちと同じラーサムです!」


 ロティアの問いにはこう帰ってきた。こんな人たちいたか?


「といっても町の外に出る依頼を多く受けているので、なかなか会えるチャンスがなかったんですがね」

「なるほど。切っ掛けとかあるんですか?」


 俺の問いにもナビさんは答えてくれた。


「偶然魔物と戦っているところを見かけて感心した、というのもあるんですけど、一番は楽しそうに雑談しているところですかね」

「……はい?」


 いや俺たちは別に動画サイトで雑談の生放送をやってるわけじゃないんだが。


「ロティアさんがボケて、ヴラーデさんが焦りヨータさんがツッコむ。時々ヨータさんもボケてヴラーデさんとサヤさんがツッコむ。たまにヨルトスさんが一言添えてスパイスになる。聞いてて楽しいし面白かったんです」

「いや俺たち漫才師じゃないんですけど」

「そういうところです」


 こういうところか。っておい。

 あと言葉が通じたことからこの世界に漫才師がいるのが証明されてしまった。


「まあ半分は冗談です」

「半分本気なんですか」

「そういうところですよ」


 しまった。


「それで、強くて面白い人なら見ていたいじゃないですか。大体強さと面白さのどちらかが突出してるので珍しいんですよ」


 なるほど。ゲーム実況に置き換えれば、ゲームが上手いだけじゃつまらないし、面白くても下手でグダグダと長引けば飽きてくると。なんでこんなこと考えてんだ俺。


「なので今までも見かけた時は話しかけずに見守っていました」


 それで同じ町が拠点なのに一方的に知ってる図が完成したと。


「あ、スタッフが入ってきたので一旦ここまでにしましょう。ヨータさんとネタができて楽しかったです」

「ネタじゃ……」

「残念」


 『ネタじゃないんですけど』って言おうとして手で塞ぐ。良い様に踊らされてるなチクショウ。


「私は一人のファンですが、私たち『緑の小悪魔』は全力で挑ませていただきます。よろしくお願いしますね?」

「!」


 ここまでの会話でなくなってた緊張感が一気にやってきた。この人たちも第一関門を乗り越えたんだ、油断はできない。


「はい、よろしくお願いします」


 しかし『緑の小悪魔』か。桃色の丸い悪魔なら知って……いかん、早速余計なことを考えてしまった。恐ろしい。




 スタッフが持ってきた箱は一つ。つまりくじをあっちも合わせて一人ずつ引かないといけない。

 スタッフがまずこっちのチームにやってきたので適当に一番近かった俺からくじを引く。

 出てきた白いカードが光ると全身がくすぐったくなった。耐えれる程度だしむしろ気持ちいい。

 一瞬音が聞こえなくなったかと思ったらすぐに聞こえるようになった。だが、なんというか、聞こえる位置が高いような……? 視界はそのままなのに聴覚は背が高くなったと訴えていて違和感がある。

 次に尻より少し上くらいのくすぐったさが増す。何かが出ていく感覚がしたがまだ繋がってて……動かせる? 何故か動かし方を理解できるそれを確認すると、尻尾だった。黒いツヤツヤな尻尾を振ってみる。

 ということはさっきのは……! 手で確認したら頭に耳が生えていた。

 その手を下ろせば人間としての手の形は残っておらず、肉球が出来始めていた。

 今度は顔。鼻から下が前に突き出ていく。やがて足で立っているのがつらくなり、肉球が出来た両手を床に着ける。

 最後に全身のくすぐったさが増したかと思うと、どうやら全身から毛が生えたようで服も飲み込まれていった。

 そこでくすぐったさが消えていき、いつの間にか設置された鏡には俺の髪型をした黒い犬……いや狼か? ともかくイヌ科であろう存在が映っていた。

 感覚としては嗅覚と聴覚が敏感になったように感じる。尻尾まで自由に動かせるんだが、気を抜くと勝手に動きそうだ。


「モフモフしたい……」

「陽太さん撫でたい……」


 女子二名が言葉にしたそれを実行すべきか悩んでそうな中、ロティアがこちらに近付いてきた。


「お手」

「しねえよ?」


 そこまで理性なくなってないわ。ていうか普通に喋れるのか。


 続いて小夜。やっぱり最初は耳らしく、髪の間に少し見えていた耳が引っ込むと頭に長い耳が生える。

 白く丸い可愛らしい尻尾が生えて、全身が縮みながら形を変えて白い毛に覆われていく。

 そこには一羽の白い兎がいた。黒髪と髪留めは残っているが白い兎にそれはどうなんだ。

 兎といえばチーム名決めの時の謎の兎は何だったんだろうな。


 ヴラーデも同様に変化しこちらは真っ赤な猫になった。髪を結んでいる部分は耳の邪魔にならないようになのかちょっと低い位置になっている。

 いつだったかプレゼントしたのも赤い猫のぬいぐるみだったな。あと猫耳カチューシャの件も思い出す。


 ロティアは毛先が白で他は青い狐。こいつのことだから後で九尾になったりするんじゃないだろうか。

 ヨルトスは茶色いモモンガ。変化の時は皮が伸びて腋とかがなくなっていっていた。

 俺たちは服が飲み込まれたのにこいつはマフラーが巻かれたままだ。解せぬ。


 見事に哺乳類揃いとなったこちらのチームの変化が終わり相手チームの変化が始まる。

 最初はナビさん。耳が引っ込んだが頭には生えてこない。それを疑問に思う余裕なく見ていると腕から指や手首がなくなり薄くなっていく。なんというか……羽?

 顔も下半分が俺たち以上に突き出てやがて嘴になった。足は膝を曲げたが前後に倒れたりはしなさそうだ。

 最後に全身から毛が生える。首から下の前面は白で他は髪と同じ緑。全身を包み込むついでに曲げていた膝まで飲み込み、足は脛から先しか見えなくなってしまった。

 結果、緑と白のペンギンがそこにいた。手や足を思うように動かしている。ただ急に膝を伸ばすのは心臓に悪いのでやめていただきたい。


 その後、ある人は顔が大きく変形し水かきが出来て蛙に、ある人は胴が長くなると同時に手足がなくなっていって蛇に、またある人は腕から羽が生えて鷲に、最後の人は体がかなり縮んで鼠になった。

 なんというか、女性が変身すべきではないものが多い気がするが、気にしたら負けだろうか。

 相手チームの変化が終わり、適当に周りを見ると、赤い猫がじーっと一点を見ていることに気が付いた。


「……ヴラーデ?」

「はっ! ち、違うのよ? あの鼠に飛び掛かりたいなんて思ってないわよ!?」


 何も言ってないんだが。ヴラーデの発言に緑色の鼠がビクッとなっていた。




『第六種目は動物化、ゲームは『アニマルパワー全開☆宝探し』だ!』


 聞いただけだと変でもない気がするがこの人のことだから表記がおかしなことになってるかもしれない。


『ルール説明です。これから各小屋の内装を変えます。その中に小さな白い粒、これを宝としますね、それが大量に隠されています。動物としての能力を駆使してできるだけ多く見つけ出してください』


 それってつまり、魔法とかは……


『その趣旨上、全てのスキルや魔法は使用厳禁です。そもそも今回は変化時にスキルが使えないよう調整してあります』


 ですよねー。


『見つけ出した宝は小屋中央に設置した入れ物に入れてください。制限時間内に多くの宝を見つけたチームの勝利で、見つけた量によってポイントが決まります』


 スタッフが小屋の中央に箱を置いているのが見えた。あれに入れるんだろう。


『また今回は相手チームへの妨害は全て禁止ですのでご注意ください』


 ロティアが残念そうな表情になった気がしたが、気のせいだと信じたい。


『それでは各小屋の準備をお願いします』


 一旦俺たちは中央の箱の周辺に集まり、小屋の中が変化していくのを見守る。

 形が変わり、木が生え、池が生まれ、天井が高くなって空色に染まる。室内のはずなのに外にいる気分だ。あと何故か広くなってる気がする。


「それでは……スタート!」

「きゃっ!」

「「「「「「「「え?」」」」」」」」


 スタッフの開始の合図と同時に悲鳴が聞こえ、スタッフ含めきょとんとなってしまう。ヨルトスだけいつも通り声は出してなかったが同じようだ。

 悲鳴の方を見れば……


「~♪」

「ちょっと! 放して!」

「「「「「「「「「……」」」」」」」」」


 鼠の尻尾をくわえて満足そうな猫の姿があった。


「……ヴラーデ?」

「……はっ!」


 正気に戻ったヴラーデの口が開かれ鼠が脱出、素早くペンギンの後ろに隠れた。


「ヴラーデ? 何をしてるのかしら?」

「え? い、いや、その……」


 猫に詰め寄る狐。その青い狐がとっても黒く見える。近寄らないでおこう。


「何をしてたのかしら?」

「ひっ!」


 ゆっくり言い直されたロティアの言葉にヴラーデが竦む。


「ヴラーデ?」

「ごめんなさい! 気が付いたらくわえてました!」

「……」

「ひっ! ホントです! なんか魅力的に思えて……欲に負けました!」


 こっちからは見えないがどんなプレッシャーを与えたのだろうか。


「次はないわよ?」

「ごめんなさい! 気を付けます!」


 ふとナビさんを見ると片手……いや片羽(かたはね)で顔を隠し震えていた。笑いを堪えているのがとんでもなく分かりやすい。

 それは置いといて、ロティアがスタッフの方を向いた。


「ごめんなさいね。そういうわけですので、もう一度スタートさせてもらってもよろしいですか?」

「え? あ、はい……スタート!」


 さりげなく俺たちは反則負けを免れ、改めて開始の合図を聞くと全員が散らばった。

次回予告


陽太「はい、二人目のゲストはナビさんことナビクロウさんです」

小夜「作者に、とって、ネットでの、付き合いが、最も、長いとか」

陽太「ペンギンになりたい旨の発言が切っ掛けで誘ったそうだ」

小夜「……募集企画、ですよね?」

陽太「フォロワーのほとんどがゲーム関係で知り合ったそうだし、そりゃ集まらないわな」

小夜「……」

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